ヴォーヌ・ロマネに本拠を置く家族経営の小規模ドメーヌ、ロベール・シリュグの村名と1級のレ・プティ・モンです。2000年代後半からエレガントなスタイルが顕著になり評価が急上昇しました。2011年ヴィンテージで飲み比べました。
ドメーヌは、ロベール・シュルグ氏により、1960年に創立されました。2000年代半ばまでは、クラシカルなワインを造っていたようですが、2006年頃からエレガント路線に転向し、日本ではリアルワインガイド(RWG)誌で高く評価されたことがきっかけで、人気に火がつきました。品質を高めたのが、長男のジャン・ルイ・シュルグと長女のマリー・フランセ女史で、所有する全ての畑(11ha)全てでリュット・レゾネ(減農薬農法)を採用、手作業による収穫、人為的な介入を極力避けエレガントなワイン造りを行っています。女性従業員が多いことでも知られています。現在は、ジャン・ルイ氏の息子アルノー氏がドメーヌを継いでいますが、その後のRWG誌の評価はいまいちのようです(最近の代替わりでのでデグレードするのは珍しい)
ヴォーヌ・ロマネ V.V. 2011年
ロベール・シュルグは、2種類のヴォーヌ・ロマネ村名を造っています。通常のキュベに加えて、樹齢60年以上の古樹から造られるヴィエイユ・ヴィーニュ(V.V.)です。V.V.は、造られない年もあり、その場合、V.V.の畑のブドウから造られるワインがブレンドされています。2011年は、あまり良い年ではありませんが、リリースされています。平均年産3000本フラジェ・エシェゾー村の中のわずかな村名畑(Les Violettes、Les Portes-Feuilles ou Murailles de Clos、Chalandins)とヴォーヌ・ロマネ村の村名畑 (Vigneux)の 4 カ所の樹齢の古い区画のブドウが使われているようです。
新樽率30%。
澄んだ明るいラズベリーレッド。エッジには僅かにレンガ色が入る。
ラズベリー、アメリカンチェリーの赤系果実。スミレの花、シナモン、甘草のスパイス香。樽熟成由来の香りは、それほど強く感じない。味わいは、フルーティな印象で、酸度がやや高く感じられる。果実味が主体で、熟成香はまだ弱い。村名なので、あまり贅沢はいえないが、もう少し中盤の厚みがほしい。ちょっと難しいヴィンテージ。
2日目は、やや甘みも出てきたが、酸の強さはあまり変わらない。
(3.2)
ヴォーヌ・ロマネ 1erCru プティ・モン 2011年
このドメーヌのフラッグシップはグラン・エシェゾーですが、それに次ぐキュヴのヴォーヌ・ロマネ1級のプティ・モン(Pettis Monts)です。
プティ・モンの畑は特級畑リシュブールの上部に位置し、北側はクロ・パラントゥー、南側はオー・レイニョに隣接。平均樹齢は45年。栽培はリュットレゾネで行われ、収穫はすべて手作業。収穫後の果実は100%除梗を行った上で、30℃から32℃の温度でステンレスタンクによる発酵。新樽比率50%で18~20ヶ月熟成される。熟成中の澱引きは2回程度。無濾過、無清張で瓶詰めされる。
▼クロ・パラントゥーの畑上部から撮影。
前銘柄同様、中程度のラズベリーレッドだが、村名に比べるとわずかに濃いめ。ベリーやチェリーの赤系の果実香や花の香りの傾向も同じであるが、こちらは樽香(バニラビーンズ)がはっきり感じられる。前銘柄に比べると複雑な香りで、前述のオーク香にハーブ、丁子、シナモン、なめし皮等の香りが加わる。酸は、前銘柄に比べるとマイルドで、中盤も充実しており、華やかだが、全体的に調和がとれている印象。
(3.5)
樽香については、調べると、新樽率の高さに加え、異なるメーカのトロンセの樽を含め複数の新樽を使っているようで、これが複雑な香りを生み出す要素になっているようです。
▼左がヴォーヌ・ロマネV.V.、右が1級プティ・モンです。
チーズは、コンテ18M、アッペンツェラ黒ラベル、ヴュリー・ルージュ、そしてゴルゴンゾーラマスカルポーネ。
ピノ・ノワールで洗ったヴュリー・ルージュはブル赤に合うのですが、このチーズ、熟成が進むとやや強い苦味が出てきます。カットで購入したら早めに食べた方が良さそうです。意外なのが、ゴルゴンゾーラマスカルポーネ。名前の通り、ゴルゴンゾーラとマスカルポーネが交互に層になっているチーズです。シャープなブルーチーズは、繊細なピノにはあまり合わないのですが、マスカルポーネのお陰で、まろやかな味わいで、ピノの風味を潰しません。
▼鴨のサラダと鶏肉のラタティーユ風煮込み
どちらも相性はバッチリです。
ロベール・シュルグは、2009、2011、2012年ヴィンテージを多く購入しています。ここのフラッグシップのグラン・エシェゾ-は僅か600本という生産本数の少なさから、なかなか入手が難しいワインですが、2011年と2012年のみなんとか購入できました。今回のプティ・モンの様子から判断すると、もう数年寝かせた方が良さそうです。
ここの村名は結構飲んでいますが、少しばらつきがあるようです。素晴らしい村名VRにも出会いますが、今回の2011 年は、酸が少し落ち着かず、ややフラットにも感じました。以前飲んだシャンボール・ミュジニーやラドワの2011 年は、良い印象だったので、もしかしたらボトル差かも知れません。
リアルワインガイド誌での2014年以降のここの村名の評価はちょっと酷いものですが、評価が落ち着いたら、また購入してみたいと思います。
<了>