5月のブルゴーニュ・ドメーヌ訪問、最終日は南に足を延ばしてみました。まず、マコネのヴィレ・クレッセのシャン=マリー・シャラン(Jean-Marie Chaland)を訪問しました。日本では、ドメーヌ・サント・バルブ(Domaine Sainte Barbe)として知られています。
ボーヌからヴィレ・クレッセへ
ヴィレ・クレッセは、ボーヌから約45kmの位置にあり、車で高速道路(A6)を利用すれば、50分ほどですが、今回は、観光も兼ねて、トゥールニュ(Tournus)に立ち寄りました。トゥールニュには、ブルゴーニュ地方のロマネスク様式を見せるサン・フィリベール修道院教会(Abbaye Saint-Philibert de Tournus)があります。
鉄道の駅からも徒歩数分で行けるので、ボーヌに滞在して、ふらりと出かけるのも良いかと思います。



トゥールニュからは、30分ほどでヴィレ・クレッセ村に到着。実は、ここには、今回、ほかに訪れかったドメーヌがあります。

↓アンドレ・ボノーム。ヴィレ・クレッセのトップ・ドメーヌです。畑仕事で忙しいとのことで、残念ながら、訪問は叶いませんでした。とりあえず、ドメーヌを見たくて立ち寄りました。黄色い壁の目立つ建物でした。

ドメーヌの建物の前に広がる”Les Quarts”の畑です。道路から高い位置にあるので、全貌が見えませんが、個人的に大好きなワインです。

ドメーヌ・サント・バルブについて
ドメーヌ・サント・バルブは、現当主のジャン・マリー・シャラン氏が2001年に父のドメーヌであるドメーヌ・デ・シャゼルから独立する形で設立されました。古くは8世紀からぶどう栽培の歴史があるというヴィレ村に位置しています。元々はジャン・マリー・シャラン氏の祖父がブドウ畑を所有しており、その後1960年代に自社詰めを開始、現在に至ります。祖父はヴィレの協同組合長を務めていた人物。現在ドメーヌが所有している畑の面積は8.2ha、ヴィレ・クレッセを5.7ha、マコン・ヴィラージュを2.5haとなっています(生産量は年間4~5万本)
ジャン・マリー・シャラン氏が独立した2001年から急激に品質が向上し、高い注目を集めるようになりました。本来であれば父親のドメーヌ・デ・シャゼルを引き継ぐはずでしたが、自然栽培に興味があった彼は独自の考えでワイン造りをしたいと自身のドメーヌを創設。当初からビオディナミやビオロジックといった自然栽培を実践、2003年にはエコセール認証を取得するなど、マコネー地区の若手生産者におけるリーダー的存在になります。
(インポーターのmottoxさんの資料を引用)
ちなみに、「サント・バルブ」というドメーヌ名はヴィレの丘に建つ十字架がその名の由来となっているようです。
ジャン=マリーさんによると、消防関係の守護聖人になっているとのことです。

日本では、リアルワインガイド誌に、毎年取り上げられており、人気の高いドメーヌです。
↓最近は、マコン レクスプレッション・デュ・シャルドネ(Macon l’Expression du Chardonnay)という3千円前後のエントリーキュヴェが同誌の旨安大賞に選ばれ、結構人気のようです。何度か飲みましたが、綺麗な酸と透明感のあるピュアな果実味がなかなか魅力的なワインで、デイリーワインにもピッタリです。

カーブ見学
まず、ヴィレ・クレッセの畑の特徴について
ヴィレの畑は全て東向きで、西側に山があるので、雨雲がブロックされ、さらに寒い風も山でブロックされる。東向き斜面は、陽が良く当たり、午後になると、日陰になり、寒暖差がしっかり出る。ソーヌ川からくる寒気で霜が発生することもたまにあるが、山の部分は守られている格好とのこと。
クレッセの方は、山が南の方に低いので、もう少し緩やかな斜面になるようです。
↓ドメーヌのカーヴです。
発酵は、ステンレス、ホーロ、木樽を使い分けているとのこと。


フードルもありました(結構お気に入りのようです)。アルザスでは伝統的に使用されていますが、ブルゴーニュではちょっと珍しいかと思います。

細長いカーヴに熟成用のバリックが並んでいます。それほど広くはないですが、他にもうひとつカーブがあるようです。湿度78%に保たれており、これは、下の土が湿っているのに加え、レンガの壁、さらに天井には植物性の素材が使われており、加湿器等は使用しなくてもこの湿度が保たれるとのこと。

