5月27日、ヴォーヌ・ロマネ村のミシェル・グロ、ジャン・グリヴォーに続いて、ル・ゲレック=デュクエを訪問しました。ル・ゲレック=デュクエは、ジュヴレ・シャンベルタン村の隣、ブロション村に拠点を置く新進気鋭のドメーヌです。

ドメーヌについて
ル・ゲレック家は、1910年から続くブドウ栽培を営む家系でした。1930年生まれの祖父の時代まで自家醸造を行っていましたが、引退後、畑を他のドメーヌに貸し出していました。2018年にフェルマージュ契約が満了したのを契機に、4代目のミカエル・ル・ゲレックと義兄のアルノー・デュクエがタッグを組み、2019年にドメーヌを再興し、ワイン造りをスタートしました。
樹齢70年~93年といった貴重な古樹を多く所有し、古樹ならではの凝縮感と、洗練された味わいがワイン評論家や同業者から高く評価され、一躍、次世代の注目株として、注目されています。
↓(右)ミカエル・ル・ゲレックと(左)アルノー・デュクエ

このドメーヌは、数年前、インポータ(ヌーベル・セレクション)の紹介文で知りました。そこには、「名門アンリ・マニャン当主が熱烈に推薦する注目のジュブレ新星」と題されており、アンリー・マニャンの現当主シャルル・マニャンが語った言葉として紹介されていたのが、以下の内容です。
「私の下での修行を希望する、無数の醸造家の卵たちを受け入れてきましたが、その後友人と呼べるまでになったのはアルノーだけでした。畑では、まるでぶどう樹を慈しむかのように心のこもった仕事をしてくれました。醸造所では、誰もやりたがらないような面倒な仕事にこそ進んで取り組み、かつ、すべてが正確でした。私が出張などで一定期間ドメーヌを留守にする間、鍵を預けられたのは、彼だけでした。アルノーとミカエルの独立後、ファーストヴィンテージの「ジュヴレ・シャンベルタン2019」を樽から試飲させてもらったのですが、シルクの衣のように上品な口当たりに衝撃を受けると同時に、まるで彼らの人柄が表れているかのような、優しさに溢れたナチュラルな味わいに心を打たれ、ちょっと泣いてしまいました」(ヌーベル・セレクションのHPより引用)
そして、このワインを始めて飲んだのが、2024年の栄光の3日間の大試飲会です。

当時2023年はリリース前だったので、ラベルのヴィンテージは修正され、左のワインのラベルには93の文字が手書きで書かれいます。当時は、数字の意味が分からなかったのですが、樹齢93年を意味しており、このキュヴェは、2023年にリリースされています。当然若いながら、滑らかでシルキーな飲み口にインパクトを受けました。
所有畑は、わずか3.5ha。ドメーヌとしてリリースしているメインのジュヴレ・シャンベルタンのキュヴェは以下の3つです。
Les Jeunes Rois(レ・ジューヌ・ロワ)
Champ 93(シャン93)
Clos Champ Monopole(クロ・シャン・モノポール)
テースティング
テスティングは、ドメーヌ内でなく、国道(D974)の東側にあるカーヴで行われました。ドメーヌの復興に伴って建てられたもののようです。カーヴが完成したのは2020年のようです。2019年は。モレ・サン・ドニのピエール・アミオにも買ってもらったようで、全て元詰めとなったのは、2021年からのようです。

さすがに新しいドメーヌなので、ステンレスタンクもピカピカです。

樽も先に訪れたミシェル・グロやジャン・グロに比べると少なく、こじんまりとしています。

テースティングは、6+1種類。
日本で流通しているのは、前掲の3つのジュヴレ・シャンベルタンの村名格のキュヴェだけだったので、ちょっと意外でした。知りませんでしたが、2023年から白ワインも造っていました。

試飲は、白から。
2024 Pernand-Vergeless Les Belles Filles Blancs
白は、買いブドウです。収穫後、ブドウの状態でペルナン・ベルジュレスから持ってくると酸化してしまうので、ブドウを収穫したとところ所で圧搾し、ジュースの状態で持ち込み、タンクに入れて発酵させるとのこと。
初ヴィンテージのこの年は、500Lのカドゥス製の新樽1つと普通の(バリック)古樽3つで熟成させたのこと。使用した新樽が気に入ったので、2024年は新樽100%で熟成。2025年以降は、新樽と古樽半々で熟成させる方針とのこと。白ワインについては、まだ試行錯誤のようです。

レモンや青リンゴ、白桃のアロマ、MLFによるバターやクリームのリッチなニュアンス。(2024年らしい?)生き生きとした酸のアタックとミネラル。新樽比率は高いようですが、酸のおかげか、ほとんどオーキーには感じられません。美味しい!2年目からこんな素晴らしいワインが造れるのは、ちょっと驚きです。
赤ワインにも共通しているようですが、酸やフレッシュ感をきちんと残すために、特にブドウの収穫のタイミングを強く意識しているようです。
2024 Savigny-les-Beaune
こちらも買いブドウから2023年に初めて造ったことのこと。50%新樽で11ヶ月熟成。
コラージュ(清澄)やフィルタリングは行わないとのこと。

