昨年11月に訪れたボーヌで購入した古酒です。
今回、現地で35年&40年近く熟成した、1990年と1985年のブルゴーニュを飲みました。個人保管だったようですが、久々に素晴らしいブルゴーニュ古酒と出会えました。
- 購入したワインショップ(Prestige Cellar)について
- 1990 Marchard de Gramont Savigny-Les-Beaune 1er Cru Les Guttes
- 1985 Domaine de la Pouilet Nuits-St-George 1er Cru Les Vaucrains
購入したワインショップ(Prestige Cellar)について
↓購入したのは、ボーヌ郊外に店舗を構える’Prestige Cellar’というショップです。
↓ショップの前には、ブルゴーニュ品種のブドウが植えられています。
↓2023年6月にオープンしたブルゴーニュのワイン博物館シテ・デ・クリマ・エ・ヴァン(Cité des Climats et vins de Bourgogne)のすぐ隣にあります。
↓シテ・デ・クリマ・エ・ヴァンから見るとこんな感じで、2軒のワインショップが並んでいます(11月に訪れた時は雪が積もっていました)。
左側は、CPH La Grande Boutique du Vinというワインショップで、こちらの品揃えもなかなか魅力的です。ボーヌの街中にも多数のワインショップがありますが、こちらの郊外のショップが規模や品揃えで圧倒しています。
奥にあるガラス張りの棚には、錚々たるプレミアムワインが並んでいます。今では、入手困難になってしまったアルヌー・ラショーも平然と並んでいます。ただ価格を見ると、目が点になります。
↓もちろんDRCやルロワ、ドーヴネも。
↓注目したのはコレ。1930年台からのブルゴーニュの古酒が年代別に木箱に並んでいます。
↓こんな感じで、実際に手に取り、状態を確認することができます。ラベルがボロボロのものも多いですが、これらのワインは、個人が所有・保管していたものをショップが買い取ったものとのこと。もちろん、(あくまで外観からですが、)1本1本、状態を確認したうえで、買い取っているようです。おそらく電気式のワインセラーなどではなく、自宅の地下などで長期保管していたものと思われます。
↓流石に1930年台~1950年台のものは、それなりの値段です。↓有名なドメーヌものやプルミエ・クリュやグラン・クリュは、相応の値段がついていますが、聞いたことのない造り手で村名クラスのものであれば、1980年台のものでも50ユーロ前後から買えます。
液面の高さと色合いから判断するしかありませんが、まさに宝探しの気分です。
1970年台以前は、リスクも高いので、1980年台で比較的評価の高い1985年とグレートヴィンテージの1990年のものを探しました。
↓購入した古酒は、以下のワイン(いずれもプルミエ・クリュ)です。
1985 Domaine de la Pouilet Nuits-St-George 1er Cru Les Vaucrains
1985 Eric Boisseaux Beaune 1er Cru Montée Rouge
1990 Domaine Marchard de Gramont Savigny-Les-Beaune 1er Cru Les Guttes
1990 Chanson Pere & Fils 1er Cru Baeune-Bressandes
2005 Bouchard Pere & Fils 1er Cru Beaune Clos de la Mounsse
右端の1988年のポマールは、今回購入したものではありませんが、液面の比較のために並べています。
最後のブシャールは2005年なので、並行輸入ものを中心に、まだ市場に比較的出回っているヴィンテージですが、グレートヴィンテージということもあり、リスクは少ないと考え保険として購入しました。
1985年や1990年のドメーヌものは、日本では殆ど見かけなくなっており、オークション以外では入手は難しいかと思います。
このうち、ブシャールの2005年ボーヌ・クロ・デ・ラ・ムースは、2月にエクセレンス同期会の2次会に持ち込み、飲みました(→こちら )が、状態には問題なく、期待どおり、なかなか素晴らしいワインでした。今回は、1990年のマーシャル・グラモンのサヴィニー・レ・ボーヌ・1er・レ・ゲットと1985年のドメーヌ・ド・ラ・プレットのニュイ・サン・ジョルジュ・1er・ヴォークランを自宅で少し時間をかけて味わいました。
結果から言えば、状態は問題なく、素晴らしく綺麗に熟成した久々に大当たりのブルゴーニュ古酒でした。
1990 Marchard de Gramont Savigny-Les-Beaune 1er Cru Les Guttes
マーシャル・ド・グラモンのワインは20年以上前、結構飲みました。どちらか言えば、色が淡く、エレガントなタイプという印象で、一時期力強いワインに好みが移ってからは暫くご無沙汰していました。ただ、ここ数年は、ゴーディショだけは、買い続けています。Les(Aux)Guettesという畑ですが、サヴィニー・レ・ボーヌ村の最も西に位置する一級畑で、南向き斜面の為にブドウが良く熟すようです。抜栓中にコルクが見事に折れました。同時に購入した2005年のブシャールもコルクが脆く、抜栓を任せた方は、結構苦労したようです。日本で地下セラーでワインを保管していたショップから買い取ったワインでも経験していますが、常に一定温度でワインを保管しているワインセラーと異なり、地下であっても温度変化が大きい環境で保管するとコルクは収縮と膨張を繰り返すことで長年の間に脆くなってしまいます。
幸いにして、液体は瓶口付近まで染みることはなく、液漏れは発生していません。縁にレンガ色が混ざるガーネットですが、35年を経たワインとしては、またこの造り手のワインとしては、濃い色合い。抜栓直後の香りは閉じ気味で、僅かに古酒特有の農家の庭の香り。暫くすると、開き出し、レッドプラム、乾燥させたブラックベリーやドライレーズン、フィグの果実香にナツメグ、林床、マッシュルーム、腐葉土の熟成香が加わり複雑な香りに。味わいのアタックにはやや穏やかながら、しっかりとした酸。赤黒系の丸みを帯びた果実味も思った以上にしっかりと感じられ、タンニンは溶け込んでおり、シルキー。余韻も比較的長い。時間が経つにつれ、果実の甘みが強まり、旨味のテーストが加わり、美味しい!
