冷涼な森が育む、静謐で研ぎ澄まされたシャンパーニュ~ミニエールF&R訪問

5月18日、コート・デ・ブランの2軒のメゾンを訪問後、1時間ほど北上したモンターニュ・ド・ランス地区の北端の村、エルモンヴィル(Hermonville)に移動し、ミニエールF&Rを訪問しました。日本でも非常に人気の高いRMで、格付け畑を持たないにもかかわらず、冷涼な地から素晴らしいシャンパーニュを生産しています。

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エルモンヴィル村には12世紀からブドウの木が植えられており、ミニエール家は代々ブドウ栽培を生業として生計を立てていました。
ワイナリーとしての歴史は、1919年に現当主フレデリック&ロドルフの曽祖父にあたるアルフレッド氏が、自らの圧搾機を設置してランスのワイン商にワインを販売したことに始まります。その後、祖父母のアンリとマドレーヌ、さらに両親のジェラールとジョゼットの努力によって成長を遂げますが、ブドウはすべてヴーヴ・クリコ等の大手NMに販売していました。現在ミニエールの味の核となっているのは、この2代目・3代目が植えた古木(1960年代が中心)になります。
4代目にあたるフレデリックは、1990年代半ばにアンセルム・セロスの下で研鑽を積み、弟ロドルフと共に2005年に家業を継ぎ、2007年に元詰めを開始したことで一気に現在のトップRMに進化します。
↓現当主のフレデリックさん(左)とロドルフさん(右)です。
テースティングルームに置かれていた写真ですが、何故かシャンパンではなく、ウィスキーを飲んでいます笑。

所有畑は8haですが、現在も大半をネゴシアンに販売しており、自社元詰めは、2haほどのようです。
現在の生産本数は、4万本以下で、かなり少量生産のRMと言えるかと思います。

ミニエールF&Rは、セロスの哲学の影響を受けたこともあり、樽熟成へのこだわりがあります。
↓屋外に(乾燥のため?)積み重ねられた木樽。澱を落とすために下向きになっています。

アンセルム・セロスがやはり熱心であったビオディナミ農法への考えは、直接聞けませんでしたが、基本的にはリュット・リゾネ(減農薬農法)のようです。HPによると「有機土壌改良材を使用し、土地を優しく耕し、土壌の生命と構造を守るために、厳選された区画に被覆作物を植えています。また、害虫や病気の管理には環境に優しい方法を採用し、環境への影響を最小限に抑えています」とあり、持続可能なブドウ栽培(サステナブル農法)を重視しているようです。
また、リュー・ディ(区画)を重視しており、少量ながらリュー・ディ名のキュヴェをリリースしています。

醸造に関しては、人為的なマロラクティック発酵(MLF)を行わず、自発的なMLFに任せているようで、冷涼なテロワールからのブドウからの生き生きとした酸を保つことを重視しているようです。

メゾンに到着すると、フレデリックさんが、まずメゾンの裏手に広がる畑に案内し、この地のテロワールについて説明してくれました。

↓土壌については、手前の低い部分が砂質に粘土質が混ざる土壌、中腹部分に行くほど砂質の割合が多くなり、さらに上部の森の下の部分には白い石灰岩が表れるとのこと。

手前のリュー・ディがヴォワルミサ(Les Voirmissa)です。点線丸内の僅か0.45haの区画のピノノワールとピノムニエから、レ・ヴォワルミサのキュベが造られます。さらに手前の小区画は、初代アルフレッドのオマージュとしてAlfredの名前を冠した区画です。ここは、1947年に植樹された古木とのこと。

シャルドネは、主に中腹のLes Moineauxというリュー・ディの砂質が多い土壌に植えられています。ブラン・ド・ブランの”Blan Absolu”は、分散したいくつかの区画のシャルドネが使用されています。砂質の畑は、保水性が低い為、ブドウにストレスを与えることになるが、これがブドウには良い影響を与えるとのこと。

