和の食材を用いたフレンチ、フォアグラ大根です。フォアグラとの相性といえば、ソーテルヌ等の甘口ワインですが、ここは大根にも合わせて日本酒を選択してみました。濃厚旨口の純米酒、菊姫「鶴の里」と甘口の赤米(古代米)酒の「伊根満開」と合わせてみました。
あっさりとした大根と濃厚なフォアグラという一見合いそうもない食材の組み合わせですが、意外に面白い相性を示してくれます。本来は甘みのある大根が良いようですが、今回の練馬大根はやや辛みがあり、その点は若干残念でした。まあ、日本酒との相性は悪くはありません。
合わせた日本酒のひとつは、タンニン系の赤色色素をもつ赤米から造られた、古代米酒です。京都の丹後半島の漁師町、京都伊根町で酒造りをしている女性杜氏の向井久仁子さんが東京農大監修のもと生み出した日本酒です。赤米酒の存在自体は、ソムリエ協会のSAKE DIPLOMAの資格取得の勉強をしている際に初めて知りましたが、実際飲んだのは今回が初めてです。教本には、「赤い色は、赤ワインと同じアントシアニンである。果皮・種皮を用いているもので、ポリフェノールの渋みがある。このため、甘口に仕上げているものが多い」とあります。
実際に飲んでみると、かなり甘さを感じます(日本酒度はマイナス18)が、同時に酸味あるため、しつこくはなく、いわゆる甘酸っぱい味わいです。色合いからは、まさにロゼワインを想像しますが、果実の香りや味わいではなく、米の香りと味わいという何とも不思議なお酒です。
フォアグラには、甘口ワインというのが定番ですが、今回は、このちょっと変わった甘口の日本酒を合わせてみました。
もうひとつの日本酒が、菊姫の鶴乃里。吉川町(特A地区)産の山田錦を100%使用した山廃の純米酒です。濃厚でコクと旨味のある味わいです。熟成にも向く日本酒で、年によってラベルの色が変わりますが、これは、2017年産で、常温で3年ほど熟成させた古酒になります。
▼グラスで飲んでいますが、こちらは、実際にはぬる燗にしています。
2つの日本酒を飲み比べましたが、フォアグラには、やはり甘い赤米酒がよく合います。菊姫との相性も面白いのですが、ぬる燗だった為、もともと強い米の香りがいっそう強くなり、大根はともかく、フォアグラとの相性には、ちょっと違和感がありました。おそらくやや甘口の吟醸タイプの方があっているような気がしました。今回は大根自体が辛めで味もあまり滲みていなかったので、醤油等で甘辛く煮込んだ甘めの大根であれば、また印象も違ったのかもしれません。
▼最後にオマケで、ピノ・グリのワインと合わせてみました。ニュージーランド・マールボロ酸で少し甘味もあり、和食にも良く合うピノ・グリなのでちょっと期待しましたが、やはりフォアグラの濃厚さに負けてしまいます。
甘口の赤米酒「伊根満開」とフォアグラ大根の相性はなかなか面白いものでした。今回は、菊姫だけぬる燗にしたのですが、伊根満開も少し温度を上げた方が、更に甘さが強調されて相性的には良かった気がします。伊根満開の裏ラベルには、お燗や冷やのみでなく、ロックやソーダ割りも提唱されており、間口の広いなかなか面白い日本酒だと思います。
<了>