5月22日、アルザスのドメーヌ・バルメス・ブシェール(Domaine Barmès‑Buecher)を訪問しました。まだ歴史の浅いドメーヌですが、2022年にRVF誌の3つ星を獲得し、一躍注目を浴びたアルザスのライジングスターです。
ドメーヌは、コールマールから南西に3~4kmのヴェトルスハイム(Wettolsheim)村にあります。

バルメス・ブシェールの歴史
バルメス・ブシェールの歴史は、1985年フランソワ・バルメとジヌヴィエーヴ・ブシェールが結構して、それぞれの家が代々所有していた畑を統合したことから始まります。この両家は、隣どおしで、両家のカーヴを地下にワインが通れる道を作って、2つのドメーヌを統合したとのこと。
その後、フランソワが2011年に(交通事故で)急逝しますが、長男のマキシムと長女のソフィーがドメーヌを継いで、ワインを現代的なスタイルに進化させ、2022年には、「Les Meilleurs Vins de France」誌の3つ星を獲得して一躍アルザスのライジングスターとして注目を浴びました。
↓テースティングルームに母親のジヌヴィエーヴさん(中央)と、マキシムさんと、ソフィーさんの写真が掲げられていました。マキシムさんが、栽培と醸造を担当し、ソフィーさんが販売を担当しているようです。
ちなみに、マキシムさんの奥さんは日本人とのこと。

ドメーヌの所有畑について
ドメーヌの所有畑は、全部で18ha。全て元詰めで、買いブドウは使用していないとのこと。
↓テースティングルームに掲げられていた所有畑の地図です。畑は、ドメーヌのあるヴェトルスハイムの西側、ヴォージュ山脈の麓の丘陵地帯に集中しています。

アルザスの土壌は、多様な土壌が混在していることで知られていますが、まさにこの辺りも、花崗岩・石灰粘土・砂岩といった多様な土壌が集中しています。
所有畑は、プルミエ・クリュのローゼンベルグ(Rosenberg)がメインで、グランクリュは、シュタングルブラー(Steingrubler)、ヘングスト(Hengst)、フェルシグベルグ(Pfersigberg)の3つになります。
シュタングルブラーは花崗岩+石灰質、ヘングストは石灰粘土質、フェルシグベルグは石灰+砂岩土壌です。
↓ドメーヌ訪問後に訪れたヘングストのバルメス・ブシェールの所有区画です。

↓ヘングストの畑は、コルマールの南西、エギスハイムの北にあたります。

↓確かに粘土に白っぽい石灰が混ざっていることがわかります。

↓こちらは、グランクリュのシュタングルブラー(Steingrubler)です。

↓こちらは、ドメーヌのあるヴェトルスハイム村のすぐ近くに位置しています。

今回、特に言及はありませんでしたが、各畑は、ビオディナミ農法を導入しており、ビオディヴァン(BIODYVIN)認証も既に取得しているようです。
輸出先は、意外にもトップはカナダ(フランス語圏です)で、ケベックで有名なようです。日本では、豊通食料が輸入しています。
テースティング
最近(2022年)リニューアルされた非常にモダンなテースティングルームです。
入り口から入ると斬新な花のオブジェクトと床のガラス越しにディスプレイされたワインが、目に入ります。


テースティングのスタートは、通常はクレマンのようなのですが、実は前日、コールマールのアパートで飲んでいました(日本から持ってきたボトルです)
Cremant d’Alsace Brut Nature
ドメーヌでは、2022年を提供していましたが、こちらは、現在日本でリリースされている2021年ヴィンテージです。これは、過去日本でも飲んでいますが、とても良くできたクレマン・ダルザスです。
爽やかな柑橘果実に青リンゴ、ほのかにブリオッシュが香ります。ピノ・グリ、ピノ・オーセロワ、シャルドネ、ピノ・ブランという変わったブレンドですが、ノン・ドサージュで味わいは完全にドライ、中程度の余韻です。食中酒にぴったりで、チーズはラングル、シュリンプ・カクテル、そして旬のホワイトアスパラとあわせました。

こちらは、テースティングルームにディスプレイされていた最新の2022年デュスプレイのクレマン・ダルザスです。
エチケットとキャップシールのデザインが変わっています。日本にも入ってくるようで、楽しみです。

