Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

フランスの山のチーズ比較

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フランス東部のスイスやイタリアの国境に近いブルゴーニュ=フランシュ=コンテ圏からオーヴェルニュ―=ローヌ=アルプ圏の東部ローヌ=アルプにかけてのエリアで産出する山のチーズ3種(コンテ、アボンダンス、ボーフォール)の比較です。

 ジュラ山脈やアルプス山脈にあるこの地方の人々は激しく雪に覆われた長い冬の食料として、昔から大型のチーズを造っています。

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マップは「チーズの教本2018」から引用

フランシュ=コンテで造られる大型のチーズの代表が、フランスのA.O.P(原産地統制)チーズの中で最大の生産量を誇るコンテです。他に有名なチーズが、冬季限定のモン・ドールで、このチーズはスイス側でも造られています。コンテは、日本でも殆どの大型スーパーに真空パックされたものが売られています。モン・ドールの高級スーパで容易に入手できます(但し、季節限定)。一方、ローヌ=アルプス圏のレマン湖南のオート・サヴォワ県のアボンダンスで造られるセミハードチーズがアボンダンスです。更に少し南のオート・サヴォワ県とサヴォワ県から造られるのが、ボーフォールです。いずれもビスケット色の硬い外皮があります。

コンテ(Comte)

このフランスのA.O.Pで最大の生産量を誇るチーズは、上記産地の2500もの農家で造られています。

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原料を温めてた時できる塊(カード)を切ったあと、加熱して型にいれて加熱圧搾するタイプチーズです。このコンテやパルミジャーノ・レッジャーノが代表的な加熱圧搾タイプのチーズで、フランスではこのタイプのチーズを(水分が抜け易くなる為)「ハードチーズ」と分類しています。ただ、チーズの硬さから言えば、後述の非加熱圧搾タイプのチーズとそれほど変わらず、個人的にはセミハードでは?と突っ込みたくなるチーズです。

緑のラベルは、一定の品質以上のコンテであることを示しています。少し劣るものは、茶色のラベルのようですが、茶色のラベルは見たことがありません。

直径55cm~75cm、高さ8~13cm、重さは、32㎏~45㎏もあります。

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これは、コンテのプロモーションイベントで撮影したもので、模型です。実際には重くて、こんな風には持てません。ちなみに持っている女性は、私のチーズの師匠で、現レザンドール ワインサロンの代表の佐藤玲子さんです。

コンテの熟成期間は最低120日(4ヶ月)ですが、実際に販売されているのは、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、36ヶ月のいずれかであることが多いようです。熟成期間が長いほど、コクや複雑性が増しますが、塩味も強くなります。価格も熟成期間が長くなるに従い、高くなります。36ヶ月のコンテは、日本ではほとんど見かけませんが、フランスでは普通に売られています。4年ほど前に、パリのチーズショップで買って帰りましたが、濃厚で、かなり塩味が強かった記憶があります。日本人の舌には、36ヶ月は、ちょっと合わないかも知れません。個人的な好みは、ずばり、18ヶ月です。

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コンテ 18ヶ月

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アボンダンス(Abondance)

側面が湾曲した形状の非加熱圧搾タイプのチーズです。湾曲は、馬で運ぶ際に紐を掛け易くするためであったようです。非加熱圧搾タイプのクッキングの温度は、加熱圧搾タイプが53~56℃と高温なのに対して、45~50℃と比較的低温です。フランスでは、セミハードチーズと位置付けられます。

直径約40cm、高さ7~8cm、重さ6~12kgとコンテや後述のボーフォールに比べるとやや小型のチーズです。熟成期間は、最低100日間ですが、熟成期間の長短は、商品上は、あまり意識されていません。塩分から判断すると、あまり長い熟成には向かないチーズだと思います。

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ちなみに、私がチーズプロフェッショナルの呼称資格を取得した2017年の2次試験(テースティング)に出題されたのがこのアボンダンスでした。テースティングコメントを問う問題で、チーズの名称は問われませんでした。湾曲した外皮があったかの記憶はありませんが、あまり、ポピュラーなチーズでないので、若いコンテかボーフォールと思いました。

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ボーフォール(Beaufort) 

ボーフォールは、直径35cm~75cm、高さ11~16cm、重さ20~70kg(平均40~45kg)という加熱圧搾タイプ大型のハードチーズです。アボンダンス同様に側面が内側に湾曲している特徴的な形状を持ちます。ボーフォールには生産3種類あります。(普通の)ボーフォールに加えて、「エテ (été)」および「アルパージュ (alpage)」と呼ばれる6~10月に生産される限定チーズです。アルパージュは、標高1500m以上の高地で単一牛群れから、シャレという山小屋で伝統的な手法で生産されるものにつけられます。アルプスの少女ハイジに出てくる山小屋のイメージですね。アルパージュは、希少です。「エテ」も時期が限られますが、チーズ店に予約しておけば、購入すること可能と思われますが、何せ生産量が限られるので常に手に入れられるチーズではありません。

