2024年11月、晩秋のシャンパーニュ地方を訪れました。この地は、2019年夏に続き、2回目になります。今回のフランス旅行は、アルザスとブルゴーニュがメインでしたが、パリ(シャルル・ド・ゴール空港)からコールマールへの経由地としてランスに立ち寄りました。
シャンパーニュ地方を訪れる楽しみは、何といってもシャンパン・メゾンの訪問ですが、あいにく、当日は日曜日で、多くのメゾンがお休みでした。ちなみに前回は、テタンジェとマイィ、そしてRM(レコルタン・マニュピラン)のマーク・エブラールを訪問しました。メゾン見学には、通常、予約が必要ですが、今回は、滞在を決めたのが割と直前だったこともあり、予約はせず、行き当たりばったりのメゾン巡りになりました。
日曜日でも見学可能なメゾンは、いわゆる大手のネゴシアン・マニピュラン(NM)にほぼ限られます。モエ・シャンドン、テタンジェ、ヴォーヴ・クリコ、ルイナール等は観光客向けの見学ツアーが充実しており、割と気軽に訪問できます。ただ、人気も高いので、予約は必須のようです。
↓こちらのHPで各メゾンのツアーを確認・予約することができます。
シャンパン (Champagne)、フランスにアクセス-最高のワインテイスティングとワイナリーツアー
今回は、まずは、ランス市内のメゾンで、予約なしでも見学できる可能性のあるポメリーPommeryを訪れました。
淡いブルーを基調としたひと際目立つエリザベス朝様式の建物です。シャンパーニュの大手、ポメリーの説明は不要かと思いますが、1836年創業の、世界で初めて辛口のシャンパーニュを造ったとされるシャンパーニュ・メゾンです。
見学コースもいろいろと用意されており、基本はグループ単位でガイド付きでカーヴを案内してくれるものになりますが、ここは、ガイドなしで、自由に自分のペースでカーヴ内を見学のできるコース(セルフガイドツアー)が用意されており、これを選びました。シャンパン1テースティング付きで27€とシャンパニューのメゾンツアーとしては、格安です。
ここの地下カーヴはちょっと変わっており、創業当時の当主ルイーズ・ポメリー夫人がアート愛好家であったこともあり、「エクスペリエンス・ポメリー」と呼ばれる現代アートの展示会がほぼ毎年開催されています。
広々としたフロアは、ブランドカラーのロイアルブルーを中心にライトアップされています。↓大樽のディスプレイが目を惹きます。アール・ヌーヴォーを代表するエミール・ガレがつくった10万人分のシャンパーニュが入る大樽のようです。
↓像をモチーフとしたこんなユニークなアート作品も。
↓地下 30 メートルにあるカーヴへ続く階段です。この地下室はユネスコの世界遺産に登録されているとのこと。こちらもカラフルにライトアップされており、ちょっと幻想的な雰囲気です。
↓カーヴ内のアートの数々。アートには疎いのでコメントは避けます笑。あくまでカーヴなので(本物かディスプレイ用かわかりませんが)熟成中のボトルが積み重ねられています。場所ごとに、プレートに世界の都市名が書かれています。
↓オールドボトルも保管されています。1904年からのボトルが見られます。
地下カーヴをひととおり見学した後、1階のフロアに戻り、試飲ができます。セルフガイドツアーは、スタンダードのブリュット・ロワイヤル(27€)とグラン・クリュ・ミレジム(32€)が選べます。ポメリーのシャンパンは久しぶりに飲みましたが、酸と果実味と瓶内熟成からの複雑さの絶妙なバランスが流石に大手の安定感を感じます。
ランスを後にしてエペルネに向かい、昼食はエペルネ市内のレストランでとりました。
↓前回も利用したBrasserie de la Banqueというレストランです。
名前が示すように、ここは、かつてフランス銀行だった建物をレストランとして改装しており、入り口には「BANQUE DE FRANCE」の刻印が残っています。ちなみに、ランチに合わせて飲んだシャンパンは、前回と全く同じVollereauxのロゼです。濃い色調は、明らかにセニエ法で造られたシャンパンです。
昼食後、エペルネにあるMercierを訪れました。ここは、1858年創業の大手メゾンです。日本での知名度は低いですが、キュヴェ・ドン・ぺリニョンを初めて販売したメゾンとして知られています。その後、モエ・エ・シャンドンに買収され、現在はその傘下にあります。
↓メゾンに入ると置かれている大樽が置かれています。
パリ万国博覧会の目玉として作成された、ボトル約20万本分に相当する20トン容量のワイン樽とのこと。ここは、カーヴ内をトロッコで移動できる観光ツアーが結構有名なようです。ちょっとした観光スポットにもなっているようなので興味が湧き、割と予約なしでも行けるようなので、ダメ元で訪れてみました。この日は、たまたまドイツからの団体客の予約が入っていたようで、残念ながら、どの時間帯もツアーはNGでした。
