2015年が実質的なラストヴィンテージになったジャイエ・ジルのニュイ・サン=ジョルジュ・レ・ゾー・ポワレ。最近バックビンテージとして入手した2010年です。昔はよくお世話になったワインですが、久しぶりに飲むジャイエ・ジルです。
過去にジャイエ・ジルのワインを購入して飲んだ記録を確認してみると2005年ヴィンテージが殆どだったようです。そのすべてが、オー・コート・ド・ニュイかオー・コート・ド・ボーヌです。名立たるドメーヌでは、オー・コートのワインは、どちらかと言えば、裾ものに近いイメージがありますが、かつて何度も飲んできたジャイエ・ジルで思い浮かぶのがやはりオー・コートのワインです。
ジャイエ・ジルは、ジャイエの名前が示すように、ブルゴーニュの神様と呼ばれる、アンリ・ジャイエの親族になります。アンリ・ジャイエの従兄弟のロベール氏が立ち上げたドメーヌを息子のジャイエ氏が引き継いでいます。Cellar Trackertのサイト等では、Domaine Robert Jayer-Gillesというドメーヌ名で表記されています。
ここのワインの特徴は、なんといっても新樽率が高いことです。一般に、熟成に100%新樽が使われるのは、グランクリュや一部のプルミエ・クリュですが、ジャイエ・ジルのワインは、オー・コートのものを含めて100%新樽です。新樽に負けないブドウに自信がないとなかなか実現できないことかと思います。
自身、ボルドー赤が好みだった十年前にジャイエ・ジルに嵌った理由が、やはりこの新樽熟成がもたらす力強さと複雑さだったと記憶しています。その後、徐々にオーキーなワインが好みでなくなったことから、どちらかと言えば遠ざかっていました。
ジャイエ・ジルは、2018年に57歳の若さで亡くなっており、跡継ぎに恵まれなかったことからスイス人のアンドレ・ホフマン(大手製薬会社ロシュの副会長)にドメーヌを譲り、現在は、ドメーヌ・ホフマン・ジャイエ-ジルの名前で引き継がれています(日本ではピーロート等が輸入しているようですが、未だ飲んだことがありません。
ドメーヌ・ジャイエ・ジル ニュイ・サン=ジョルジュ レ・ゾー・ポワレ 2010年
[2010] Domaine Jayer-Gilles Nuits-Saint-Georges Les Hauts Poirets
▼ニュイ・サンジョルジュの、プレモ・プリセ側。1級畑のロンシエールの上部に位置する南向きの急斜面の畑です。ジャイエ・ジル氏は、1級の資格があると主張していたようです。
このワインは、2日に渡って飲みました。
やや濃いめのガーネット。縁にかけて、熟成が進んでいることを示すオレンジっぽいグラデーションが見られる。粘度は、中程度。
まずロースト香。これは10年前に飲んだ印象と(多分)変わっていません。ほぼ同時にカシス、ブラックベリーの黒系果実香、ドライハーブ、甘草。ニュイ・サン=ジョルジュらしい土っぽさも。シナモンや紅茶のニュアンスもあるが、腐葉土的な香りはそれほど感じられない。少し甘味をともなう豊かな酸とやや引き締まったタンニン。樽香に負けない果実の凝縮感がある。やや酸の主張はあるが、バランスは悪くない。タニックという訳ではないが、外向的とも言えない。
このワインは2日に渡って飲みましたが、2日目は、酸が僅かに強く感じられたものの、バランスを崩すほどではない。初日に感じた甘みは少なくなり、ややスパイシー、冷涼さが出ている。最近飲む機会の多い2010年ヴィンテージに見られる傾向?。愛想があるタイプでもなく、最近流行りの薄旨系とは一線を画す。ある意味クラシカルなブルゴーニュ赤。でも、これはこれで好みかも。
(3.4)
▼1日目はカルビ焼肉、2日目はアラカルトと。
ここ10年の間にブルゴーニュの多くのドメーヌは、世代交代等をきっかけに、樽を利かせた濃厚なタイプから、エレガントな傾向にシフトしています。ユベール・リニエ、ドニ・モルテ、グロ・フレール・エ・スール等々。そんな中で、村名まで新樽100%を最後まで貫いたジャイエ・ジルのワインを飲むと懐かしさも感じます。ここのフラッグシップは、エシェゾーですが、未だ飲んだことはありません。最近、市場にバックビンテージとして出たエシェゾー・デュ・ドゥシューの2014年を入手することができたので、いずれ開けて再度ジャイエ・ジルの世界を味わってみたいと思います。
(了)