テースティングに戻ります。
最初は、ミュスカを選択しました。
2025 Muscat Ottonel
以前は、あまり興味のなかった品種ですが、2年前にヴァインバックWeinbachのミュスカを飲んで、「こんな辛口のミュスカがあるんだ」と感銘を受けたことから断然興味を持ちました。
ミュスカ・オットネル種は、ロワール地方が原産と言われており、シャスラとマスカットの一種との交配されたものと言われています。
↓写真を撮り忘れたので、インポータのページから借用しました。

判りやすいマスカット品種特有の華やかな香り、味わいは、爽やかな酸、フルーティな口当たり。ただ期待したほどの辛口ではなく、やや甘みを感じます。
ちなみに、このミュスカと(スタンダードの)ゲヴェルツトラミネールのみステンレスタンクで、他は樽熟(オーバルの大樽と思われます)とのこと。
2024 7Grains
名前の通り、アルザスの7つの白品種をブレンドしたワインです。
シルヴァーナ以外の品種とのことで、2024年ヴィンテージは、リースリング、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・グリ、ピノ・オーセロワ、ピノ・ブラン、ピノ・グリ、ピノ・ノワール、ミュスカのようです。年によってセパージュを変えており、シャスラが使われることもあるようです。
ちょっと面白いワインだったので、購入して宿で食事と合わせてじっくりと味わいました。

中程度のレモンイエローの外観。熟した柑橘果実に黄桃や洋梨、ライチのトロピカルな香りが混ざります。2024年ヴィンテージということで、酸が高いと思われましたが、それほどではなく意外に柔らかい印象でやや甘やかなアタック。熟したリンゴや僅かにスモーキーなニュアンスや白胡椒も感じます。時間と共に色々な香りが顕れ、なかなか興味深いブレンドワインです。
今回は、試飲しませんでしたが、ドメーヌでは、フィリグラーヌ(Filigrane)というフィールドブレンド(混植混醸)のワインもリリースしています。こちらは、ピノ・ブラン主体でシルヴァーナを混醸しているようです。
こちらも少し前に日本で飲みましたが、とても魅力的なワインです。

2024 SAND
Sandは、ヴォージュ山脈の東側斜面に広がる丘陵地帯でドメーヌのメインのローゼンベルグの西側の砂質が混ざるhik軽い土壌の畑です。

標高は250m~350mほどで、さほど高くはありませんが、森に接しており、冷気が流れ込むため、日較差が大きく、酸がしっかり残るようです。Sandの中で石垣に囲われているClos Sandという区画からは、リースリングが産出されています。
リースリングのCLOS SANDには、表ラベルにRIESLINGと品種が入っていますが、何故か同じデザインのラベルのSANDには、品種名が入っていません。
この理由については、「口コミが良くなかったので、表ラベルには(品種名を)入れなかった。実際に飲んでみた後に裏レベルを見て、”これがピノ・グリか?美味しい” と改めて気付いてもらいたい」という意図があるとのこと。
ピノ・ブランは、大きな房で、粒がいっぱいできるため品質が低下しがちなので、技術的に収穫量を減らして品質を保つ工夫をしている。さらに(砂質の土壌なので)根は8mくらい水を探して下の石灰触れることでミネラルを得る。さらに花崗岩に触れ味が変わるとのこと。

一般には、やや控えめな洋梨や青リンゴ、白い花の香り、柔らかい酸と控えめな果実味で穏やかな飲み口が特徴で、食事、特に和食との相性も良いと言われる品種ですが、このSANDは、レモン・ライムの柑橘果実の香りが加わり、酸や果実味にメリハリのある味わいで、なかなか素晴らしいピノ・ブランです👍ただ、さすがに、リースリングほど酸は尖っておらず、丸みも感じるので、幅広い料理に合わせられそうです。テースティングで気に入って購入しましたが、未だ飲んではいません。楽しみな1本です。
↓こちらは、日本で飲んだCLOS SAND RIESLINGです。ヴィンテージは、2023年ですが、非常にシャープな酸が感じられるリースリングでした。まもなく日本にも2024年が入ってくると思います。今回は、試飲していませんが、おそらく、ヴィンテージの特性から、酸が更にシャープに感じられるリースリングではないかと思います。