とりあえず、ここのシャンパンの購入してメゾンを後にしました。
この後、エペルネから車で15分ほどの高台にあるオーヴィエHautvillers村に向かいました。オーヴィエ村は、ドンペリニョンの墓があることで知られていますが、この村の丘は、ちょっとした絶景ビュースポットになっています。実は、ここは、前回の訪問で初めて知り、ここから見下ろすブドウ畑の絶景とても気に入り、今回は晩秋のブドウ畑を見たく、再び訪れてみました。
当日は、あいにくの天気で、眼下の街(キュミエールCumièresという村のようです)も霞んでおり、寒々としていましたが、一面黄色の畑は、なかなか新鮮な光景でした。↓この案内板の正面にエペルネの街が見えます。
↓ちなみに、これが、前回、夏に訪れた時の光景です。
ランスに戻る途中で前回は行けなかった観光スポットに立ち寄りました。
↓ヴェルズネイVerzenay村の風車です。ヴェルズネイは、ピノ・ノワールの主要産地であるモンターニュ・ド・ランスにあり、特にグランクリュの銘醸畑として知られています。↓この風車のある建物は、現在はマムのゲストハウスになっているようです。
ということでもありませんが、ランスに戻って、ランス市内にあるマムG.H.Mummを訪れました。こちらも予約なしでしたが、なんとかこの日最後のカーヴ見学ツアーに参加することができました。
GH.Mammは、1827年に設立され、上記のヴェルズネイに初めて畑を持ちました。
18世紀に遡る先祖は、ドイツでワイン造りを行っていたようで、この年にシャンパーニュ地方にメゾンを立ち上げ、シャンパンを作り始めたようです。シャンパニュ地方で、初めてぶどう畑の中に圧搾機を持ち込み、ぶどうの酸化を防ぎフレッシュさを保ったまま収穫後のブドウを直ぐに圧搾するという手法を取り込んだとのこと。
メゾン・マムのスタイルは、ヨーロッパ各国の王室に愛されて、英国では、エリザベス2世御用達のシャンパンとなりました。
メゾンが所有するブドウ畑は218haで、そのうち160haがグランクリュの畑のようです、ピノ・ノワールの比率は78%に及ぶようです。
地下のカーヴに移動します。
↓醸造用の大樽とコンクリート槽がずらりと並んでいますが、これらは、昔使用されていたもので、現在はステンレスタンクに代わっているようです。壮大な地下カーヴです。
この後、ひととおり、シャンパン製法の説明がありました。
前回訪問のテタンジュ同様、説明用に様々なオブジェが置かれています。このあたりは、分かり易い説明とともに、流石に大手の気遣いです。↓最後の部屋には、昔使われていた収穫や圧搾、運搬、瓶詰め用の道具が展示されています。
↓最後のユニークな展示がこれ。
マム・コルドン・ルージュ・ステラという将来の宇宙飛行の為に設計されたシャンパンのようです。2017年にフランスの宇宙研究センター(CNES)やNASAの協力のもと、無重力で味わえるシャンパの研究と実験を行っているようです。
こちらに、関連記事がありました。
https://jp.prnasia.com/story/81659-3.shtml
最後はテースティングルームでの試飲で見学ツアーは終了です。
同社を代表するシャンパンであるコルドンルージュ・ブリュットです。
輝きのある黄金色。柑橘果実に青リンゴ、ピーチやアプリコットにブリオッシュや蜂蜜の香り。味わいは、フレッシュながら、ふくよかさと力強さも感じられますが、このあたりはピノノワールの比率によるものかと思います。午前中にテースティングしたポメリーのスタンダードのブリュットと比較して、イースト香はやや控えめで、フレッシュさや果実味を強調している味わいと感じました。ちなみに、このマムのカーヴと道路を挟んだところには、マムと深いゆかりのある日本人画家の藤田嗣治のデザインと設計による礼拝堂があります。こちらは、前回訪問しました。ランスを訪れた際には必見です。
晩秋のシャンパーニュ巡りは、あいにくの天候(この辺りは、例年同じような感じのようです)ながら、黄色に染まったブドウ畑や美味しいランチを含め、色々と楽しむことができました。今回は、日曜日でもあり、大手メゾンの訪問に限られましたが、まだまだ訪れてみたいメゾンは沢山あり、暖かい時期にまた再訪できればと思っています。
最後に、前回に引き続き、当日のガイド含めランス滞在全般でたいへんお世話になった現地在住のコシュパン由里子さんに深く感謝申し上げます。
了