樽には、各キュヴェの名前が書かれていますが、これは必ずしもワインのキュベ名でなく、ブレンド用の区画もあります。例えば、右下のL’Elitは、現在、単独のキュベとしてはリリースされていませんが、上述のマコン・レクスプレッションのアッサンブラージュ用として使われているようです。この村名格のキュベについては、最近、よりフレッシュでミネラリーに造りたいと思って、結構上(標高の高い)方の畑のブドウを持ってくることが多いとのこと。
お気に入りの樽は、トゥールーズの会社(La Selmer?)の樽で、使ってみると、他の会社のものと違い、木自体に香りがあって、とても繊細な樽とのこと。

2種類のキュヴェについて、2025年ヴィンテージを樽からの試飲をさせてくれました。ペリエールともうひとつ(失念)、ブレンドに使われているキュヴェだったと思います。当然ながらやや濁りもあり、僅かにガスが残っていますが、MLFは終わっているので、酸は落ち着いています。一方は芳醇な果樹味が協調されており、他方は、ミネラルを強く感じます。ブレンドの妙で、バランスの取れたピュアなワインを造りだしているよです。
テースティング
最終的には、白6種、赤1種とマールの8本を試飲できました。
2023 Viré-Clessé Chazelles Chazelles
2024 Viré-Clessé Chazelles Vieilles Vignes
2022 Viré-Clessé Thurissey
2023 Viré-Clessé La Perriere
2023 Viré-Clessé La Forêtilles
2023 Viré-Clessé Clos du Duc
2023 Mâcon‑Burgy Terres Rouges
2011 Marc de Bourgogne

↓ヴィレ村の区画地図で。、赤丸で囲まれた中の緑色の区画が、所有畑です。

2023 Viré-Clessé Chazelles
ヴィレ村の南端、クレッセに近い区画ですが、あまり聞いたことがないので、日本には入っていないようです。
レモン、リンゴや桃、白い花のアロマにややさらっとしたミネラル。フレッシュでやや軽やかさを感じる柔らかい口当たり。何かの要素が突出しているわけでなく各要素のバランスが取れている感じ。

2024 Viré-Clessé Vieilles Vignes
ヴィレ村の北の古樹と南(シャゼルか?)の2区画のブレンド。唯一の2024年ヴィンテージです。2024年ヴィンテージは、コート・ドールでは、甚大な被害(遅霜と病気の蔓延)で大幅な収穫減(マイナス70%~90%)になったようですが、ヴィレ・クレッセについては、霜の害が少なく、平均30hL/ha(普段は50hL/ha)、すなわち50%強程度だったようです。

冷涼な年らしく、酸が少し高めで、くっきりとしたミネラルが感じられるが、やや軽い印象でしたが、ジャン=マリーさんによると、生産量が少ない年でいつもより凝縮感が強く、かつフレッシュでミネラルを感じるので軽快に感じるかもしれないとのこと。意外にも、長期保存にも向いているとのこと。こちらも日本未輸入キュヴェです。
2022 Viré-Clessé Thurissey
唯一の2022年ヴィンテージです。樹齢90年以上の古樹。

他のキュベに比べ、香りはやや落ち着いている印象。非常に暑い年だったこともあり、洋梨、白桃やアプリコットのような果実の厚さを感じますが、酸はしっかりと感じられます。ミネラルは割と柔らか。各要素がこなれており、まろやかな口当たり。
ドメーヌの、フラッグシップ的なワインで、過去何回か購入して飲んでいますが、常に果実の凝縮度を強く感じるワインという印象でした。果実にボリュームがあるので、若くして飲むと、ちょっとジュース的ですが、酸もしっかりしているので。おそらく、10年ほど長期熟成させると面白いワインかと思います。
2023 Viré-Clessé La Perriere
こちらは、新たに開けてくれたボトルです。
La Perriereは、村のやや南の標高がやや低い位置にある畑。

