Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

グロ・ファミリーのクロ・ヴージョ飲み比べ

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以前からトライしたかったヴォーヌ・ロマネに拠を構える名門グロ一家のドメーヌのワイン飲み比べです。ワインは、ミシェル・グロ、アンヌ・グロ、ベルナール・グロの3人のドメーヌが共通に所有するグランクリュのクロ・ヴージョです。

グロ家は、1830年からドメーヌ元詰めのワインを造っていた名門で、現在の基盤を造ったのが、4代目のルイ・グロでになります。
▼ルイ・グロからの家系図です。これは、AFグロのドメーヌにあったものに加筆しています。ちょっと複雑ですが、これが一番わかり易いかと思います。

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グロ家の名声を高めたのがジャン・グロ(Jean GROS)氏です。ジャン・グロ氏のドメーヌはやがて、長男のミシェルに引き継がれ、ジャン・グロの引退と共に1996年までに、畑は、ミシェルを含む3人の子供と1人の姪に相続されます。3人の子供は、実質的な後継者の長男ミシェル・グロ、長女のフランソワーズ・グロ、次男のベルナール・グロで、姪は、アンヌ・グロです。ミッシェルはドメーヌ・ミシェル・グロを継ぎ、ベルナールは、ジャン・グロの兄弟であるギュスターヴ・グロのドメーヌ、ドメーヌ・グロ・フレール・エ・スールを継ぎます。長女のフランソワーズ・グロは、ポマールの名門、パラン家に嫁ぎ、ドメーヌ・フランソワ・グロを名乗ります。
↓ドメーヌ・フランソワーズ・グロの訪問記については、以下をご参照ください。
https://www.wine-and-cheese.net/entry/2019/10/13/135042

姪のアンヌ・グロは、やはりジャン・グロの兄弟のフランソワ・グロの後を継ぎ、ドメーヌ・アンヌ・グロを興します。

グロ家の畑は、この4人に引き継がれましたが、最上の畑リシュブールは、長男のミシェルには引き継がれず、他の3人に相続されました。ヴォーヌ・ロマネのモノポール、クロ・デ・レアの相続との関係のようです。

ミシェル、ベルナール、アンヌが共通に所有するグランクリュが、今回のクロ・ヴージョです。

ベルナールが所有する区間が、ミュジニーに道路を挟んで隣接する「ミュジニー」の区画です。アンヌ・グロとミシェル・グロが所有する区画が、「グラン・モーペルテュイ」です。50haを超えるコート・ドール最大の特級畑のクロ・ヴージョにあって、上部にあたる西側の区画が、石灰質の占める割合が高く、良質のブドウを生み出す区画と言われています。その意味で、「ミュジニー」も「グラン・モーペルテュイ」もクロ・ヴージョ最良の区画と評価されています。

↓クロ・ヴージョの訪問記については、以下の記事もご参照ください。

https://www.wine-and-cheese.net/entry/2019/10/12/170010

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3ドメーヌのクロ・ヴージョの飲み比べです。

ヴィンテージを2010年に合わせたかったのですが、この年のアンヌ・グロは購入していなかったようで、アンヌ・グロのみ2009年ヴィンテージとしました。

3日間に渡って飲み、最初の2日はコルヴァン(アルゴンガス)を使用し、3日目に抜栓しました。

ドメーヌ・アンヌ・グロ クロ・ヴ―ジョ  2009年
Dom. Anne Gros Clos-Vougeot Le Grand Maupertui 2009

高貴でピュアなワインを手掛ける女性醸造家として、高い評価を得ています。フランソワ・グロの一人娘で、1993年にドメーヌを引き継いでいます。当初は「アンヌ・エ・フランソワ・グロ」というドメーヌ名でしたが、ジャン・グロの長女「アンヌ・フランソワーズ・グロ」と混同されることが多いため、「アンヌ・グロ」に改名したようです。
平均樹齢60年、100%除梗、80%の新樽比率。16ヶ月の樽熟成。

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リーデルのソムリエ グラン・クリュグラスにて。
紫色の入った艶のあるやや濃いめのラズベリーレッド。ラズベリー、ブルーベリー、アメリカンチェリーの赤いベリーの香りに、少し黒系果実の香りが混ざる。薔薇、ハーブ、胡椒、下草。タンニンは明確だが、シルキー。しっかりとしたスパイシーな芯を感じさせながらも、最もエレガントに感じるクロ・ヴージョです。熟成香はあまり目立たず、未だ若さを感じるワイン。樽香も他の2本に比べると明らかに弱い。 

f:id:turque1991:20200127231314p:plain(3.7) 2011年に14K円で購入

ドメーヌ・ミシェル・グロ クロ・ヴ―ジョ  2010年
Dom. Michel Gros Clos-Vougeot Le Grand Maupertui 2010

