Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

マデイラとの出会いと魅力

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マデイラ酒は、ポルトガルのマディラ諸島で産出される酒精強化ワインです。奥が深く食事にもあわせられるマディラ酒の魅力をお伝えします。

 私がマデイラ酒(以下マデイラと略す)に意識的に興味を抱いたのは、2016年にワイン・エキスパートの2次試験対策でワイン以外のいわゆる「その他のお酒」にトライしていた時です。試験対策に50種類以上のお酒をティスティングしましたが、その中で印象に残ったのがリキュールでは、フランスのシャルトリューズ、そして、酒精強化ワインでは、このマデイラでした。当時同じ酒精強化ワインとして有名なシェリー酒(特にフィノ)は、どうも独特のノワゼット香があまり好みではなく、また同じポルトガルのポート酒は、甘すぎて食事には合わない印象を持っていました。マデイラ酒は、比較的すっきりとした甘さで、加えて酸もあり食中酒でもいけるのではという印象を持ちました。

食事との相性は、後で述べるとして、まず、先日受講したマディラセミナーから。

マデイラの造り手としてはバーベイト社と双璧を成すブランディーズ社のコマーシャル兼マーケティングディレクターのネルソン・カラド氏による来日記念セミナーを恵比寿のワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」にて受講してきました。f:id:turque1991:20190517002607j:plain

マデイラの歴史から、気候、製法、原料ブドウの種類と産地、現地での飲まれ方、そして地元出身の英雄であるクリスチャン・ロナウド銅像の話まで聞け楽しめました。

試飲したマデイラは、全部で9種類、それに加えてブランディ社が社が生産するATLANTISというロゼワインを最初に試飲しました。ティンタネグラというマデイラで生産されるぶどう生産の8割を占める黒ブドウ品種でつくられたスティルワインです。マデイラでは、3年熟成の料理酒やブレンド用に多く使われているようですが、単一品種で長期熟成させたものもあります。この品種によるワインは、辛口から甘口まであるようですが、ティスティングしたロゼは、スッキリした辛口で、しっかりとした酸が感じられました。それほど単純な味わいではなく、何故か若干ナッツっぽさも感じました。

今回試飲したマデイラはレインウォータ以外は、白ブドウ品種から造られたものです。

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セルシアル5年物

ヴェルデーリョ5年物

ブアル5年物

マルムジー(マルヴァジアの英語表記)5年物 

レインウォーター(3年物だが3年はラベルには表記されない)

ヴェルデーリョ5年物

ヴェルデーリョ10年物

ヴェルデーリョコリュイタ2000年

テランテス1980年

(試飲順)です。

主要白ブドウ4種から造られるマデイラですが甘い順に、マルムジー、ブアル、ヴェルデーリョ、セルシアの順になります。この順位は、単純に品種の違いからくるものと思い込んでいたのですが、酒精強化のタイミング、すなわち高アルコール濃度のグレープ・スピリッツを加えて発酵を止めるタイミングに依存するとのことでした。すなわち、早い時期にスピリッツを加えるとより甘口になります。ちなみに5年ものについては、最も甘口のマルムジーは発酵後48時間で、そして最も辛口のセルシアルは、発酵後5~6日後にグレープスピリッツを加えるようです。品種の特徴を最も引き出すことを考えた添加タイミングなのでしょう。ちなみにマデイラに加えるスピリッツのアルコール濃度は96%で、ポートワインは77%。度数が高いほうが、風味に影響を与えないとのこと。

5年ものについては、蜂蜜やドライフルーツ、ナッツなどの香りは共通ですが、やはり感じる甘さに差が出ます。個人的には、ヴェルデーリョのすっきりとした甘さが食事に合わせやすいという意味で気に入りましたが、マルヴァジアは、スティルワインでも時々飲むことがあり、より華やか花の香りは、マデイラでも感じることができ、割と好きなタイプです。食後酒向きではありますが、適度な酸もあり、食中酒として使えない訳ではないと思います。

