コート・デ・ブランのテロワールを正確に表現~ピエール・ジモネ訪問

5月18日のシャンパンメゾン訪問、2軒目はコート・デ・ブラン地区の北端に位置するキュイ村のレコルタン・マニピュラン、ピエール・ジモネ・エ・フィス(Pierre Gimonnet & Fils)です。樽を一切使用せず、コート・デ・ブランのシャルドネの純粋な透明感を追求しているメゾンです。

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ジモネ家のブドウ栽培家としてのスタートは1750年代になります。当時は、キュイ村の畑でブドウ以外に様々な農作物を作っており、ブドウはシャンパン商人に販売していましたが、1925年にピエールが元詰めを開始してシャンパン・メゾンとしての礎を作りました。当時としては珍しいブラン・ド・ブランに特化したスタイルを選択しています。
1955年にピエールの息子であるミシェル・ジモネが家業に加わり、ワイン造りに革命をもたらしました。彼の情熱と科学的な思考は、小型ステンレスタンクを用いた単一畑の醸造の先駆者となり、それぞれの産地への敬意、トレーサビリティ、そして各畑の正確な知識を確固たるものにしました。彼は家族が所有する畑の独自性を理解し、地に足の着いた、農民のようなアプローチで、土地の魂がはっきりと感じられるシャンパンを造り上げました。
現在は、3代目にあたるオリヴィエとディディエ・ジモネが中心にメゾンを経営をしており、さらにその子供(4代目)が加わっているようです。

テースティングルームに1枚の写真が掲げられていました。

右から2番目が創業者のピエール・ジモネ氏(当時90歳だそうです)、その左がミシェル・ジモネ氏、左右両端が現在の経営の中心を担っているディディエ、オリヴィエ・ジモネ氏です。

現在所有している畑は、30haとのこと。RMとしては、結構大きいと思います。
メゾンの裏手には、キュイ村の1級畑が広がっていますが、ここの所有畑の面積は4haとのこと。
一面ブドウ畑のように見えますが、畑の全てにブドウが植えられている訳ではなく、他の農産物、ビーツ、小麦、トウモロコシや菜の花も栽培されているとのこと。

キュイ村は北東にシュイイ、南東にクラマンというグラン・クリュに接しています。土壌や気候といったテロワールは、2つのグラン・クリュと大差はありませんが、何故グラン・クリュに認定されず、プルミエクリュになるのかという問いには、畑の向きがが東向きで気温が僅かに低い為との回答でした。
メゾンの歴史は、このキュイの畑から始まりますが、ミシェルの奥さんのラルマンディエさんが、持っていたクラマンの畑が加わり、さらにシュイイ、オジェ等に畑を買い足していきます。

年間の生産量は、多い年で30万本とのことで、現在は、75%を45カ国に輸出しており、主な輸出先は、アメリカ、ドイツ、イタリア、そして日本とのこと。最近は、ベトナムや中国への輸出も増えているとのこと。

このメゾンの醸造における最大の特徴は、純粋にこのコート・デ・ブランのシャルドネのミネラルを生み出すために樽を一切使用しないということです。先の写真(1987年に撮影されたのものようです)に樽が映っていますが、これらの樽は、ミシェルの時代に全て燃やしてしまったとのこと(笑)。
醸造においては、培養酵母を使用し、MLFも人為的におこなっているようで、先に訪れたド・スーザとは異なり、比較的オーソドックスな醸造スタイルのようです。

特徴的に感じたのが、NVで使われるリザーブワインの保存方法です。
リザーブワインの保存方法としては、ステンレスタンクを使用、樽を使用、ガラス瓶(ボトル)を使用する方法があります。先に訪れたド・スーザでは、木樽に毎年ベースワインに使用されなかったワインをソレラシステム的に継ぎ足していく方法を採用していますが、ピエール・ジモネは、ボトルで保存しています。マグナムボトルを使用するメゾンも多いようですが、ここは、通常のブテイユ、すなわち750mlのボトルを使用しています。カーヴには、100万本近いリザーブワイインが保存されているとのこと。確かに木樽等に比べ酸化の進みは遅く、品質を保つことができるうえに、ヴィンテージ単位で保存できるため、思った通りにブレンドをコントロールできるメリットはありますが、保存の手間を考えると、ちょっと気が遠くなります。

ゲスト用のセラードア・テースティングルームは、カーヴとは別棟にありました。

↓入り口には、CLUB DE VITICULTEURS CHAMPENOIS(クラブ・ド・ヴィティキュルター・シャンプノワ)と書かれたプレートが掲げられています。これは、シャンパーニュ地方の栽培家(ヴィティキュルター)による生産者組織のひとつで、栽培家の横のつながり・品質向上のための組織に加盟していることを示しています。
さらに左側には、CLUB TRÉSORS DE CHAMPAGNE(スペシャル・クラブ)のプレートがありますが、これが、シャンパーニュ最古の優良RM(レコルタン・マニュピュラン)協会のメンバーであることを示しています。スペシャル・クラブは、1971年に12の老舗RMにより創設されましたが、ピエール・ジモネも発起人のひとりとのこと。現在は25~30前後のRMが加盟しているようです。加盟しているRMは、そのトップキュヴェのみ、厳しい審査を経て、Special Club(スペシャル・クラブ)を名乗ることができます。

キュイの畑が窓から一望できるテースティングルームに通されましたが、先に訪れたド・スーザに比べ、オーソドックスなテースティングルームです。

スペシャルクラブのボトルが並んでいます。スペシャルクラブのボトル形状は、生産者を問わず決められており、丸みを帯びた下部が太い独特なボトルです。
手前に置かれているのは、コート・デ・ブランの土壌を象徴する白亜の石灰岩です。