さらに特筆すべきことは、このエルモンヴィルの畑には接ぎ木されていない自根の樹が存在しています。これは、砂質土壌の為、フィロキセラの害を回避できることによるものです。

ピノ・ムニエですが、この時期、開花は未だのようです。比較的開花の早いシャルドネもこの地では未だのようです。
(後に訪れたブルゴーニュでは、一部開花が始まっていました)

天候に話が及びましたが、近年では、2018年、2022年、2025年が雨が少なかったが、今年2026年は春先に雨が多く降り、カビ(Milddeu)病の手当てに追われているようです。また、気温が低く、冷害も発生しているとのこと。
↓シャルドネですが、枝の1本だけが突出して伸びて、他の枝はそれほど成長していません。(春先が)寒い時にに起きる現象で、枝の成長に大きなばらつきが出るとのこと。

↓左端の畑に若木が植えられていましたが、2年前に植えたピノ・グリとのこと。今の規定上では、一応、シャンパンにも使用することができますが、これは、遊びで造っているとのこと。

畑の見学の後、カーヴへ案内されました。ステンレスタンクと樽が並んでいます。
樽熟成により、澱と樽が一緒になり生み出すアロマを重視していますが、新樽は基本的に使わず、今年も6樽しか調達していないとのこと。

↓コカール(Coquard)社の垂直式プレス機です。コカール社はシャンパーニュ地方を代表するプレス機メーカですが、フレデリックさんは、「(プレス機の)ロールスロイス」と評していました。4000kgを一度に圧搾できるとのことですが、かなり大型の部類に属すのではないかと思います。
選果台は使用していませんが、シャンパーニュでは一般的なようです。収穫時に腐敗果や未熟果を除去することになりますが、品質を確保するため、収穫人はキロ単位で雇うわず、時間単位で雇うとのこと。
「砂地でのムニエについては、病害が少ないのでは?」に問いには、水を含まないのは良いが、粘土質に比べ、手当をしないと、すぐに広がってしまうとのこと。2021年は、60%ほどのブドウを失ったとこのこと。

リザーブワインは、2年間だけは樽で保存し、その後ステンレスタンクに戻すとのこと。
ちょうどブレンドが終わったところで、ステンレスタンクで落ち着かせているタイミングとのことで、タンクから瓶詰め前の白ワインをテースティングさせてくれました。

ブラン・ド・ブランのBlanc Absoluです。
リザーブワインの比率は、凡そ25%を基準としているとのこと。
ほんのり、オークからのバニラ香が漂い、綺麗な酸にリッチなテーストの白ワインです。澱は落ちているようで、一見濁りは殆どないように見えましたが、完全にクリアになるにはもう少し時間が必要なようです。2025年ベースのシャルドネはとても良いとのこと。古い樹のものが入っており、古い樹が良い酸をもたらしてくれるとのこと。MLFが起きている樽もあれば、起きていない樽もあるようで、MLFについては人為的に行わず、自然に任せているようです。
フィルターはかけないとのこと。

シャルドネといえば、コート・ド・ブランに代表される白亜の石灰質土壌を思い起こしますが、砂地でのシャルドネとの違いについて聞いたところ、石灰質はシャープでミネラル感の強いシャルドネ、砂地はリッチなテーストのシャルドネになる傾向との説明でした。
NVだけでなく、レ・ヴォワミサやラ・ヴィーニュ・ア・アルフレッドなど希少なリュー・ディのキュヴェの白ワインも試飲させてくれました。

最後は、フラン・ド・ピエ。前述の自根の古木からの希少キュヴェです。他は3,300リッターのタンクですが、このキュヴェで使用しているのは1600リッターひとつです。しかもタンク一杯には入っていません。

いずれも、今回試飲したアッサンブラージュ後の白ワインは、あくまで最終形ではなく、1ヶ月後に再度テースティングをして調整を行うとのこと。瓶詰めして熟成したら、どんなシャンパニューになるのかを、長年の経験から予想して調整するようです。