ジャン・グロの長男で実質的な後継者。リシュブールを持たず、このキュヴェがフラッグシップになりますが、ヴォーヌ・ロマネの1級モノポール、「クロ・デ・レア」所有者として有名です。村の中心に近いとことにあります。

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クロ・ヴージョの所有面積は、0.2haと僅かで、1000本を切る生産量のため、結構レアですが、日本での人気は高く、そこそこの数が入ってくるようで、比較的容易に入手できます。
100%除梗。新樽率は100%、18ヶ月樽熟成。

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縁に僅かにオレンジが入るラズベリーレッド。ラズベリー、ダークチェリー、ミネラル、ドライハーブ、甘草の甘苦味にバニラ、キノコ、コーヒーの樽由来の複雑な香り。骨格を感じる力強いアタックとスパイス感。時間が経つとやや酸がはっきりしてきて、少し甘苦いオレンジピールのような香りも感じられます。

f:id:turque1991:20200127231336p:plain(3.7) 2012年に13K円で購入

ドメーヌ・グロ・フィレ・エ・スール  クロ・ヴ―ジョ ミュジニー 2010年
Dom. Gros Frere et Seour Clos Vougeot Musigney 2010

ジャン・クロの次男で、子供のいなかった叔父・叔母のドメーヌ「グロ・フレール・エ・スールを1980年から引き継いでいます。
特級畑ミュジニーに隣接する「ミュジニー」のリュ―・ディーで生産されるクロ・ヴージョ。表土は30から40センチと浅く、砂利が多くみられる魚卵性石灰岩土壌です。
年間7000~8000本、100%除梗、新樽率100%で12ヶ月樽熟成。f:id:turque1991:20200127013945j:plain

少し濃いめのラズベリーレッド。最初の印象は、酸が強く、少し収斂性のあるタンニン。バニラ、なめし皮、コーヒー。果実もそれなりに豊かだが、オーク香が前2銘柄に比べて、明らかに強い。甘みのある中盤~少し苦みを伴うフィニッシュ。力強さを感じるクロ・ヴージョであるが、3日目になると前2銘柄にあまり感じない腐葉土の熟成香も出てきました。

以前は良く飲んだグロ・フィレ・エ・スールですが、樽香が結構強いことから、最近は少し敬遠気味でした。今回も、最初は、樽がやや強い印象でしたが、時間が経つにつれ、好ましい方向に複雑さが増す印象になりました。

f:id:turque1991:20200127234542p:plain(3.8) 2012年に8K円で購入

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色調を比べると、アンヌ・グロがヴィンテージが1年古いにもかかわらず、艶があり、若々しく感じます。最も濃いのがベルナールのグロ・フレール・エ・スールです。

▼ラザニア・キッシュ・ラタティーユ・チキンのオードブル&チーズ(フルムダンベール、アジアーゴ、パルミジャーノ・レッジャーノ、ウヴリアーコ・ダモーレ)と一緒に

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正直、優劣をつけ難いクロ・ヴージョでした。

まず、アンヌ・グロですが、新樽比率が他2銘柄より少し低いせいか、樽香はあまり目立たず、クロ・ヴージョの力強さはある程度もちあわせながらも、繊細で華やかな印象も感じられます。どちらかと言えば、ヴォーヌ・ロマネ的な印象を受けます。
スパイシー感はありますが、あまりクロ・ヴージョの骨太のイメージは感じません。

次にミシェル・グロです。最も良く飲んでいる造り手のひとつで、ある程度予想どおりでした。樽香は、アンヌ・グロとグロ・フィレ・エ・スールの中間。極端ではありませんが、3つの中では、酸を最も感じます。(他もそうですが、)同時に100%除梗に起因すると思われる甘さも少し感じます。

最後に、ベルナールのグロ・フレール・エ・スールですが、この時代のベルナールは、やはり少しタニックで比較的濃い造りです。ただ、以前飲んだ(ヴィンテージは失念)クロ・ヴージョ・ミュジニーほど樽香は強く感じませんでした。最近は、エレガント路線に転換したようですが、残念ながらエレガントなグロ・フィレ・エ・スールは、未だ飲んでいません。評価は、迷いましたが、クロ・ヴージョらしい骨太のイメージが最も感じられたグロ・フレール・エ・スールに少しだけ高い評価を付けました。

グレートヴィンテージの2009年、2010年は、まだまだ熟成によって良くなる感じがします。2009年のアンヌ・グロとベルナール・グロのリシュブールは未だ当面寝かしておきたいと思います。

<了>

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