レモンや緑色果実、白い花やフレッシュハーブの綺麗なアロマ。しっかりとした酸、クリーミーな口当たり。
白については、生産量が少ないので、輸出には回せないが、インポータ(ヌーベル・セレクション)は興味を持っており、2025年はサヴィニーは増やすつもりなので、可能性はあるとのこと。
2023 Bourgogne Cote d’Or Rouge
ブロション村の畑から。ドメーヌでの消化がメインのようです。畑はブロション村の上部の区画Queue de Horeng、0.35haですが(植え替えのため)引き抜いているので、僅か0.1haの区画から1樽300本程度。新樽は使用せず、古樽で15ヶ月熟成。
赤系果実のアロマ、ピュアーで柔らかな果実味。口当たりもやさしく、「親しみやすく、飲みやすい」という表現がぴったりのレジョナル。
2024 Fixin
ブロション村の上部のQueue de Horengの自社所有区画のブドウと下部のLa Croix Viollettsの買いブドウから。
3樽900本を生産。
寒い年の2024年らしい軽やかなアロマ、柔らかな果実味、繊細でエレガントなスタイルのワインです。

もともとブロション村の中央の街を挟んで南側はジュヴレ・シャンベルタンを名乗れますが、北側は、村名格ではなく、格下のコート・ド・ヴィラージュ(Côte de Nuits-Villages)にとどまっていました。ただ、AOCの制度の改定があり、2024年から、このブロション村の北側の畑は、Fixinに組み込まれたようです。
従って、この2024年ヴィンテージのこのワインはFixinを名乗っています。

↓Brochon村の標識と共にAOCを示す標識がありますが、現時点では、まだ「 Côte de Nuits-Villages」のままでした。
いずれ「Fixin」に置き換わると思います。

2023 Gevery Chambertin Champ 93
前述の樹齢93年のブドウからのワインです。樹齢93年ということですが、2023年は、1930年生まれの祖父へのオマージュでもあるようです。
ベリー系の果実に、若干火打石のような香りが感じられ、一瞬、還元香かとも思いましたが、30%の新樽からのオークからのスモーキな香りのようです。果実の凝縮感が感じられながらも熱さはなく、エレガントで滑らかな口当たり。

2024 Gevery Chambertin Les Jeunes Rois
2024年の天候の話をしていたら、特別に開けてくれました。2024年は、雨が多くて、病気(主にベト病)が蔓延したうえに、受粉が上手くいかず、大幅な収穫減になったが、結果には満足しているとのこと。
2024年トータルで、4千本くらい(2023年は1万5千本くらい)で3分の1以下だったようです。
外観は、明らかに淡い色調です。2020や2023年のような凝縮感はあまり感じられませんが、繊細でエレガントな味わい。
ゲレックさんは、「まるで、25年前のピノ・ノワール」と評していました。好みは分かれるかもしれませんが、必ずしもネガティブなワインではありません。すぐに飲めるという点も含めて、個人的には好きです。
↓Les Jeunes Roisの畑です。グランクリュ街道を挟んでChampの反対側(東側)になります。Champが、ラヴォー渓谷からの土が溜まった土壌に対して、石灰岩が多い土壌のようです。


2023 Gevery Chambertin Clos Champ
最後は、看板ワインのクロ・シャンです。この畑、Champの畑に隣接するドメーヌのお屋敷がある石垣で囲われた敷地内にあります。
カシスやブラックベリーの黒系寄りの果実の香り、リコリス、クローブのスパイス、骨格を感じながらも固くはない。綺麗な酸と滑らかなタンニンが調和している感じ。これも素晴らしいジュブレ・シャンベルタン。
このワインは、少し前に2020年を飲んでいました。カーヴが完成したのが2020年ということだったので、確認したところ、2020年はこのキュヴェのみ2000年ほど造ったとのこと。2020年に関しては、やや高い酸を感じたので、この点を聞いたところ、暑かった年なので、敢えて収穫日を速めて酸をキープしたとのこと。
ブドウの身に詰まっている果実味とフレッシュ感と酸を壊さないように、醸造する時は、すぐに発行が始まらないようにタンクを少し冷やして、暫く漬け込む。間をおいて、冷やすのを止めると発酵が始まる。ピジャージュは行わず主にルモンタージュを行うとのこと。2023年に関しては暑く(ブドウが良く熟したので)一部全房発酵を行ったとのこと.
2023年に関しては、それほど強い酸は感じず、若いながらのタンニンも滑らかでバランスが取れている印象の味わいでした。
↓Champの畑です。

Champの右側の石垣の中にこのClos Champがあります。モノポールの畑です。奥にドメーヌの屋敷があります。

2年前、初めてChamp 93を飲んでからずっと気になっていたル・ゲレック・デュクレでしたが、今回、改めて、美しい酸を持ち、ピュアで骨格感がありながらエレガントさを兼ね備えたここのワインの素晴らしさを認識することができました。また、買いブドウながら素晴らしい白を造っているのも驚きでした。
本格的な醸造を始めて、僅か3年ほどでこのクオリティなので、これから先が楽しみです。
いかんせん生産量が少ないのがネックで、今後、白が日本に入ってくるか判りませんが、インポーターさん(ヌーベル・セレクション)には、是非頑張ってもらいたいと思います。
了

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