8/30~9/8の10日間でフランスのシャンパーニュ地方とブルゴーニュ地方をレンタカーで旅行しました。コート・ドール北部のジュヴレ・シャンベルタンのワインは、ナポレオンが愛したワインとして知られ、ブルゴーニュワインの中でも特に男性的な力強さを特徴とすることで知られています。
ジュヴレ・シャンベルタン村、ディジョンを南下すること約14km、北をフィサン村、南をモレ・サンドニ村に挟まれた、人口3000人ほどの村です。コート・ド・ニュイ地方の中では、ニュイ・サンジョルジュやマルサネ・ラ・コートに次ぐ人口を持ちますが、感覚的にはニュイ・サンジョルジュに比べると遥かに小さな村に感じます。
▼村のほぼ中心に位置する記念碑広場(5 Place du Monument)です。
▼レストランの壁をよく見ると一面にジュヴレ・シャンベルタンの畑の名前が書かれています、
▼フランスは大小問わず、どの町も花で飾られた風景が見られます。この村も例外でなく、街の中も普通の家でも、至る所に花で溢れています。
▼ワインショップもこの通り、お洒落です。
▼街角の目立つ場所に、フィリップ・ルクレールのドメーヌがあります。
ここは、2015年8月に訪問しています。外観からは想像できませんが、内部はカオスな博物館のような感じです。結構オープンで、比較的、見学の予約も取りやすいドメーヌのようです。あまり、メディアには登場しませんが、個人的には、結構、昔から気にしているドメーヌです。
↓こちらの記事の後半部分にドメーヌの訪問記を書いています。
https://www.wine-and-cheese.net/entry/2019/07/22/001116
▼ショーン・コネリーと一緒に写っている男性が当主です。
以下は、ワイン産地としてのジュヴレ・シャンベルタン村の紹介です。
ジュヴレ・シャンベルタンは、ブルゴーニュの中でも、特に男性的な力強いワインを産出することで知られていますが、このアペラシオンのテロワールに大きな影響を与えているのが、集落背後にあるラヴォー背斜面です。この背斜面を境に、ジュヴレ・シャンベルタンの畑は、北部・南部・扇状地に分かれます。
ジュヴレ・シャンベルタンは、少しネガティブな言い方で、良し悪しのばらつきが多いとも評されることがありますが、その要因が3分の2もの面積を占める扇状地に広がる村名格の畑の存在です。通常、コート・ドールの村名格以上の畑は、南北に走る国道74号線の東側に位置しています。国道を跨いだ西側の平坦地は、土壌的には劣るため、通常は村名格の畑は存在しないのですが、ジュヴレ・シャンベルタンは例外でこの地域にジュヴレ・シャンベルタンAOCを名乗れる村名格が広がっています。もちろん、この中には優れた村名格畑も存在していますが、玉石混合であることは否めないようです。
という背景もあり、ジュヴレ・シャンベルタン村名AOCのワインを選ぶ場合は、意識して生産者で選ぶようにしています。
グラン・クリュの畑が広がる南部は、東向きの緩やかな斜面で、「グラン・クリュ街道(Route des Grands Cru)」を挟んで上下に、7つの特級畑が並んでいます。母岩は石灰岩がメインですが、中腹には、粘土質石灰岩や泥灰岩は混ざっており、ワインに力強さを与えています。
▼シャンベルタンの畑です。クロ―ズ・ド・べーズと並んで重厚で力強いワインを生みだします。
▼シャンベルタン・クローズ・ド・べーズです。
ピエール・ダモアのこの小屋(?)。すごく分かりやすい目印です。
▼ドメーヌ・ジャック・プリウールのクロ―ズ・ド・ベーゼの畑です。
▼ラトリシエール・シャンベルタンの畑です。ジュブレ・シャンベルタンの特級のなかでは、比較的軽めのワインと評されます。
▼ドメーヌ・ルイ・レミーの畑です。
▼特級畑の中で最も面積が小さいグリオット・シャンベルタンの畑です。グリオット(野生のサクランボ)の名前が示すように、果実味溢れるワインになります。
↓ジョセフ・ロティのグリオット・シャンベルタンの記録です。
https://www.wine-and-cheese.net/entry/2019/05/30/002751
比較的、近づきやすいシャンベルタンで好みでした。
▼ルショット・シャンベルタン。ここは、今回行けませんでした。以下は、2015年の時の写真です。ルショット・シャンベルタンは、ジュヴレ・シャンベルタンのグランクリュの中でも北部に位置し、標高も比較的高めです。薄い表土で、シャンベルタンやクローズ・ド・ベーゼほど力強いワインではありませんが、果実味豊かなワインを生みだします。アルマン・ルソーが単独所有している区画が、下の石垣に囲まれたクロ・デ・リュショット(モノポール)で、1977年にルソーが手に入れています。
▼ルショット・シャンベルタンからジュヴレ・シャンベルタンの中心~国道に向かう東側に広がる畑の風景です。
2015年に初めてブルゴーニュを訪れた時も、このグラン・クリュ街道の上下に広がる畑を見学していたのですが、ジュヴレ・シャンベルタンの北部には行けませんでした。ということで、今回は、特に北部の1級畑を訪れたいと考えていました。
北部は標高的には、グラン・クリュより高く、標高290m~350m(グラン・クリュは、標高260m~300m)に1級畑が広がっています。更に、オー・コートからラヴォー背斜谷(Combe Lavaux)を吹き抜ける冷風の影響でやや冷涼な気候ながら、やや南に向いた斜面になる為、日照量は問題ありません。グラン・クリュの畑と同様の石灰岩を母岩とする土壌になります。
▼最も評価の高い1級畑クロ・サンジャック(Le Clos Saimt-Jacques)の畑を示す看板があります。
▼石垣(クロ)に囲まれた畑が、クロ・サン・ジャックです。
↓アルマン・ルソーのクロ・サン・ジャックのテイスティング記録です。ヴィンテージ(2005年)の良さも手伝い、素晴らしいワインでした。
https://www.wine-and-cheese.net/entry/2019/08/21/005008
ルソー以外の有名生産者は、フーリエやブリュノ・クレールでしょうか。
▼クロ・サン・ジャックと道路を挟んで隣り合うラヴォーの畑です。より南向きの緩やかな斜面です。
▼こちらは、1級のカズティエール(Les Cazetiers)の畑です。
▼こちらは、村名の畑と思われます。
ブルゴーニュに限ったことではありませんが、生産者の力量にワインの良し悪しが左右されるのは、言うまでもありません。しかし、テロワールの影響も無視できないものもあります。テロワールを知り、そのテロワールの特徴をうまく出せる生産者を見つけるのも好みのワインを探す楽しみかと思います。
実際に自身の目で、グランクリュ街道沿いの特急畑を見て、そのテロワールのことを知ると確かに良いワインができるのは、納得できるような気がします。しかし、ジュヴレ・シャンベルタンの北部の山沿いの畑で、時には特級を凌ぐようなワインが生産されるのは何故かということを実際に畑を見て知ることも、新たな発見ができて、よりそのワインに親しみを持てることに繋がるとのではないか思います。
<了>