ブルゴーニュ最大の祭典「栄光の3日間」に合わせて、ブルゴーニュのドメーヌを訪問しました。ドメーヌ・ラルロに次いで、2軒目の訪問先は、ショレイ・レ・ボーヌ村のドメーヌ・トロ・ボー(Tollot-Beaut)です。こちらのワインも長年愛飲しており、訪れてみたかっドメーヌのひとつです。
以下、インポーター情報によるドメーヌの歴史です。
「1880年に初代のフランソワ・トロ氏がショレイ・レ・ボーヌ村にブドウ樹を植えたのが始まり。それを引き継いだ2代目アレクサンドル氏の妻の名字が「ボー」といい、両家の姓が合わさり「トロ・ボー」となりました。トロ・ボーはブルゴーニュでも早くからドメーヌ元詰めのワインを出荷し始めた造り手の1つでもあります」
ドメーヌの所有畑は、コート・ド・ボーヌ内の約25haにも及びます。
グラン・クリュは、コルトン・ブレッサンド、コルトン(・コンブ)、コルトン・シャマーニュの3つで約1.5ha、プルミエ・クリュは7ha弱で、残りは村名とレジョナル(広域)になりますが、特にここのブルゴーニュ・レジョナルは、毎年安定した美味しさで、お気に入りのワインのひとつです。村名も現在も10k以下で購入できるブルゴーニュとしては、秀逸だと思います。
当日は、現当主のナタリーさんが対応していただきました。
試飲はカーヴ内でということで、エレベーターで地下に降ります。
1930年のボーヌ・クロ・デュ・ロワの空き瓶がディスプレイされたいました。
地下のカーヴです。
カーヴ内の大量のカビは、良いセラーの証です。
↓1985年産?のワインも。すごいカビに覆われています。
↓2024年ワインの熟成中の樽が並んでいます。
2024年は、最終的に出来は良かったものの、生産量は1/3ほど減ったとのこと。前に訪ねたラルロにほどの減少ではなかったようです。2017年(豊作だと思っていました)や2021年は、他のドメーヌよりも被害が多かったとのこと。
↓樽は全てフランソワ・フレール社製、ルロワやDRCでも使われている有名な樽です。
こちらは2023年製の樽です。縁に樽の情報が刻印されていますが、Bは、ベルトランジェの森産、Mは焼き加減がミディアム(moyen)を意味するとのこと。
2024年産のワインは現状はアルコール発酵が終わった段階で、マロラクティック発酵(MLF)はこれから始まるとのこと。特に乳酸菌を加えるということでもなく、自然にMLFが起こることを期待しているようです。
樽から直接ピペットで抽出してくれました。
まず、樽にSL24と記されている2024年のサヴィニー・ラヴィリエール・プルミエ・クリュです。この2024年産を試飲で出すのは初めてとのこと。
ラズベリーや赤スグリの赤系果実の甘い香り、MLF前のため、アタックには強い酸を感じますが、タンニンの収斂性は思ったほど感じず、意外に美味しく飲めます。
ちなみに2024年のグラン・クリュのコルトン・ブレッサンドがパレ・コングレの試飲会で出ており、試飲しましたが、こちらは、強い酸とタンニンで、香りは閉じて、果実味はタンニンの陰に隠れており、未だ飲むには難しい状態と感じました。
セラーの棚には、2009年、2010年、2012年といった古い飲み頃のワインが積まれています。これらについては、出荷用ではなく、インポーター等に熟成の可能性を知ってもらうためのボトルとのことでした。
次は、2023年のサヴィニー・ラヴィエール(SL24)です。
こちらは、MLFは終わっていますので、流石に酸はこなれています。当然若いですが、凝縮した果実味が既に魅力的な味わいです。
1月に樽からタンクに移して混ぜた後に瓶詰めして出荷するとのこと。日本に正式インポータは、ラックとエノテカですが、前者は6~7月頃、後者は、冬に出荷とのこと(最近新たに日本にリリースされていますが、これはエノテカ経由のものと思われます)
ちょっと愚問だったかもしれませんが、生産者であるナタリーさんのお気に入りを尋ねてみました。(以前、雑誌で「ショレイ・ボーヌ」を答えていた記事を見ましたが、)年にもよるが、2022年ヴィンテージでは、コルトンGCとのこと。暑い年だったが、タンニンがしっかりしており、味が締まっているというのが理由のようです。あと、長熟向きという観点では、ボーヌ・プルミエ・クリュ・グレーヴが好きとのことでした。
2022年と2023年(の品質)は、よく似ているが、2022年のほうが若干フレッシュでブルゴーニュらしい、2023年は、9月が凄く暑く、9月5日から収穫を始めたが、1週目に気温が上昇し、度数が上がったとのこと。
2018、2019、2020年については、2020年は、濃くて重く、(ブルゴーニュワインとしては)ちょっと違和感がある、2018年はしっかり凝縮感があり、要素が詰まっているが2020年ほどではない、2019年は程よいフレッシュ感があって、2022年に近い。3年間のなかではベストとのこと。