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写真に見られるように、ごつごつした外皮があり、黄色味が強いですが、下のエテは通常のボーフォールよりも黄色が強くなっています。黄色味が強くなるに従い、味も濃厚になり、塩味も強くなります。このボーフォール・エテは、フェルミエで購入したものですが、ブラン・ピチェはサヴォワにある高原の名前で標高2000mにある3軒の農家で放牧されているミルクから造られているようです(フェルミエのHPより)

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ボーフォール・エテ(ブラン・ピチェ)

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テースティングレポート

3種類の山のチーズ(ボーフォールは、普通のボーフォールとエテ)の比較です。

コンテ18ヶ月:ヒサダ(伊勢丹店)で購入930円/100g

アボンダンス:フェルミエ(渋谷店)で購入 1,050円/100g

ボーフォール:ヒサダ(伊勢丹店)で購入 1,408円/100g

ボーフォール・エテ・ブランピチェ:フェルミエ(渋谷店)で購入 1,200円/100g

ヒサダさんのボーフォールの価格は高めです。同時にアボンダンスも入荷したようですが、不良発酵(酪酸発酵)しており、売り物にはならなかったようです。

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左からコンテ、アボンダンス、ボーフォール、ボーフォール・エテ

ボーフォール・エテ・ブラン・ピチェの黄色が僅かに強いですが、それ以外はそれほど変わりません。若いコンテは、もう少し薄いクリーム色です。

コンテ:ナッツの香りと特徴的なホクホクとした栗の味わいです。やや粘り気もあり、甘み・塩味のバランスが絶妙です。これより若いコンテは、よりあっさり、さらに熟成したものは濃厚になりますが、塩味も強くなります。この18ヶ月は、アミノ酸の塊のシャリシャリ感があり、これが強い旨味を引き出しています。

アボンダンス:3種の中ではもっともアッサリした味わいです。塩味もやさしく、甘さもそれほど感じません。非加熱圧搾タイプなので水分をより含んでいそうですが、むしろ逆のようにも感じます。小さな気泡が少し見られます。

ボーフォール:これは、比較的あっさりしたボーフォールのように感じます。塩味は強くなく、ナッツの香りも穏やかです。

ボーフォール・エテ・ブラン・ピチェ:これは濃厚です。コンテ18ヶ月同様アミノ酸のシャリシャリ感があります。塩味もそれなりに強いため、あまり一度の大量に食べられないチーズかと思います。

濃厚さを比較すると

 ボーフォール・エテ > コンテ18ヶ月 ≧ ボーフォール > アボンダンス

という感じです。個人的には、ボーフォールが好みですが、今回は、コンテ18ヶ月に軍配があがります。実は、今回のフェルミエさんのボーフォール・エテ・ブラン・ピチェには。エテでないボーフォール・ブラン・ピチェというチーズがあります。何度か食べていますが、実は、このボーフォール・ブラン・ピチェというチーズが、一番のお気に入りです。今回のコンテ同様、塩味と旨味のバランスが非常に良いチーズです。

フランスの価格に比べると、日本で販売されているコンテは凄く高いですが、スーパーで、真空パックされたコンテが比較的手ごろな価格で販売されています。これらは、外皮が取り除かれているので、捨てる部分が無く、コストパフォーマンスは高いです。

ワインとの相性です。

白は、ジャン・クロード・ベッサンのシャブリ・グランド・クリュ ヴァルミュール 2010年、赤は、サリチェ・サレンティーノ レゼルヴァ 2014年です。

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 白のシャブリですが、9年熟成のグラン・クリュなので、シャープな酸が特徴の普通のシャブリとは全く違います。樽や熟成に起因するバニラやナッツの香りと山のチーズの持つナッツの香りが良く合っています。赤についても、チーズ自体が濃厚なので、ワインに決して負けません。ペアリングとしては、どっちもありだと思います。

サリチェ・サレンティーノは、南イタリアのネグロ・アマーロ種のワインで、濃いめの風味を持ちます。少し塩味の利いたセミハード・ハードチーズは、とでもよく合います。

お気に入りのボーフォールは、前述のとおり、生産者が限られているせいか、日本での流通量は多くありません。ネットでもあまり見られません。見つければ買いだと思います。いずれ、機会があれば、アルパージュ含めて、ボーフォールの比較を行ってみたいと思います。

<了>

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