Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

まんさくの花飲み比べ

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秋田の日の丸醸造の「まんさくの花」の「巡米酒70」という限定酒シリーズです。酒米の違いを愉しんでもらう目的で、様々な酒米を原料とした純米酒を順次発売しています。今回店頭で入手できた3種(秋田酒こまち、亀の尾、星あかり)を飲み比べてみました。

巡米酒70シリーズは、2018年から販売されているようで、2019年7月雄町、同9月美山錦、同11月愛山と発売された後、今回の2020年1月秋田酒こまち、同3月亀の尾、同4月星あかりとリリースされています。2020年5月に山田錦、同7月に雄町、同8月朝日、同9月美山錦、同11月愛山、同12月百田と順次リリースされていく予定のようです。

このシリーズの特徴は、酒米以外の条件、精米歩合酵母醸造方法を全て同一条件にしているところです。精米歩合を、敢えて70%に抑えているのは、米の味わいや特徴を最大限出す為のようです。ちなみは、酵母は、秋田No.12という酵母で、いわゆる協会酵母とは違います。秋田県独自に2009年に開発された酵母で、「香りは、バナナ様、味は軽快・爽やかタイプ」とあります。酢酸イソアミル系の香りを出す酵母のようです。

まんさくの花 精米歩合 70% 酒米 秋田酒こまち

秋田酒こまちは、秋田を代表する酒造好適米です。あまり知られていませんが、数ある酒造好適米の中で、山田錦、五百万石、美山錦、雄町に次いで、第5位の生産量を誇ります(ちなみに、2014年までは、山形県出羽燦々が5位でした)

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まんさくの花 精米歩合 70% 酒米 亀の尾

亀の尾は、生産量は極めて少ないものの日本酒ファンであれば、誰もが知る品種です。明治中期に山形県篤農家・阿部亀次が生み出した酒造好適米です。亀次は、不作の秋に庄内町の神社に参拝に行った帰り、冷害で殆どの稲が倒れている中、たった3本だけ実を結んでいる稲穂を発見し、この籾を原種として4年かけて開発した(J.S.A SAKE DIPLOMA教本より)という逸話をもつ酒米です。

食用米としても、重宝された亀の尾ですが、現代的な農法に合わず、栽培も難しいため、大正時代以降、徐々に姿を消していきます。

そんな中で、この品種に目を付けたのが、新潟県長岡市の「久須美酒造」です。1980年には既に幻となっていた亀の尾の種籾を探し出して復活させ、日本酒「亀の翁」を完成させています。これをモチーフに描かれたのが、尾瀬あきらの漫画「夏子の酒」です。後編の「奈津の蔵」とともに酒造りを描いた漫画としては最高傑作だと思います。

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まんさくの花 精米歩合 70% 酒米 星あかり

星あかりは、美山錦を片親にもつ酒造好適米のようですが、かなりマイナーな品種で今回初めて飲みました。
東北電力が地域振興の一環として開発(平成10年に品種登録)した変わり種の酒米のようです。それを知ると、「あかり(明かり)」は、なるほどというネーミングです。ラベルにその特徴として、最も硬い酒米とあります。

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さて3種の比較です。
まず、精米歩合が70%と比較的高いにも関わらず、どれも華やかな吟醸香を感じます。明らかに使用している酵母(秋田No.12)に依存するところが大きいかと思います。強弱を別として、酢酸イソアミル系のバナナの香りがあります。

秋田酒こまち

バナナにメロンの甘い香り、青竹、上品な米の香り、甘みと酸のバランスがとれている
比較的ふくよかで柔らかい香りと優しい甘み。

亀の尾

マスカットの香り・風味
すっきりと伸びのある酸。透明感を感じる甘みは、3種の中で中間的。

星あかり

バナナの甘さと、ブドウの香り、ミネラル香、白い花、ほんのりミント的な香りも。
シャープな酸で、3種の中では最も辛口に感じる。アフターに若干の苦み。

3種とも、フルーティで華やかな風味を持つ魅力的な純米酒だと思います。柔らかさでは、秋田酒こまち。逆にシャープさでは、星あかり。亀の尾はその中間と言った印象です。初めて飲む星あかりは、甘みはすっきりしており、酸が比較的はっきり感じられるので、比較的幅広い料理に合わせられるような気がします。

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2017年から始まった日本酒のソムリエ資格とも言えるSAKE DIPLOMAの2次試験のテースティングで、酒米を問う問題が毎年出題されています。私は、2018年に受験しましたが、この年を含めて、過去に出題された酒米は、山田錦か五百万石のどちらかです。この2つの酒米は、力強さと淡麗という明確な差異があるので、比較的区別することは容易ですが、それ以外の品種を当てる問題は、未だ出題されていません。生産量3位・4位の美山錦や雄町が、いずれ出題される可能性はあると思います。

ワインのブドウ品種当てに比べると酒米を当てるのは、結句難しいと思います。酵母や造りによって、香りや風味が結構変わってくるのが大きな理由です。

そういった意味で、酒米以外の条件を全く同一にして造られたこのシリーズは、酒米による酒質を知ることができる貴重なものだと思います。欲を言えば、香りが強く出る酵母でない方が、酒米の特徴が分かりやすく出るような気もします。

今後、1、2か月おきに色々な品種でリリースされてくるようなので、是非また比較してみたいと思います。

<了>