フランスのシェーヴルチーズ2種。ほたて貝のスタンプが面白い「コンポステル」と珍しい燻製のシェーヴルチーズ「ブカニエ」です。フルーティなJ.LASSALLEのシャンパンと合わせました。
まず、コンポステル(Compostelle)です。
この名前は、スペインの巡礼地、サンティアゴ・デ・コンポステーラに由来しています。サンティアゴ・デ・コンポステーラには、聖ヤコブ(スペイン語でサンティアゴ)の遺骸があるとされ、ローマ、エルサレムと並んでキリスト教の三大巡礼地に数えられています。このチーズは、この巡礼地に向かう経路にあるフランスのミディ・ピレネー地方ロット県で造られているものです。この地の有名なAOP(原産地名称統制)チーズが、ロカマドール(Rocamadour)です。ロカマドールは、直径6cm重さ35gほどのメダル型をした小さなシェーヴルチーズですが、製法は、このロカマドールと同じようです。確かにロカマドールを大きくして、ホタテのスタンプを押したような感じです。
ホタテ貝は、キリストの最初の使徒のヤコブのシンボルで、ヤコブを慕う殉教者の服に縫いつけていたホタテ貝をロカマドールで落としてしまい、それを拾った山羊使いがチーズの型付けに使ったという逸話があるようです。
重さは120g乳脂肪45%、新宿伊勢丹のヒサダさんで、1,721円(税込)でした。
表皮は薄いクリーム色、中はシェーヴルらしい真っ白です。 非常に柔らかく、ミルキーな味わいの中にやさしい酸味を感じます。夏の室温(28℃)で端から溶けてきています。
熟成させると水分が抜けてピリッとしたシャープな味わいになるようです。
次に、ブカニエ(boucanier)です。
品名に「(シェーブル・フュメ)」とあります。フュメ(Fumé)はフランス語で、煙・燻製の意味です。ブナの木で燻した山羊製チーズです。牛乳製のスモークは多数ありますが、スモークしたシェーヴルというのは初めてです。
カリブに住んでいたインディアンが、肉や魚を長期保存するために塩漬けにした後、燻製した際に使う木の小屋ブカン(boucan)が語源のようです。ちなみにboucanierを辞書でひくと、「(カリブ海の)海賊」と出てきます。
三角のおにぎり形のチーズで、店頭で産地を聞いたら、リヨンとのことでしたが、南フランスのオートプロヴァンス産のようです。
プロヴァンス産シェーヴルといえば、ハーブを食して育った山羊のミルクの香りですが、このチーズは完全に燻製香が勝っています。ただ、燻製チーズにイメージするような色ではなく、ほんの僅かに黄色がかっている程度の色あいです。
コンポステル以上に中身はとろとろで、室温では、あっという間に形が崩れていきます。思ったより、燻香を感じる風味です。今まで体験したことのない、複雑な味のシェーヴルチーズです。
こちらも新宿伊勢丹のヒサダさんで購入。価格は、1,361円(税込)でした。
合わせたお酒は、シャンパン、J .ラサール(J.LASSALLE)プレフェランス・ブリュットです。J.ラサールは、モンターニュ・ド・ランス地区にあるシニー・レ・ローズ村に拠を構える小さなレコルタン・マニピュラン(RM)ですが、比較的高い評価を受けているようです。スタンダードキュベですが、ラベルには"PREMIER CRU"とあります。1級畑のブドウが使われているようです。 ピノ・ムニエ主体(60%)とのこと。
こちらのシャンパンは、ウメムラさんで、3,800円(税抜)でした。
クリーミーで綺麗な泡です。青りんごやハチミツ、白い花。瓶内熟成によるイースト香はそれほど強くはなく、どちらかというとフレッシュな果実感が強く、するすると飲めてしまいます。癖のない美味しいシャンパンです。
シェーヴルにとてもよく合います。燻製香のするブカニエには、ナッツ香が表に出た複雑な香りの熟成シャンパンもよく合うのではないかと思います。
翌日は、フルーティーな日本酒にあわせてみました。これについては、また書きたいと思います。
<了>