↓ルミアージュ中のボトル。15日後に澱抜きをするとのこと。

↓出荷を待つボトルです。

カーヴの拡張を計画中で、現在、大手NMに売っているブドウを自社元詰めに変えていくようで、これは期待大です。

カーヴを離れ、テースティングルームに向かいますが、時は既に18時を過ぎていました。

↓随所にセンスの良さが感じられるテースティングルームです。

↓今回のテースティングアイテムです。
左から、
NV Influence Brut
NV Blanc Absolu
2019 Les Voirmissa
2018 Francs de Pied
2016 Symboise
2019 Les Moineaux

まず、エチケットのデザインが変わっている(全キュベで統一されている)ことに気づきました。
今年の出荷分から変更したようで、日本には1週間ほど前に出荷したとのことで、これから日本市場に出てくるものは、新ラベルになっていると思われます。

まずは、NVの2本からテースティング

NV Influence Brut / アンフリュアンス

ベースワインは2022年ヴィンテージで、ドサージュは3.5g/l、デゴルジュマンは2025年1月です。
アンフリュエンスは、60%のムニエ、20%のピノ・ノワール、20%のシャルドネ。通常25%のリザーブワインは、15%と少なめですが、これには、以下の背景があるようです。
リザーブワインで使用する前の年がメインですが、前の年にあたる2021年の収穫が壊滅的(全体で60%減)で、特にピノ・ムニエとピノ・ノワールの被害が酷く、2021年ベース(現在市場に出ているボトルです)のものは、通常より多く(40%も)のリザーブワインを使用せざるを得なかったため、この2022年ベースワインのものに加えるリザーブワインが少なくなってしまった為、減らさざるを得なかったとのこと。
まさに、少量生産のRMならではの苦労かと思います。
2021年ベースのアンフルエンスは、日本で飲んでいますが、確かにベースワインの多さ所以の複雑さを感じました。
1年違いながら、こちらはやや若々しさを感じました。
ただ、ベースワインの2022年は非常に良い年だったので、どちらが良いかは、好みによるかと思います。
アンフルエンスは、ミニエールのエントリー的(といっても、1万円超え)な位置づけのキュヴェになりますが、美しい酸・ふくよかな果実味・ミネラルのバランスが取れた個人的にも好みのシャンパーニュです。

ブラン・アブソリュに関しては、2021年のシャルドネの被害はそれほどでなかったことから、この2022年のベースワインに加えられるリザーブワインは通常通り25%使用できたようです。ドサージュは1.5gと少なめです。
アルフレッドさんによると、砂地で豊かな日光浴びた典型的なスタイルということで、満足しているようです。
柑橘果実や青リンゴ、白い花にブリオッシュ、味わいにシャルドネの生き生きとしたリッチな酸が感じられる素晴らしいブラン・ド・ブランです。
今年は6千本を出荷し、そのうち、まず240本を先日、日本に出荷したとのこと。出荷は年2回行うので、トータルで500本が日本に送られるようです。

続いて、リューディ・シリーズの3本です。

2019 Les Voirmissa / レ・ヴォワミサ

50%ピノ・ムニエ、50%ピノ・ノワールのブレンド。ドサージュは、2g/l、デコルジュマンは、2025年6月。
2019年ヴィンテージは、熱すぎず、寒すぎず、バランスの取れた年だったとのこと。
まだ比較的シャープな酸に黒ブドウからのふくよかなフルーティーさと複雑さが共存しているキュベでした。
もう少し寝かせても良いが、酸味を出したいので今リリースしたとのこと。
メゾンの考え方としては、基本的にミレジメを合わせて出荷しているようです。