黄桃やアプリコット、南国フルーツのような少しエキゾティックで華やかな香り、酸はやや控えめで、ブドウの完熟が感じられ、ミネラルもそこそこ強く感じます。南の方の土壌は、表面が厚く赤っぽい土なので果実が完熟した香りがワインに出やすいとのこと。
時間と共に、少し軽やかに、フローラルな感じに変わってくる。味わいも柔らくなり、後味にミネラルの塩気が感じられ、余韻も長い。美味しい👍
2023 Viré-Clessé La Forêtilles
ジャン=マリーの表現は、アカシアの蜂蜜、なめらかでエネルギーを感じるワイン。ちょっと燻製香も感じられました。こちらも開けたてだったので、還元香かと思いましたが、この香りは、テロワール由来のこと。
前日食べたサーモンステーキに合いそう。
ジャン=マリーさんによると、熟成させた方が好みて、今飲むなら、2014年、2017年、2021年、2024年(全部寒い年)。特に熟成に向いているのは、チュリセとクロ・デ・デュックとのこと。これも素晴らしい👍
2023 Viré-Clessé Clos du Ducs
ヴィレ村の南端に位置する丘の上の畑。標高が比較的高く、泥灰土の土壌。がきいておりエレガントで緻密な感じ、軽やかで風通しが良い感じ。
マルヌと呼ばれる柔らかいブルーがかった石灰岩。チュリセとクロ・デ・デュックは新樽100%(他は50%)
フードルを含め、大小色々な樽を使っているようです。小さい樽は、空気を良く通すので、土壌が石灰とか固い感じのテロワールだと、すごくワインを成長させてくれるとのこと。
森の木の樹脂の少し変わった香り。エレガントで緻密な感じ。酸や果実の凝縮感もあり、長期熟成に向きそう。
2023 Macon-Burgy Terres Rouges
ガメイの赤ワインです。
Chazellesの南。山を越えると花崗岩の土壌だが、ここは石灰岩土壌。フードル(大樽)で2年熟成。
このワインは、購入して自宅でじっくりと味わいました(その時の感想を含みます)

中程度のガーネットの外観。フランボワーズやレッドチェリーの赤い果実のアロマ、シナモン、スーボア、土、やや冷涼感も感じます。味わいは、いきいきとした綺麗な酸とピュアーな果実味、タンニンは控えめで滑らか。石灰からのミネラルも。初日抜栓直後は、少し微発泡的な刺激がありましたが、2日目は消えていました。キャンディ香やジャムっぽさは殆ど感じず、エレガントなガメイ。これは美味しい👍
残念ながら、このワインは日本には入っていません。ガメイは、確かに、日本では、クリュー・ボジョレー以外人気がありませんが、こんなエレガントなガメイならば、ありかと思います。ちなみに、ドメーヌでの価格は、僅か17€でした。
2011 Marc de Bourgogne
90%白ブドウの果皮、10%黒ブドウの果皮。
うっとりする香り。ドライフルーツやナッツ、ハーブやカカオ、バニラ。(経験値が少ないので比較はできませんが)15年の熟成ということで、とにかく素晴らしい芳香です。
今回は、試飲できませんでしたが、メソッド・トラディショナルによるスパークリング(ヴァン・ムース)も素晴らしいようです。こちらは、日本にも入っているようです。
最後に日本への輸出量について尋ねたところ、年間生産量4~5万のうち6千本近く(10%以上)が日本向けとのこと。
現在、日本市場では、2022年と2023年が流通していますが、これについては、2022年は果実味がギュっと凝縮していて、長期熟成に向く、2023年は、バランスがとれていてやさしい、早く飲むならこちらとのこと。
↓ジャン=マリーさんとカーヴにて。
サービス精神旺盛なとても気さくな方でした。
この日は金曜午前指定での訪問でしたが、実は、午後からは、3日間家族でバケーションに出かけるようです。奥さんの希望は南仏の海、ジャン=マリーさんはアルボアの山に行きたいけど、高速に乗ってから考える笑とのこと。
実は、数日前にアルボアの山に行ったので、ここ最近の暑さを考えると、山がお薦めですと伝えておきました(笑)。

ドメーヌの敷地には、こんな巨木が。黄色い花も咲いていました。
シナノキ(ボダイジュ?)かと思います。

コート・ド・ボーヌの白ワインが高騰する中で、マコネのワインは、まだまだ手の届く範囲なので、普段飲みには、結構重宝します。特にヴィレ・クレッセは、アンドレ・ボノムや今回のサント・バルブのワインを通してコスパの高さを実感しています。
これまでは、ヴィレ・クレッセを一括りで一生産地として捉えていましたが、今回、細かなテロワールによって、酸やミネラル、果実味に差が出ることことを実感しました。
ヴィレ・クレッセのテロワールを知るうえで、とても有意義な訪問でした。
了

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