続いて、リースリングの試飲です。
主力のリースリングは、前述のSANDを含め、スタンダードなものからグランクリュまで多数のキュヴェをリリースしていますが、メインは、ローゼンベルグのリースリングと2つのグランクリュ、シュタングルブラーとヘングストのようです。
↓2つのグランクリュとLEIMENTAL(リュー・ディ名ではなく複数区画のブレンドと思われます)

2024 HENGUST RIESLING FRAND CRU
ヘングストは、粘土石灰質の土壌で、骨格感を持ちながらリッチな酸とミネラルを特徴とするリースリングワインを算出すると知られているグラン・クリュです。
1年半とやや長めの樽熟成を経ているようです。2023年ヴィンテージを期待したのですが、売り切れてしまったようで、2024年のみ試飲ができました。
華やかな柑橘果実に白い花の香り、くっきりとした高い酸が感じられますが、少し丸みも感じられます。
2024年ヴィンテージは、寒い年だったので、酸とミネラルは強く感じられますが、より、ふくよかなテーストを好むのであれば、2023年を勧めるとのこと。
熟成中の2025年については、それほど寒い年ではないが、2023年ほど太陽を浴びた年でもないとのことで、2024年ほど酸は強くない。おそらく、クラシカルな味わいのスタイルになるのではないかと思います。
現在、樽熟成中で8月に瓶詰め、9月頃に日本に入ってくるようです。
シュタングルブラーは試飲していないので、何とも言えませんが、花崗岩の痩せた土壌なので、スピード感のある酸や鋭いミネラル感のあるシャープな味わいかと想像できます。
ついで、ゲヴェルツトラミネールです。
シュタングルブラー、フェルシグベルグ、ヘングストの3つのグラン・クリュからも生産されています。

テースティングは。フェルシグベルグとヘングストです。
2023 PFESIGNERG GEWURZTRAMINER GRAND CRU
2023 HENGST GEWURZTRAMINER GRAND CRU
こちらは、品種特性もありますが、2023年ということで、酸はそれほど強くありません。
白桃やライチ、トロピカルフルーツのの典型的な華やかな香り。酸はそれなりに高いので、いずれも甘さは、それほど強くは、感じられません。フェッシグベルぐの方が甘みが強いと思われましたが、実際には、フェッシベルグとシュタングルブラーが残糖9g/、ヘングストが16g/llと数値上の糖度はヘングストの方が甘いようです。実際ヘングストの方が、色調はやや濃いように思えます。体感的な違いは、酸も影響しているのかもしれません。
分類的には、オフドライという感じです。

2022 MUE
ミューは、ドメーヌ唯一のオレンジワインです。ゲヴェルツトラミネール60%、ピノ・グリ40%。
やや長めの2週間のマセラシオン。
↓右側です・

ロゼと見間違えるような濃いオレンジ色の外観。アプリコットや薔薇の花や甘苦いスパイスの香り、リッチで複雑なテースト、タンニン由来のオレンジピールの苦みの余韻。面白いキュヴェです。
最後は、今回楽しみにしていたピノ・ノワールのテースティングです。
2023年を期待していたのですが、残念ながら売り切れのようで、かつ2024年のヘングストのグランクリュは、試飲ができないとのことでした。先に訪問したアルベールマンと同じで、購入はできるとのことでした。
2024 COTEAUX CAKCAIRES PINOT NOIR
ドメーヌのピノ・ノワールのスタンダード・キュヴェです。といっても、これ以外は、ヘングストのみです。

淡いラズベリーレッド。先に飲んだ、アルベールマンのスタンダード・キュヴェと同じような淡い外観です。
赤系果実の香りはそれなりに高く、エレガントな味わいですが、さすがに凝縮感・厚みは感じられません。
やはり冷涼な2024年の気候を反映したピノ・ノワールのようです。
試飲できなかったので、ちょっと迷いましたが、期待を込めて、2024年のヘングスト・グランクリュを購入しました。
バルメス・ブシェール、テースティングをとおして、期待通りにモダンでスタイリッシュなアルザスの造り手であることを改めて認識しました。アルザスの多様なテロワールを明確に反映したワインは全体的に辛口指向で、好みにも合致しています。
生き生きとした酸をもつ透明感のあるリースリングは魅力的ですが、ピノ・ブランのSANDは印象的な1本でした。
ブレンドワインやオレンジワインもなかなか印個性的なワインでした。
決して安いワインではありませんが、今後追いかけてみたいドメーヌだと思います。
了

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