今年2月に訪れた南イタリアで購入したワインのテースティング記録です。カンパーニュ州、プーリア州、シチリアで購入し、ハンドキャリーしたワインをご紹介します。
タウラージ 2012年/フェウディ・ディ・サン・グレコリオ (Tauradi D.O.C.G)
カンパーニャを代表する生産者のひとつであるフェウディ・ディ・サン・グレコリオのタウラージです。タウラージDOCG の規定では、アリアニコ種が85%以上ですが、このワインを含め、多くのワインは、アリアニコ種100%で造られています。アリアニコは、南イタリア全般で栽培されており、今回の旅行で訪れたシチリア島でも何回かこの品種のワインを飲みました。非常に力強い男性的なワインを生み出す品種です。
ナポリでは、ホテルのレストランでも同じサン・グレコリオのタウラジを飲んでいます。こちらのヴィンテージは2010年でした。フェウディ・ディ・サン・グレコリオは、ナポリ空港でもショップを出していました。確かワインバーだったと思います。日本でも入手は容易なワインです。このタウラジの上級ワインにピアーノ・ディ・モンテヴェルジーネという名称のレゼルヴァワインがあります。以前飲んだころがありますが、結構濃厚で、タニックなワインと記憶しています。
濃い目のダークチェリーレッド、長いレッグです。ブラックベリー、ブラックチェリー、ブルーベリー、プラムの黒系果実のコンポート、甘草、ナツメグ、なめし皮、タバコ、コーヒーの複雑な香り。凝縮した果実味と土っぽさ、スパイシーで力強い酸をアタック~中盤に感じます。チーズは、右手前コルビージャック、右奥ボーフォール・エテ、中央カマンベール・パステュリ、右イタリアのランゲリーノです。白カビ系のチーズは、ワインに完全に負けています。濃厚なセミハード系のチーズがこのワインによく合います。
3.5
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サリチェ・サレンティーノ レゼルヴァ 2014年/レオーネ デ カストリス サリーチェ (Salice Salentino D.O.C)
サリチェ・サレンティーノは、プーリア州を代表するDOC(統制原産地呼称ワイン)ワインです。イタリアの形状は長靴に例えられますが、プーリア州はその長靴の「かかと」に位置し、サリチェ・サレンティーノはさらに、そのかかとの「先端」にあたります。東をアドリア海、南をイオニア海という二つの海に面し、気候は地中海性気候で1年を通して気温が高く、夏季は乾燥して雨量が少ないのですが、冬季は雨が多く強い風が吹きます。この土地でワインに使われるブドウは、ネグロ・アマーロ種がメインです。ネグロ・アマーロ種は黒色が深く、強い芳香と渋みがあるのが特徴です。DOCでは赤ワインをつくる場合、ネグロ・アマーロ種を80%以上用いることが規定として定められています。このワインには、マルヴァジア・ネーラ種という品種が10%程度混醸されているようです。マルヴァジアというと華やかな香りの白ワインを思い浮かべますが、マルヴァジア・ネーラ種は赤ワインの品種です。
深く濃いラズベリーレッド。ブラックベリー、ブルーベリー、プルーンの黒系果実の香り、シナモン、ナツメグ、甘草、ミントっぽいハーブの香り、24ヶ月の熟成が必要なレぜルヴァということもあり、濃い・渋いのイメージがありましたが、思ったよりまろやかで、酸味と果実味のバランスが取れた味です。後味には少しタンニンを感じます。このまろやかさは、恐らく混醸されているマルヴァジーア・ネーラ種によるものかと思います。価格的にも、16.5€(観光地価格だと思います)、日本では1700円くらいで購入可能です。
3.6
ドンナフガータ フロラムンディ( DONNAFUGATA Floramundi)2016 年/チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアD.O.C.G
ドンナフガータ スル・ヴルカーノ( DONNAFUGATA SUL VULCANO)2016 年/エトナ・ロッソD.O.C
ドンナフガータ( DONNAFUGATA)社は元々マルサルワインの生産者の家系をもつジャコモ・ラロー氏が、シチリア貴族出身のガブリエラ夫人や彼らの子供達と共に、より上質なワイン造りを目指してシチリア島コンテッサ・エンテリーナの地で1983年に創業したワイナリーです。ドンナフガータというのは、「逃げた女」という意味で、19世紀初頭にブルボン朝の王フェルナンデス4世の妃マリア・カロリーナ王女が、ナポリで起きた革命を逃れてドンナフガータ社の自社葡萄畑や醸造所のあるコンテッサ・エンテリーナの地へ逃げてきたという歴史に因んで名付けられました。ラベルには女性が描かれています。