試飲です。表記はありませんが、全てのキュヴェがブラン・ド・ブランです。
まず、メゾンの看板商品から。

NV Cuvee Cuis 1er Cru Brut

前掲のメゾンの裏手に広がるキュイの畑のシャルドネ100%。メゾンのシャンパンの総生産量の半分にあたる15万本がこのキュベとのこと。試飲したボトルは、2022年をベースに2010年から2021年までのリザーブワインを加えているとのこと。ドサージュは、5g/l。
ライムや青リンゴ、白い果樹の花のアロマ、ほのかなブリオッシュ香。爽やかな酸、厚みはそこそこですが、繊細な透明感が心地よいシャンパンです。
メゾンで最も安価なスタンダード・キュヴェ的な位置づけですが、決して手を抜くことがなく、大事に造っているとのこと。確かにブラン・ド・ブランの良さが顕れているキュヴェだと思います。

ちなみにこのキュヴェは、数週間前に自宅でじっくり味わっています。
エイ・エム・ジィさん輸入のもので、デコルジュマン時期が違うかもしれませんが、ベースは同じ2022年産です。試飲時には聞き忘れたリザーブワイン比率は、裏ラベルによると28%とあります。

2021 Cuvee Gastronome 1er Cru Brut

レストラン向けに食中酒として設計されたシャンパンのようです。
(最近は、多くのメゾンが、この種のガストロノミー向けのシャンパンを造っています)
クラマン、シュイのグラン・クリュに少しのキュイのブドウを加えています。4年瓶熟成。デコルジュマンは2026年2月。ドサージュは、食中酒を意識して、3.5g/lと少なめです。
2021年ヴィンテージのブドウについて聞いてみたところ、シャンパニュー地方では、そこそこ雨が降ったが、この地はそれほどでもなく、良いブドウができたとのこと。ヴァレ・ド・ラ・マルヌは粘土質の土壌なので水捌けが良くないが、コート・ド・ブランの石灰質は水捌けが良い為、雨が多くてもブドウの品質が維持できるようです。
ドライながら、しっかりとした骨格も感じられます。まさに料理に寄り添うという感じのシャンパンです。
魚料理や牡蛎と合わせてほしいとのこと。

2019 Cuvee Fleuron 1er Cru Brut

Fleuronは、「一番良いもの」という意味だそうです。
50年以上の古木のブドウを使用しており、クラマン39%、シュイ36%、キュイ25%とのこと。
レモンや青リンゴの果実にチョークからのミネラルが強く感じられます。ブリオッシュやバターの香りも強く、これまでのものに比べ、最もコクがあり複雑で美味しい👍このキュヴェ、とても気に入ったので購入しました。

ここからは、スペシャル・クラブのキュヴェです。

2016 Cuvee Special Club Extra Brut

クラマン58%、シュイ28%、キュイ15%。ドサージュは、聞き忘れましたが4g/lのようです。
レモンピールやリンゴ、白い花、ブリオッシュ、ナッツのアロマに塩味のあるミネラルが感じられます。こちらもクラマンのシャープな骨格を感じますが、シュイも使用されているので柔らかさもあり、絶妙のバランスです。

このスペシャル・キュベ、グラン・クリュのブドウがメインですが、キュイがブレンドされているため、グラン・クリュは名乗れず、プルミエ・クリュの位置づけになります。このあたりにも、この造り手のキュイへのこだわりが感じられます。
スペシャル・クラブを名乗るには、前述のCLUB TRÉSORS DE CHAMPAGNEが定める厳しい条件と厳格な審査が必要ですが、プルミエ・クリュのブドウが含まれていても良いのか疑問がありましたが、その問いには、(生産者の最高の区画のブドウを使用していれば)問題ないとのことでした。ちなみにキュイ単独のスペシャルクラブも造られています。
スペシャル・クラブの中で、このキュヴェのみラベルに金属が使用されており、特別感があります。
2015年ミレジメを我が家のセラーにストックしており、再開が楽しみです。

最後は、最も楽しみにしていたスペシャル・クラブのグラン・クリュの飲み比べです。
実はオジェを含めた3つのキュヴェを試飲したかったのですが、次の訪問先(ミニエールF&R)のアポ時間が迫っており、ここからエルモンヴィルまで1時間近くかかることから、断念し、クラマンとシュイのみを慌ただしく試飲しました。

2017 Cramant Grand Cru Special Club
2017 Chouilly Grand Cru Special Club

同じヴィンテージですが、外観は、右のクラマンのほうがやや濃く見えます。
どちらも深いミネラルを感じますが、クラマンはしっかりとした骨格を感じるのに対し、シュイは、柔らかな果実味を感じます。教科書通りと言えるかもしれませんが、実際に味わってみると、2つのグランクリュの違いがはっきり感じられ興味深いテースティングでした。

同じ日に訪問した同じコート・デ・ブラン地区のド・スーザとピエール・ジモネですが、ド・スーザのビオディナミへの傾倒は別としても、シャルドネのみ(ブラン・ド・ブラン)へのこだわり、樽の使用/未使用、リザーブワインの保存法等々、シャンパン造りのポリシーが大きく異なるのは、非常に興味深い点でした。

好みはありますが、大手のNMとは異なるRMらしいこだわりを実感できる2軒の訪問でした。

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この記事を書いた人

1958年東京生まれです。
昨年、仕事をリタイアして大好きなブルゴーニュワインとグルメや旅行を楽しんでいます。
主な資格(Foods&Drinks):
JSA ワインエキスパートエクセレンス(2022)
JSA SAKE Dioploma(2018)
WSET Level3(2025)
CPA チーズプロフェッショナル(2017)
SSI 唎酒師(2018)
日本テキーラ協会 テキーラマエストロ(2017)

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