純米・純米吟醸の生酒3種飲み比べです。高知の「酔鯨」、福島の「天明」中取り、そして青森の「田酒」の3種。日本酒に合いそうな、チーズ4種類と合わせてみました。
いずれも加水タイプの生酒です。
酔鯨 純米吟醸 高育54号 精米歩合 50%
「高育54号」というのは、聞きなれない酒米ですが、山田錦を母、ヒノヒカリを父として高知県農業技術センターが、土佐の気候・風土に適合した吟醸酒用酒米として、高配育成させ、選抜を繰り返し「吟の夢」の名で開発され酒造好適米とのこと。品種登録は2008年ですが、1995年に酔鯨酒造にて最初に仕込まれた際の開発コードが「高育54号」だったようです。
生酒特有のメロンや白桃っぽい甘い香り。最初のアタックも甘みを感じますが、割と一瞬で、その後、柑橘系の酸が広がり、後半から余韻は、心地よい米の旨味を伴う苦みが感じられます。
過去に飲んだ酔鯨と同様に、基本的に淡麗で辛口だと思います。
インパクトはともかく3本の生酒のなかでは、もっとも幅広く料理に合わせ易いと思います。
チーズとの相性については、後述しますが、料理としては、ブリの照り焼きが良く合いました。血合いや焼き魚の少し焦げた苦みとこの日本酒は良く合います(食べかけ写真ですが...)
次に天明です。
天明 純米生酒 おりがらみ 中取り 備前赤磐産雄町 精米歩合65%
先日天明の限定酒を飲み比べましたが、その際、飲んだひとつが、一番搾りの「荒ばしり」と搾り終盤の「責め取り」のブレンドである「荒セメ」でした。
これは、2つの搾りの中間の「中取り」です。綺麗で透明感があり、一般的に最も価値が高いとされるのが、この「中取り」になります。
メロン、桃といった生酒特有のフルーティな香り。口に含むと(他の2本に比べ)甘さが際立っており、滓がらみということもあり、濃厚でとろみを感じます。レッグが長く、余韻も長く感じられます。雄町らしい華やかな香りと酸があります。
豊潤な酒質なので肉系が合うと思います。骨付きチキン照り焼きです。
最後に「田酒」です。
田酒 純米吟醸 生酒 山田錦100%
写楽、飛露喜、新政No.6と並ぶ東北の銘酒だと思います。結構高価な印象がありますが、この純米吟醸は、2500円ほどでした。
やはり生酒特有の果実香ですが、この生酒は、メロンや桃というより、マスカットの風味です。まさにラベルの文字の色がそれを表しているような香りです。最初に甘みも感じますが、綺麗な酸が特徴的です。この上品な酸が清涼感を感じさせます。後半に米の旨味を伴った苦みありますが、苦みはそれほど突出はしていません。
海老とそら豆の天ぷら。こんな料理が合っています。おそらく刺身系も相性が良いかと思います。淡白な焼き魚も。
さて、チーズとの相性です。
コンテ(34ヶ月)、バルボバ、ファンブリヤー・オレンジリキュール、オッソ―・イラティの4種を合わせてみました。
コンテ34ヶ月(フルミエで追熟したもの) 930円(税抜)/100g←特価のようです
言うまでもなく最も濃厚なハードチーズ。2017年6月製造ということで、24ヶ月を輸入し、フルミエの愛宕山で追熟したものと思われます。
コンテの3年近い熟成による塩味と強い旨味との相性という点で、最も濃厚で甘みのある天明がベストと感じました。
バルボバ 980円(税抜)/100g
イタリアロンバルディア州の羊乳製ウオッシュタイプのチーズです。タレッジオの羊乳版とも言えます。羊乳らしく真っ白で、タレッジオよりもマイルドに感じます。
どの日本酒とも合います。甲乙つけがたいですが、ベストはやはり天明でしょうか?濁り酒の濃厚さと、ウオッシュチーズが良く合います。
ファンブリヤー・オレンジリキュール(クープ) 840円(税抜)/100g
マスカルポーネとグランマニエを合わせたクリームをブリチーズの間に挟んだフランス産チーズです。
間違いなく、最も合うのはシャンパンだと思います。軽く穏やかなチーズですが、塩味はそこそこあります。ブリーチーズのものかと思われます。今回の3種の日本酒との相性は、酔鯨でしょうか?
オッソ―・イラティ 1050円(税抜)/100g
フランスバスク産の羊乳チーズで、オッソ渓谷とイラティー森林地帯から名づけられています。フランスを代表する羊乳チーズで、比較的良く購入しています。塩味も優しく、かと言ってマイルド過ぎず程よいコクのあるミルキーなチーズです。
田酒の純米吟醸が最も合うように感じました。
季節限定の有名酒蔵の生酒3種。3種の特徴を一言でいえば、酔鯨は「辛口で旨味を伴う苦み」、天明は「芳醇な甘み」、田酒は、「華やかで上品な酸」かと思います。
生酒と言えども、やはり各蔵の通常の商品の特徴を引き継いでいるように感じました。
それぞれの特徴に合わせて、チーズを合わせると、結構楽しめます。
<了>