Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

山のチーズと味わう生酒飲み比べ

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ひやおろしが、そろそろ終わり、替わって、新酒の生酒が店頭に並ぶ季節になりました。フレッシュ感がありながら、濃厚さも味わえる生酒3種と山のチーズを合わせてみました。

 最近は、低温熟成させ、熱い夏に楽しむ「夏の生酒」も人気がありますが、やはり、造りたての冬の生酒は格別だと思います。

比較的入手が容易な3本の生酒を山のチーズと味わいながら飲み比べてみました。

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雪の茅舎 純米吟醸 生酒

あきた酒こまち80%、山田錦20%、精米歩合55%、自社酵母使用、度数16度

秋田県由利本荘市の齋彌酒造店の「雪の茅舎」の純米吟醸の生酒バージョンです。
もともと秋田の銘酒として知られていましたが、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で山内杜氏である高橋杜氏の酒造りが紹介されたこともあり、店舗での露出が多くなったように感じます。2014年9月~2015年5月には、ANAのファーストクラスの機内酒にも採用されています。

雪の茅舎と言えば、純米吟醸酒が主流ですが、これは、純米吟醸の新酒生酒バージョン(BY31.11)です。首掛けに「日本酒ヌーボ」と書かれています。

3種のなかで唯一無色透明、クリスタルカラーです。
もともとの(火入れした)純米吟醸酒も果実感を感じさせる甘く華やかな味わいでスッキリとしたのど越しを楽しめる日本酒ですが、この生酒は、メロン、桃(これが生酒特有の香り)、洋梨等の甘い果実を感じさせます。適度な酸もありますが、甘みが主体で、苦みは抑えられています。日本酒をあまり飲みなれていない女性でも楽しめる日本酒かと思います。

紀土  純米吟醸 しぼりたて 生酒

五百万石100%、精米歩合 麹米50%/掛米55%、協会9号酵母、度数15度

和歌山県海南市平和酒造の「紀土 -KID- 純米吟醸 しぼりたて」です。
五百万石の特徴が出た爽やかでキレのある味わいです。9号酵母により、リンゴやグレープフルーツの香りがあります。抜栓直後、僅かに発泡感のある酸を感じますが、この酸が、甘すぎず少しシャープな飲み口を表現しているようです。

加賀鳶 極寒純米 無濾過・生

契約栽培米・酒造好適米福の華、精米歩合65%、使用酵母は不明、度数18度

石川県金沢市福光屋の加賀鳶の純米酒です。生酒ですが、3種の中で唯一原酒になります。

先の2本と異なり、果実香よりも炊いた米の香りが前面に出ています。僅かにグレープフルーツの果実香を感じます。上品な甘みは控えめで、切れの良い酸と心地よい苦みがアフターに感じられます。辛口で旨味もあり、食虫酒としてはベストかと思います。原酒ということですが、アルコール感はそれほど感じません。比較的飲み易い「原酒」だと思います。あまり冷やしすぎると、後味にやや苦みを感じるようなので、常温かぬる燗も良いのではないかと思います。

これらの生酒に合わせた山のチーズです。

ボーフォール  ダルパージュ  27ヶ月熟成

フランス・サヴォア地方の山のチーズです。6月から10月の期間に、標高1500m以上の高地で放牧場(アルパージュ)で放牧される一群れの牛の、搾りたてのミルクを原料とし、山小屋(シャレ)で造られますたものが「ボーフォール・ダルパージュ (beaufort d'alpage)」を名乗れます。同じ群れの乳を使用する為、食べた牧草の影響が反映され易く、その土地や環境の個性が表現された風味のチーズになると言われています。
ボーフォールの最低熟成期間は5ヶ月で、12ヶ月前後のものが良く出回っていますが、このボーフォール・ダルパージュは、27ヶ月もの間熟成したものです。通常のボーフォールは100g千円ちょっとですが、ダルパージュは少し高めになります。さすがにこの27ヶ月となると価格も跳ね上がり、1580円/100gとかなりの高価なチーズです。

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長い熟成により、かなり黄色が強くなっています。夏に造られるエテやダルパージュは、通常のボーフォールよりも塩味が強いので、27ヶ月ものについては、相当塩味が強いかと想像しましたが、実際は、それほどではありませんでした。
さすがに濃厚で、ナッツや草の香りと旨味が凝縮した山のチーズです。

雪の茅舎や紀土の純米吟醸の甘みや果実感と、相反する塩味が良く合います。旨味が強いので、加賀鳶の純米酒との相性も悪くはありません。濃厚な味わいは、幅広い赤ワインも合わせられると思います。

トム・デ・ボージュ

こちらもフランス・サヴォア地方のチーズです。

「トム」は、ポーション(ひとかたまり)の意味があり、大型のものに対し各農家で造られる小さめのチーズを指して呼ばれます。
表面は様々なカビに覆われた固い表皮に覆われており、カビや納屋のような香りで食べ慣れないと少々抵抗があるかと思いますが、内部は、適度に柔らかく、ミルクの香りのやさしい味わいのチーズです。

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山のチーズにありがちな強い塩味はなく、どちらかと言えばマイルドなチーズです。ナッツや藁を感じる素朴な香りと僅かな酸味に優しい味わいは、色々なお酒と合います。白ワインや幅広い日本酒に合うチーズだと思います。 

湯の丸高原 山のチーズ

珍しい国産の山のチーズ、軽井沢のアトリエ・ド・フロマージュのオリジナル・チーズです。
アトリエ・ド・フロマージュは、フランスのチーズを模した創作チーズを色々と造っており、サン・マルスランを模した「ココン」やアボンダンスを模した「軽井沢チーズ」や本格的なブルーチーズを生産しており、国内はもとより、海外のコンペティションでも高い評価を得ています。
湯の丸高原チーズは、サヴォア地方の「トム・デ・サヴォア」を模したチーズのようです。まさに今回のトム・デ・ボージュとよく似たチーズです。

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上の写真では、やや黄色く見えますが、ボーフォールやトム・デ・ヴォ―ジュに比べると結構白いことが分かります。小さな穴が表面に多く見られ、これもトム・デ・ヴォ―ジュに近いものがあります。ただ、色は、かなり異なります。

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 確かにテクスチャーや食感は、トム・デ・ヴォ―ジュに似ています。ボーフォールやコンテ、そしてアボンダンスとは異なります。ややしっかりした外皮がありますが、カビだらけのトム・デ・ヴォ―ジュに比べると結構上品?な外観です。外皮がカビに覆われたチーズに抵抗がある人でも受け入れやすいチーズだと思います。ただ、やや塩味を感じます。外皮に加え、色とこの塩味が、本家とは少し異なりますが、癖のない香りや味わいは、ある意味日本人に合ったチーズの印象です。

適度な塩味により、甘みを感じる純米吟醸、そして旨辛口タイプの加賀鳶にも良く合うチーズだと思います。

夏の生酒は、フレッシュチーズやシェーブルチーズが合いますが、冬に飲む出来立ての生酒には、濃厚な山のチーズと合わせるのが面白いかと思います。

<了>