シチリア島のワインショップで、ジェケ買い(笑)した2本です。
フロラムンディは、チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアD.O.C.Gのワインです。ネロ・ダーヴォラ 70%, フラッパート30% のセパージュ、アルコール度数13度です。
中程度のラズベリーレッド、ネオ・ダーヴォラの特徴の出た黒系と赤系の中間のような果実、ブルーベリー、ラズベリー。胡椒、(甘くない)チョコレート、皮のニュアンス。軽くはありませんが、重すぎる訳でもなく、タンニンも荒々しくはありません。意外に柔らかいのは、フラッパートブレンドの効果と思われます。肉を中心に色々な料理に合わせやすいワインだと思います。
3.4
スル ヴルカーノ ロッソは、ネレッロマスカレーゼ100%のワインでファーストヴィンテージがこの2016年のようです。ネレッロマスカレーゼは、厳格なタンニンをもちながら色は濃くない品種(ソムリエ教本より)のようです。
フロラムンディに比べると明らかに軽いワインに感じます。ただ意外にアルコール度数は、13.5度と少し高めです。
明るいラズベリーレッド。イチゴ、クランベリー、ラズベリー、チェリー、薔薇、スミレ、シナモン。確かにタンニンを感じますが、それほど強くはありません。少し時間が経つと、土の香りも出てきて、更にタンニンは弱まり、甘みが増してきます。
3.2
左がフロラムンディ、右がスル ヴルカーノですが、明らかにスル・ヴルカーノの方が薄い色です。どちらかと言えば、トマトを使ったランチに合いそうなワインです。
チーズは、オッソ―イラティ、ピアーヴェ、ブルー・ド・ラカイユ、カマンベール(パステリゼ)、パルミジャーノ・レッジャーノです。同じイタリアだからという訳でもありませんが、やはり、ピアーヴェやパルミジャーノ・レッジャーノが合います。
続いて白ワインです。
グレコ・ディ・トゥーフォ/ピエトラクーパ 2016年/ Greco di tufo(Pietracupa)
カンパニア州を代表する白ワイン、グレコ・ディ・トゥーフォD.O.C.Gです。ギリシアが起源と言われるグレコ種のワインで、トゥーフォとは、火山灰の土壌を意味しています。
色はイエロー、意外に濃い色です。香りに圧倒的なミネラルや石灰、塩気を感じます。色が示すように、どちらかと言えば柑橘系よりも、リンゴやパイナップルなどの少し黄色い果実を感じます(アプリコットといった濃厚な黄色系果実ではありません)。ただ、甘みが強い訳ではなく、辛口で、はっきりとした酸があります。現地(ナポリ)で飲んだ時の印象そのまま、魚介類に合いそうな、美味しいワインです。ソアーヴェのようにポピュラーなワインではありませんが、お気に入りのイタリア白ワインのひとつです。
3.4
72 フィラ-ラカタラット カンティーネ パオリーニ / 72 Filara Catarratto Cantine Paolini,
シチリア州の代表的な白ワイン品種であるカタラット種から造られるワインです。シチリア島の最西端マルサラの地で1964年に創業された協同組合カンティーネ・パオリーニによるものです。
色は黄金色。やや濃いめの色調です。グリーンアップル、グレープフルーツ等の柑橘系の香りに、アプリコット等の黄色い果実の香りが少し混じります。ミネラル、ミントっぽいハーブ。黄色い果実は感じるものの、味わいは、基本的にドライです。中盤から口中にやや苦みを伴った酸が広がります。しっかりしていますが、尖った酸ではなく、むしろ柔らかな酸です。魚介類に合わせやすいワインだと思います。確かに魚介類のカルパッチョにすごく合います。
裏ラベルにも、ウニと魚介類のスパゲッティとの相性がパーフェクトとの記述があります。↓シチリアのウニのスパゲッティ、まさにこれです。
3.3
シチリアを含め南イタリアの赤ワインは、アリアニコやネロ・ダヴォラをいった品種から力強く濃厚なイメージがあります。しかし、力強強い品種に優しい品種をブレンドしたワイン(サリチェ・サレンティーノ、エトナ・ロッソ、チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアなど)は、ちょっとそのイメージが覆ります。ブレンドの妙により、飲みやすさと複雑さを与えてくれます。自身の好みのど真ん中にある赤ワインです。
白ワインは、どれも良いですね。シチリアも良いですし、グレコ・ディ・トゥーフォは、見つければ飛びついてしまいます。
<了>