この3年間はいずれも暑い年で凝縮度が高いが甘みが強く、ちょっと異質なヴィンテージと感じていたのですが、生産者からみると違いを感じるようです。2020年は世間的には最も高い評価と思っていたのですが、ナタリーさん自身は、「違和感」という表現を使用していました。
2018年については、昨日開ける機会があったとこことですが、酸が少なく甘い果実味で若々しく、熟成はまだ始まっていない(私も同感です)。個人的には若すぎて未だ開けない方が良い、今飲むなら2015年あたりが良いとのこと。
↓次の試飲は、2023年のアロース・コルトンです。2023年ヴィンテージの中では、ナタリーさんのお気に入りとのこと。
タンニンはしっかりしていおり少し硬さを感じますが、果実の強い凝縮感も感じられます。サヴィニーに比べると、アロース・コルトンはやや強い酒質で、そのポテンシャル故、少し熟成期間が必要なようです。
ラルロでも質問した全房発酵について聞いてみたところ、2015年に2キュベだけ試しにやってみたが、直ぐやめたとのこと。今は完全除梗のようです。ブドウの実と茎のつけ根が完全に熟していないと難しく、少しでも欠陥があると青臭さが出てしまうとのこと。
次は、コルトン・ブレッサンドGCの2023年(CB23)。奥のほうの樽から取り出してくれました。
黒系の果実味も加わり、一段と奥行きと深みがある味わい。流石にタンニンは多いですが、今飲んでも結構美味しいです。
ドメーヌの赤のツートップ、コルトンとコルトン・ブレサンドの2つのグランクリュについて。
ブレッサンドGCは東側のど真ん中の石灰岩の多い畑、コルトンGCは、Les Combesというリュ―・ディにある畑で、南向きで石の少ない土壌。Les combesは、「谷」という意味で、ブドウ畑名でも時々見かける名称です。2つの丘に挟まれ、谷からの水が溜まり粘土が多い土壌のようです。ちなみに500mの範囲に村名とプルミエ・クリュとグラン・クリュが存在している面白い畑です。
年によって異なるが、ナタリーさんは、2023年はコルトンGCが好きとのこと。
コルトン・ブレッサンドGCは毎年安定しているが、コルトンGCは少し波があるとのこと。日本では、コルトン・ブレッサンドGCの方が人気がありますが、2023年に関しては、暑かった為、タンニンがしっかりしているので重くなるのでなく、タンニンの硬さで、逆にフレッシュ感がでるとのこと(2022年も同じ傾向?)で、コルトンGCの2023年も試飲させてもらいました。より粘土質の土壌がタンニンの多さに現れているようです。コルトンGCに関しては、より豊かなタンニンと果実味の凝縮とのバランスが、判断の基準になっているようで、ちょっと面白い評価でした。
この基準で言えば、2021年については、ブレッサンドの年かと想像されます。
ちなみに、もうひとつのグラン・クリュ、コルトン・シャルルマーニュの2023年に関しては、清澄中ということで試飲はできませんでした。
2022年や2023年のような暑い年のワインは、今は美味しく飲めるが、何年か経つと閉じるか?という問いについては、太陽があたって暑い年のワインは閉じない、逆に2021年のような年のワインは閉じるかも知れないとのこと。
↓今年の収穫状況について、ナタリーさんが撮影したスマホの写真を見せてくれました。
2024年は、ブドウの成熟期を中心にカビ病や虫等の被害によりや、下の写真のようなブドウが結構見られたようです。
こちらは、収穫時のブドウですが、結構健全なようです(サヴィニー・ラヴィニエールのブドウ?)
↓こちらは、収穫が終わった時に撮影した集合写真のようです。皆さん満足そうです。
次は、2021年ヴィンテージのワインを試飲させてもらいました。
サヴィニー・レ・ボーヌのもうひとつのプルミエ・クリュ、サヴィニー・プルミエ・クリュ・シャン・シャヴレです。
2021年らしいやや淡い色合い。繊細な香りと味わいの2022年や2023年とは全く違うエレガントなスタイル。日本人の好みだと伝えたところ、繊細な料理にパワフルなワインは必要ないとのコメント。まさにブルゴーニュらしいヴィンテージだと改めて実感。ちなみにナタリーさんも好みのようです。
最後に、ブラインドテースティングとして、1本開けてくれました。
少し成熟感があり、2016年か2015年と答えましたが、もっと古いとのこと。
正解は2009年のボーヌ・ブランシュ・フルールという村名ワインでした。流石にガイドとして同行していただいた花田さんは見事に当てていました。
生産量は1200本ほどで、かなり少ないようです。
熟成環境にもよるとは思いますが、村名にも拘わらず、思ったより若いのには驚きでした。
最初、1時間ほどしか時間がとれないとのことでしたが、結局1時間半ほどの訪問になりました。最後に2022年ヴィンテージのグラン・クリュの3本を購入して、ドメーヌを後にしました。価格は、ここでは書きませんが、驚くほど良心的な価格でした笑。
非常に充実していて楽しい訪問でした。何よりも、気さくでサービス精神旺盛なナタリーさんの対応には感激しました。もともと好きなドメーヌでしたが、今回の訪問をとおして、ますます好きになりました。
了