酸、果実味、タンニンがバランスを保ちながら丸く穏やかに熟成した印象。
このワイン、ヴィンテージもさることながら、実際に店舗で確認した色や液面の高さも選んだ理由でしたが、大正解でした。最近飲んだ1990年年代のワインとしては、ベストといえる1本でした。
(4.0)
スイスのチーズ、テト・デ・モワンヌと合わせました。かなり熟成が進んでおり、農家の納屋の香りが感じられ、この古酒とはよく合いました。
1985 Domaine de la Pouilet Nuits-St-George 1er Cru Les Vaucrains
8世紀から続くコルゴロアン村に位置する生産者です。6代に渡り女性当主が引き継いできています。ニュイ・サン・ジョルジュのヴォークランは力強く濃密なワインを生み出す畑として知られており、それもチョイスした点ですが、1980年台の中ではグレートヴィンテージを評される1985年ということで、熟成能力も高いと判断し購入しました。
↓ドメーヌ・ド・ブレッドは、3年ほど前に、このヴォークランの2006年ヴィンテージを飲んでいます。当時のメモでは、「ザクロ、ドライフラワー、紅茶、土っぽい香り。経年相当の熟成感を感じるが、収斂性を残すややタンニンが少しになる」と残しています。エチケットデザインは1985年のものとは変わっています。最近は、ご多分に漏れず、エレガント路線に変更しているようで、ブルゴーニュのドメーヌものとしては比較的安いブルゴーニュ・レジョナルはそこそこ人気が出ているようです。
↓恐る恐る慎重に抜栓し、今回はコルク折れは免れました。
今回はローストチキンに合わせました。前銘柄に比べると、流石に淡い色調です。レンガ色が混ざりますが、しっかり赤(エンジ)も残しており、全体的にオレンジがかったというような色合いではありません。
香りは、柔らかく、やや控えめながらラズベリー、サルタナ(ドライ)レーズン、フェンネル、林床・下草の香り・紅茶の熟成香。腐葉土や獣香の妖艶な香りはなかなか出てきません。
酸は、中程度で、少なめのタンニンは溶け込んでおり、滑らか。余韻はやや短かめ。
2時間以上かけて味わいましたが、最後は、キノコやタバコの熟成香も加わり、より複雑に。酸と果実の甘みがグッと出てきて、味付きもしっかり感じられるように。余韻も長く感じられるように変化。妖艶さと旨味の点では前銘柄には敵いませんが、丸さや優しさを感じる綺麗に熟成した感のある古酒でした。
(3.7)
期間は不明ですが、個人保管だったということで、不安はありましたが、いずれも劣化を感じることもなく綺麗に熟成した古酒でした。
ただ、30年以上眠っていた古酒なので、抜宣して直ぐに本領を発揮してくれる訳でなく、2時間以上掛けて飲むとその変化に驚かせられます。その意味で時間を気にせずじっくりと変化を楽しめる家飲みは、古酒を楽しむには最適だと思います。
良質な古酒を探すのは宝探し的な楽しみがあります。その意味で今回購入したボーヌのPrestige Cellarは強くお勧めできるワインショップです。日本人の店員さん(関口さん)もいらっしゃるので、色々と相談にのってくれます。古酒を含めたワインは、インターネットでも購入も可能です。また、現地で購入される場合は、600ユーロ以上の購入でDeTAX(免税措置)も受けられるので、まとめ買いもお勧めです。
了