サン=ブリのワインとシェーヴルチーズ

フランス北部のヨンヌ県、シャブリの近くに位置するサン=ブリAOCの白ワインです。ブルゴーニュでは珍しいソーヴィニョン種から作られます。この1ヶ月で飲んだソーヴィニョン・ブランとソーヴィニョン・グリの2種類のサン=ブリについて書きたいと思います。

サン・ブリAOCについて

「サン=ブリ(Sait-Bris)」は、「ソーヴィニョン・ド・サン=ブリ(Sauvignon de Saint-Bris)」VDSQ(原産地名称上質指定)ワインが2003年にAOCに昇格して生まれています。ヨンヌ県のサン=ブリ=ル=ヴィヌー(Saint-Bris-Le-Vienneux)村(下の赤円)を中心とした5か所の村で作られる白ワインです。この一部の村で、Irancy(1999年にAOC昇格)という赤ワインが造られています。シャブリの有名なドメーヌ、ヴァンサン・ド―ヴィサもIrancyの唯一の赤ワインを造っています。
土壌は、シャブリと同じキリメジャン土壌で、ミネラルの分豊かなブドウを産出します。

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Les Vins de Bourgogne – The Wines of Burgundy – Sylvain Pitiot & Jean-Chales Servant

バイィ・ラピエール サン=ブリ ソーヴィニヨン・ブラン 2017年
Bailly Lapierre 2017 Saint-Bris Sauvignon Blanc

バイィ・ラピエールはサン=ブリ=ル=ヴィヌー村の南に位置するバイィ村にある生産者組合です。現在430人もの組合員が栽培を行い、年間350万本ものワインを生産している大手で、主力は、スパークリングワイン(クレマン・ド・ブルゴーニュ)です。昔は、シャンパーニュにブドウを販売していたようですが、原産地呼称制度ができてからシャンパニューに売ることができなくなったため、自分たちでクレマン作りをはじめたようです。

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淡いクリームイエロー。
シトラス、グレープフルーツ等の柑橘系の香り、スイカズラの花、ヴェルヴェーヌ、レモンバーム等のフレッシュハーブ。石灰からのミネラルをしっかり感じる。味わいのアタックは溌溂とした酸、柑橘果実の甘みと心地よい苦みの余韻。品種固有のグリーンノートは控えめで、フルーティなソーヴィニョン・ブランですが、ニージーランド等のソーヴィニヨン・ブランに感じられるパッションフルーツのような華やかな香りでもなく、酸が強すぎる訳でもなく、あくまでバランスの取れたソーヴィニヨンブランという印象で、するすると飲めてしまいます。

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▼マスカルポーネチーズ(右)やハーブ入りのキリ―のクリームチーズ、ナッツなとど良く合います。

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ドメーヌ・プティジャン サン=ブリ ソーヴィニョン・グリ 2017年
Domaine Petitjean 2017 Saint-Bris Sauvignon

サン=ブリ=ル=ヴィヌー村に1930年に創業した「ドメーヌ・プティジャン」は、1999年、ヴォーヌ・ロマネの「ドメーヌ・フォレ」で修業したロマリック・プティジャン氏によって継承され、本格的に自社ビン詰めを開始しています。もともと生産量が少なくフランス国内で消費されることが多いワインでしたが、最近になり、輸出されるようになり、日本でも同ドメーヌの華やかなラベルのサン=ブリを時々目にします。

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▼これは、ちょっと地味めのラベルのサン=ブリです。
裏ラベルに「Elevé 100% en fût de chêne et 100% Sauvignos gris」とあります。 fût de chêneはフランス語で「樽熟成」の意味で、フランスのワインやシャンパンのラベルに時々見られる表記です。すなわち100%樽熟成で、ソーヴィニヨン・グリ100%という意味です。

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ソーヴィニヨン・ブランの突然変異による亜種、ソーヴィニヨン・グリ種からのワインを樽熟させた珍しいワインです。グリ(gris)は、灰色を意味するフランス語で、灰色がかったピンクの表皮が特徴です。同じように、ピノ・ノワールの突然変異から生まれたピノ・グリ、あと、日本の甲州種もグリの表皮が特徴の品種です。

キンメリジャン土壌の僅か0.12haの区画のソーヴィニヨン・グリを228Lの新樽100%で発酵させ14ヶ月熟成させています。生産量は、僅か3樽(900本)のようです。

以下、テースティングメモです。

淡いレモンイエロ―、バイィ・ラピエールと同時に比べた訳ではありませんが、黄色が比較的強い印象です。
ミネラルの香りがくっきり、シトラス等柑橘系の香り、フレッシュハーブ、酸ははっきりしているものの尖っていない。バニラ香は僅かで、新樽100%ということだが、樽っぽさはあまり感じない。バイィ・ラピエールのソーヴィニヨン・ブラン100%のワインに比べると少し酸は柔らかく、やや果実の厚みを感じる。僅かにオイリーっぽさも。

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▼山羊乳製(シェーヴル)のサント・モール・ド・トゥーレーヌです。一般的にロワールのサンセールに代表されるソーヴィニョン・ブランのワインに合うことで知られています。シェーヴルの酸味とワインの酸味が良く合います。

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▼牡蠣のアヒージョと舞茸の炒め物。これも当然ながら合います。

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サン=ブリのソーヴィニヨン種のワインは、シャブリと同じキンメジャン土壌ということで、強いミネラルやシャープな酸を予想するかと思います。確かに、飲んだサン・ブリのワインはミネラル感豊かですが、最近のブルゴーニュ南部のプィイ・フュッセ等でも強いミネラルを感じるワインは多く見られます。

何かが突出している訳ではなく、酸・ミネラル・果実味・甘みが、バランスよく取れており幅広い料理に合わせ易い、AOCワインでありながら、サンセールほど高価ではなく、比較的手軽にフランスのソーヴィニヨン種の白ワインを楽しめる。あくまで個人的な感覚ですが、そんなところが、サン=ブリのワインの特徴かと思います。

<了>

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この記事を書いた人

1958年東京生まれです。
昨年、仕事をリタイアして大好きなブルゴーニュワインとグルメや旅行を楽しんでいます。
主な資格(Foods&Drinks):
JSA ワインエキスパートエクセレンス
JSA SAKE Dioploma
WSET Level3
CPA チーズプロフェッショナル
唎酒師

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