熟成期間が長いほど琥珀色の色調が濃くなり、よりナッティやスモーキーの風味も強くなり複雑性を増してきます。

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なお、10年ものというのは、単に10年前のワインで造られている訳でなく、5年もの50%と15年もの50%のブレンドでも、10年ものを名乗れるとのこと。すなわちブレンドしたワインの平均の熟成年数です。また品種表示は、85%以上その品種が使われていれば、名乗れるようです。

もっとも熟成期間の短いレインウォータですが、この名称は、偶然、樽に栓をし忘れて海岸に置きっぱなしにした際に雨水が入って、雨水のように柔らかく、淡い色合いになったということから名付けられたとのこと。確かに少し軽めですが、飲みやすいマディラだと思います。なお試飲したマディラの中で唯一、ステンレスタンク内で人工加熱するエストゥファという加熱熟成方式を採用しています。他は全て、屋根裏部屋で太陽熱で自然加熱した樽内で熟成させるカンテイロ方式で加熱熟成させています。

次に2000年のヴェルデーリョ コリュイタです。コリュイタは単年産のブドウのみを使用したマデイラです。当然他の年のブドウをブレンドしませんので良年のみに生まれるマデイラということになります。蜂蜜を残しつつ燻した様なドライフルーツ、ナッツやシナモン等のスパイス、スモーキーな香りも伴う複雑な風味です。

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最後にこの日の目玉、1980年のテランテスです。テランテスは希少品種でもあり、36年間アメリカンオークで熟成させたこのボトルは非常にレア物とのこと。琥珀の色合いはさらに濃くなり、土の香りや様々なスパイスが加わりさらなる複雑さを持つ、ちょっと経験したことが無いような味わいです。

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この2つのマディラは、通常の複数の生産年の樽のマデイラをブレンドしたものでないため、ラベルには、カスク(樽)Noが打刻されています。カンテイロでどこに置いた樽かがこの表記で判る様です。1980テランテスは、2016年にボトリングされています。

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セミナーの話はここまでで、次に料理とのペアリングについて触れたいと思います。

日本でのマデイラのインポータである木下インターナショナルが銀座7丁目で経営するマディラバー「マデイラ・エントラーダ」です。1800年代のオールドヴィンテージを含め100種類ものマデイラを非常にリーズナブルは値段で楽しめます。上記セミナーのブランディ社に加えてバーべイト社、さらにオールド・ヴィンテージのストックで有名なペレイラ・ドリヴェイラ社のマデイラを扱っています。 

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マデイラ・エントラーダでは、単品のマデイラのほかに飲み比べの為のセットをオーダすることができます。同じ熟成年の品種違い、同じメーカの熟成年違い等です。まず、マデイラを知りたい方は、このティスティングセットをお奨めします。

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マデイラは、単一品種(少量の多品種ブレンド含む)がメインですが、最近は異なる品種のカスクを混合したブレンドものも人気があるようです。写真左はブアル50%マルムジー50%、中央はブアル66%ヴェルデーリョ34%のブレンドです。


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 マデイラ・エストラーダでは、マデイラと料理のペアリングを楽しむことができます。写真右は、ひよこ豆とバカリャウサラダ(500円)です。

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牛ほほ肉のマデイラ煮込みです。10年もののボアルと合わせましたが、まさか肉の煮込み料理がマデイラと合うとは思いませんでした。素晴らしいペアリングです。

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さらに意外な和とペアリングも勧めてくれます。写真は、いかの塩辛です。塩辛の塩味と相反するマデイラの甘みがけんかすることなく、意外にもマッチします。通常のスティルワインでは生臭く感じる食材と合わせられるのは驚きです。これ以外に、(私は苦手なので遠慮しましたが)イクラ等も用意してくれるようです。

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単なるお酒の提供だけでなく、マスタと会話をしながらマデイラと料理のペアリングを試せるのはこのマディラバーならではの特徴かと思います。マデイラに興味がある方にはぜひお薦めしたいバーです。

以上マディラとその魅力について述べてきましたが、マデイラの故郷マデイラ諸島は、マデイラだけでなく、地形が作り出す自然の素晴らしさでも有名です。是非いつかは行ってみたいと思います。

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