カルフォルニア・ソノマカウンティのカリン・セラ―ズ・シャルドネ1995年です。24年熟成の古酒が醸し出す複雑な香りと未だ甘く活き活きとした果実感、エレガントな酸は、唯一無二の味わいでした。作り手が目指したのは、長期熟成による”Umami(旨味)”の追求です。
カリン・セラーズのオーナーであるテリー・レイトン氏は、世の中の大半の高級ワインはそれがニューワールドであれ伝統的産地であれ、本来の素晴らしさが現れる前に飲まれてしまっていると嘆き、それを安定供給させるため、自らが造ったワインを10年以上熟成させてから出荷しています。
「湿度と温度がコントロールされた地下セラーで長年熟成されたワインには、ピュアな熟成感とともに第5の味覚である“旨味”が生まれる」という考えで長期熟成を行っていいるようですが、5~6千円のワインをセラーでこれだけの長期熟成させられるのは、余程の資金力を必要とすると思われます。また、当然ながら、ブドウは、たっぷりとした酸と甘みを備えている必要があります。このシャルドネは、ソノマ・コーストのチャールズ・ハインツが所有するチャールズ・ハインツ産のブドウから造られています。チャールズ・ハイランド産のブドウは、デュモル、ウィリアムズ・セリエム、ケスナー、フラワーズなど名立たるワイナリで使われています。今回ほどの古酒ではありませんが、デュモル(DuMOL)の古酒は何回か飲んだことがあります。酸化とか無縁の素晴らしく若々しく、華やかで、かつ力強いワインで、暫く、デュモルに嵌ったことを記憶しています。
▼カリン・セラーズ シャルドネ キュヴェ・チャールズ・ハインツ [1995]
濃い黄金色。抜栓当初冷えすぎており、香りがあまり立ちませんが、カリン(ワイナリー名は関係ないと思いますが...)、ビワに蜂蜜の香り。少し置くと、桃やマンゴー、さらに時間が経つと、ノワゼット等のナッツ香やほんのり、ブラウンマッシュルームの香りも出てきて複雑さを増していきます。樽由来のバニラ香もありますが、一般的なカリフォルニア白に比べて、それ程樽香が強いわけではありません。アタックは、意外にも甘く、蜂蜜っぽさを感じます。もちろん20年を超す古酒なので、酸化のニュアンスはありますが、ネガティブなものではなく、かつ、甘みと酸味に隠れている印象です。
シャンパンではありますが、しばらく前に飲んだ、同じ1995年のシャルル・エドシックのブラン・ド・ミレネール1995年にも通じるところがあります。
料理との相性です。
スモークサーモンは当然ながら相性は良いですが、右上のキノコのチキンロールが意外と合いました。キノコの風味やタレの甘さとマッチしているようです。
今回のカリン・セラ―ズを若い時に飲むとおそらく、新世界のワインに良くある少々甘ったるい感じのシャルドネワインという印象で終わってしまう気がします。
熟成のポテンシャルを備えた健全なブドウに、理想的な環境での長期熟成によって得られる複雑さは、まさに、旨味を持つワインを造り出すのに欠かせない要素になっているのを感じました。これは、お奨め!
(3.8)
<了>