2018 Franc de Pieds / フラン・ド・ピエ

前述の自根の樹齢60~65年のブドウから。2018年は非常に熱く乾いた年で、ドサージュは0g/l。
熱すぎて砂地なので水を探して根が深くまで伸び、樹にストレスが加わったことは良かったが、ワインにするための酵母が不足(自然酵母を使用)して発酵に時間がかかったとのこと。
クリーミーなテーストで、よりブリオッシュやナッツ香が感じられます。
2018年ヴィンテージの生産は1500本でうち120本を日本に送ったとのこと。

2019 Les Moineaux / レ・モワノー

100%シャルドネのブラン・ド・ブラン。ドサージュは2g/lと控えめ。2019年の生産量は、2700本。もともとpHが低いが、ドサージュを多くしてもバランスが崩れるだけとのこと。MLFは自然に任せているが、今は気温が高いので勝手にMLFが起こる。MLFをしたくないが、止めるにはSO₂を加える必要があるが、それを避けたいとのこと。
タンクからの(白ワインでの)試飲では、少しエキゾティックな香ちを感じましたが、これは、すっきりとした香りで、酸や果実味のバランスが取れた味わいです。
ちなみに、2018年のレ・モワノーは、リリースを止めているとのこと。残糖が多く、ミニエールのスタイルには合わないと感じているようです。今後エボルーション?が起こるのを待っているとのこと。

最後は、長期熟成のミレジメ、シンビオーズです。

2016 Symbiose Millesime / シンビオーズ・ミレジメ

ピノ・ノワール50%、シャルドネ50%。10年寝かせてリリースするようです。
ブリオッシュにヘーゼルナッツの熟成香が加わる複雑な香り。これは、素晴らしい👍👍

テースティングの後半はチーズまで提供していただきました。エメンタールでしたが、アルフレッドさんは、パルミジャーノ・レッジャーノ、(熟成期間の長い)コンテやミモレットと合わせるのは好みのようです。

↓ちなみに、後日、家飲みで、Symbioseの2009年ヴィンテージ(日本で購入)を開けました。
17年の熟成を経たシンビオーズです。
アプリコット、ドライフルーツ、バターやトースト、ヘーゼルナッツやマッシュルームの香り。柔らかい酸とクリーミーなテクスチャー、素晴らしい熟成シャンパーニュでした。

チーズ(テト・デ・モワンヌ)とデーツと合わせまてみました。

なかなか飲む機会のない希少なミレジメを中心とする素晴らしいラインナップのテースティングでした。

16時のアポから30分ほど遅れた到着でしたが、畑の見学に始まり、カーヴでの瓶詰め前のワインの試飲、さらにテースティングと3時間を超える長い滞在となりました。フレデリック・ミニエールさんは、素晴らしいホスピタリティの持ち主で、質問には真摯に、時にはユーモアを交えて回答していただき、多くの学びと共に、兄弟のシャンパーニュ造りへの情熱が伝わってくる素晴らく有意義な訪問となりました。

今回は、3軒のメゾンを巡りましたが、RMならではの所有畑のテロワールを生かした栽培や醸造スタイルへのこだわりに、大手のNMとは違った面白さと魅力を感じることができました。

最後に、今回で3度目になりましたが、リクエストしたメゾンとの調整から、当日のアテンド、フランス語の通訳まで快く対応して頂いたランス在住のコシュンパ(兵頭)由理子さんに深く感謝いたします。

楽天市場でミニエールF&Rのシャンパーニュを探す

コシュンパ由理子さんのガイドツアー

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この記事を書いた人

1958年東京生まれです。
昨年、仕事をリタイアして大好きなブルゴーニュワインとグルメや旅行を楽しんでいます。
主な資格(Foods&Drinks):
JSA ワインエキスパートエクセレンス(2022)
JSA SAKE Dioploma(2018)
WSET Level3(2025)
CPA チーズプロフェッショナル(2017)
SSI 唎酒師(2018)
日本テキーラ協会 テキーラマエストロ(2017)

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