ボルドーとローヌのワインをブレンドし、19世紀の味わいを現代に再現した「オディッセ(Odyssée)」というワインです。レオヴィル・ラス・カーズのCEOらが手掛けたカベルネ・ソーヴィニヨン種と南ローヌのグルナッシュ種、クノワーズ種がアッセンブラージュされている変わり種です。
かつて19世紀にボルドーで、ボルドー品種にローヌ品種がブレンドされていたことは、数年前にマルゴーの3級格付けのシャトー・パルメが「シャトー・パルメ ヒストリカル・ナインティーンス・センチュリー・ワイン」というワインをリリースしたことで知りました。当時、酒質の強化が目的で北部ローヌのエルミタージュ産のシラーを少量ブレンドする「エルミタージング」と呼ばれる手法で、かつては、ラフィットやマルゴーも採用していたことがあるようです。ちなみに、このシャトー・パルメのブレンドワイン、興味はあったのですが、結構高価であったため、購入しませんでした。
これと似た発想で造られたのが、この「オディッセ(Odyssée)」というワインで、裏ラベルには「A journey between two historical Terroirs」とあります(”Odyssée”は、”Journey”/旅の意味になります)
但し、ブレンドされているのは、エルミタージュのシラーではなく、南ローヌのグルナッシュとクノワーズ種になります。クノワーズ種は、あまり知られていない品種ですが、シャトー・ヌフ・デュ・パブで使用が認められている13種のブドウの1つで古い品種になります。
このワインの生産者は、レオヴィル・ラス・カーズやポタンサックのCEOであるピエール・グラフィユ家と彼の友人であるローヌの造り手マチュ・デュマルシェ家の2人です。購入したショップの謳い文句に、「レオヴィル・ラス・カーズのCEOが手掛けた」とあったので、一瞬、サン・ジュリアンのレオヴィル・ラス・カーズのワインにローヌ種のワインをブレンドしているのかと思いましたが、ベースとなっているのは、サン・テステフに近いメドックのエリアで栽培されているカベルネ・ソーヴィニヨンのようです。
このワインは、2015年からリリースされているようなので、今回の2017年は、3回目のリリースということになります。ちなみに、最初のリリースでは、ブレンドされていたローヌ品種は、北ローヌのシラー(エルミタージュ産かは不明)だったようです。
当然ながらボルドーのAOCでは認めていないブレンドなので、「ヴァン・ド・フランス」になります。
ODYSSÉE 2017 Pierre Graffeuille et Matthieu Dumarcher
カベルネ ソーヴィニヨン 62%、グルナッシュ 30%、クノワーズ 8% のブレンド
ボトルナンバーが入っており、総本数は6983本とあります。
それほど濃くなく、グラスの底がうっすら見える、中程度のダークチェリーレッド(ガーネット)。粘性は高め(14.5%)で、これはローヌ種の影響と思われます。
カシスというより、ラズベリーやブルーベリー、ダークチェリー、イチジクといった柔らかく甘い赤黒果実の香りが良く開いている。赤いドライフラワーに、シナモン、甘草の甘苦スパイス。樽熟成からのカカオやロースト香も感じるが、あまり強くない。
味わいは、甘みを伴う熟した果実味が主体。アタックに感じる酸やタンニンは円やか。中盤も果実味が広がり、余韻に少し引き締まったタンニンからの苦みがアクセントとして感じられる。果実の甘み、酸、タンニンが調和した非常にエレガントなワイン。
(3.9)→自身の好みのタイプで高評価です。
↓赤みの牛肉のグリルとバルサミコのソースとすごく合います。
2017年のボルドーに、ローヌ種ブレンドということで、力強く濃厚なイメージを持っていましたが、実際飲んでみると、全く異なり、柔らかくエレガントなワインでした。グルナッシュからの甘みを感じますが、甘すぎることはなく、カベルネ・ソーヴィニョンが味わいを引き締めており、かつメインのカベルネの青っぽさは全く感じません。クノワーズは、単体で飲んだことがないので、分かりませんが、おそらく柔らかさを出す狙いでブレンドした品種かと思います。19世紀の酒質強化を狙ったシラーブレンドとは意図が少し違うかもしれませんが、結果的に面白いブレンドワインになっているかと思います。これはお奨めです。
了