リュシー・エ・オーギュスト・リニエのモレ・サン=ドニ・クロ・レ・シオニエールの2005年とユベール・リニエのモレ・サン=ドニの2010年です。前者の2005年ヴィンテージは、栽培・醸造いずれもユベール・リニエが関わっているので、実質ユベール・リニエの手によるヴィンテージ違いの2本のモレ・サン=ドニと言えるかと思います。
ます、リュシー・エ・オーギュスト・リニエのモレ・サン=ドニ・クロ・レ・シオニエールです。
リュシー・エ・オーギュスト・リニエについては、→こちらでも書きましたが、ユベール・リニエの3男のロマン・リニエと米国人の妻ケレン・リニエによる2人の子供の名を冠したドメーヌです。2004年にロマン・リニエが若くして亡くなり、その後は、ユベールとの間で相続をめぐる争いとなり、ドメーヌは、2010年ヴィテージを最後に消滅し、ケレンとの折半耕作だった畑は、2014年までにドメーヌ・ユベール・リニエに戻って来ています。
今回のクロ・レ・シオニエールというモレ・サン=ドニ村名格の畑は、ロマン・リニエからケレンが相続した自社畑のようですが、ドメーヌ・ユベール・リニエのワインには登場していません。モレ・サン=ドニAOCにブレンドされているという情報もないので、既に売却されているのかもしれません。
▼シャンボール・ミュジニー側の国道(D974 )沿いにある村名畑のようです。
リュシー・エ・オーギュスト・リニエ モレ・サン・ドニ クロ・レ・シオニエール 2005年
[2005] Lucie et Auguste Lignier Morey-Saint-Denis Clos Les Sionnières
面積1.11ha。平均樹齢30年。新樽率30%で18~20ヶ月間熟成。年間生産本数6500本。
村名の15年熟成ながら意外にもグラスの底が殆ど見えないほどのブルゴーニュにしては濃いめのガーネットにも近いラズベリーレッド。縁を見てもそれほどの熟成感は見られないれない色調。
抜栓後、直ぐにブルーベリー、ブラックベリーやダークチェリーのやや黒系の果実の華やかな香り。牡丹の花、ドライフルーツ、ドライハーブ、リコリス、シナモン、スーボワ、僅かに腐葉土香も。アタックに完熟果実の甘みのある凝縮感を感じ、タンニンは滑らかに溶け込んでいる印象。綺麗な酸を伴う長めの余韻。モレ・サン・ドニの土っぽさもあるが、野暮ったさは全く感じない。2005年の特徴の凝縮した果実味と甘露さが魅力的な1本。
(3.9)
ここの同じ2005年ヴィンテージは、ここ数ヶ月の間にシャンボール・ミュジニーのビュシエール(村名)とクロ・ド・ラ・ロシュを飲んでいます。前者は中程度のブショネで、後者のクロ・ド・ラ・ロシュは、良かったものの、飲み頃には少し早いように感じましたが、このモレ・サン・ドニは、好みのど真ん中でした。良い意味で予想を裏切られた感じです。
次に、ユベール・リニエのモレ・サン・ドニ2010年です。
こちらは、前述のケニエ・リニエとの相続騒動の決着がほぼついた頃に造られたと思われるワインです。ロマン・リニエの死後、現役復帰したものの、使えるブドウは、メタヤージュ(契約耕作)で折半となってしまい、不足分を買いブドウで補う等不安定な状況でのワイン造りを強いられた頃だったですが、2010年は、本来の力を取り戻し、高い評価を受けているようです。裾ものに近い「モレ・サン・ドニ」ですが、ユベール・リニエ復活のヴィンテージを期待して購入してみました。ちなみに、最近、近くのショップに1本だけ残っていたこの年のクロ・ド・ラ・ロシュを発見して、奮発して購入しました。その時の店主によると、2009年のリニエは、いまいちとのこと。2010年に息を吹き返し、その後のどんどん素晴らしくなり、2015年や2016年には最高のワインを生み出しています。もっとも価格も凄いことになってしまいましたが...
ドメーヌ・ユベール・リニエ モレ・サン=ドニ 2010年
[2010] Domaine Hubert Lignier Morey-St-Denis
1970年代と1980年代に植樹。部分的にドメーヌのブドウから生産され、一部は購入ブドウから。
グラスの底が見える程度の透明感のあるやや淡いラズベリーレッド。こちらは、ラズベリーやチェリーの赤系果実の香りが抜栓後まもなく顕れ、徐々にドライハーブやスーボワ、土っぽい香りも混ざり少し複雑に。色から想像できるように、果実味の凝縮感は、それほどでもなく中庸な印象だが、適度な甘味も感じられる。タンニンは滑らかながら比較的しっかり感じられ、少し鉄っぽいミネラル感も。1時間ほどで、甘味・酸味・タンニンのバランスが取れた状態になり、香りどんどんも開いていくが、更に時間が経つと、やや酸味が優勢に。
(3.2)
良年の2010年ヴィンテージということで期待しましたが、香りは、開いてはいるものの、果実の凝縮味や複雑性の点では、やはり村名を超えるものではないように感じました。
▼鴨のパストラミと。モレのワインの土っぽさや鉄分と鴨がよく合います。
それほど期待していなかったリュシー・エ・オーギュスト・リニエのモレ・サン=ドニ クロ・レ・シオニエールですが、2005年ヴィンテージの持つ果実の凝縮と甘露さの特徴が顕著に感じられる素晴らしいワインでした。今年飲んだブルゴーニュの村名ワインの中ではピカイチとも言える評価です。ポテンシャルはともかく、今飲んでという条件であれば、先日飲んだ同じヴィンテージのクロ・ド・ラ・ロシュに負けないような気がします。
リュシー・エ・オーギュスト・リニエのワインでは、もうほとんど市場には出回っていませんが、復活したユベール・リニエの評価は、前にも増して高まっています。
<了>