2月末、ある仕事の関係で、冬の瀬戸内海を訪れました。飛行機で高松から入り、直島と豊島を訪れました。あまり自由時間が取れない中で、瀬戸内海の素晴らしい多島美とモダンアート、そして、美味しい料理を愉しみました。
高さ150mの高松シンボルタワー(高松サンポート)から見る高松港です。
このタワーの最上部にあるフレンチレストランからの景色ですが、15時~17時の間は、食事しなくても、展望スペースとして開放されているようです。
ここから各島に行く船が出ます。フェリーや高速船に加えて、海上タクシーと呼ばれる小型の船舶がこの港をひっきりなしに出入りしています。なかなか目にする機会のない面白い光景です。
直島へは、フェリーを利用しました。閑散期とコロナウィルスの影響のせいか、旅行客はまばらです。
フェリー船と島を走るバスが、この島の宮浦港にある草間彌生の「赤かぼちゃ」のコラボデザインになっています。
草間彌生「赤かぼちゃ」。「太陽の赤い光を宇宙の果てまで探してきて、それは直島の海の中で赤カボチャに変身してしまった」と作者自身が語った作品です。
この島で最も有名なアート作品かと思います。
かぼちゃの中に入ることができます。
▼内部から見ると、こんな感じです。
ポルトガルの作家、ジョゼ・デ・ギマランイスの「BUNRAKU PUPPET」をいうアート作品です。直島の「女文楽」がモチーフです。自電車置き場の横に何気なしに建っています。空いた穴のチューブが夜光るようです。
「直島パヴィリオン」。藤本壮介という建築家が設計したようです。不思議な形をしていますが、赤かぼちゃ同様、中に入れます。
瀬戸内海は魚の宝庫ですが、ここはヒラメが有名のようです。港のすぐ前にある「なおしまヒラメ」という食堂です。
一番人気のヒラメの唐揚げを注文しました。連れは、皆、ヒラメの刺身をたのんでいました。どちらもお奨めです。
直島での仕事の関係もあり、直島唯一の高級ホテル「ベネッセハウス」に宿泊しました。ベネッセハウスは、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトに、1992年に美術館とホテルが一体となった施設として建てられています。世界的な建築家、安藤忠雄の設計によるものです。美術館内以外に、ホテルの内外に様々なモダンアート作品が点在しています。ちなみにこのホテルの宿泊者、外国人が7割とのこと。特に白人の比率が多いようです。
内部は、コンクリート打ちっぱなしで、建物と建物の間が通路で結ばれています。途中一部、外に出るような通路もあります。
▼これも通路に造られたアート作品です。
今回は、最も安価なパーク棟に泊まりました。パインウッドの明るい木材が使われているツインの部屋から眺める景色です。パークサイドといっても、奥に瀬戸内海の美しい島々を臨むことができます。
瀬戸内海を臨む広場に、モダンアートが点在しています。
▼ニキ・ド・サンファール「腰掛」
▼ニキ・ド・サンファール「らくだ」
▼ニキ・ド・サンファール「象」
▼ニキ・ド・サンファール「猫」
▼カレル・アペル「かえると猫」
▼ニキ・ド・サンファール「会話」
▼草間彌生「南瓜」。黄かぼちゃです。
赤かぼちゃと異なり、中には入れません。
▼ベネッセハウスのテラスから見る瀬戸内海です。まさに非日常的な美しい光景です。
正面の対岸に見えるのが、高松の街並みです。
モダンアートも良いですが、最も気に入ったのが、このテラスから見える風景です。
▼ベネッセハウスの美術館屋上から見る夕陽です。
ここにも屋外アートが....
夕食は、ミュージーアムにある日本料理レストラン「一扇」です。
▼季節の前菜盛り合わせ
▼虎魚(こち)の薄造り。
過去食べた記憶がありません。適度な歯ごたえがあり、美味しい白身です。
▼赤貝 分葱 辛子味噌掛け
▼蓮根饅頭 芹 湯葉餡
▼国産牛サーロイン鉄板焼き サラダ
ワインは、和食にあわせ日本のワインをセレクト。アルプスワインのMusée du Vin塩尻メルローです。この長野県原産地呼称(GI)ワイン、リゾートホテルで最近時々見かけるワインです。
果実味の濃縮感、酸とタンニンのバランスが上手くとれています。安いワインながら、適度な樽香もあり、昔のジャミーな国産安ワインとは一線を画しています。
ちなみに、魚介類には、冷酒をあわせました。「澤屋まつもと」の純米吟醸です。この純吟、少し発泡が感じられるので、泡替わりにもなると思い選択しました。
▼舌平目煮付け
場所柄、もっとアートな創作和食が出てくるかと想像しましたが、意外に普通でした(笑)。でも美味しかったです。
翌日は、仕事で直島町役場を訪れました。
建築家の石井和紘氏の設計による一連の「直島建築」作品群のひとつ。 安土桃山時代の名建築「飛雲閣」を参考に設計されている。直島文教地区の小中学校、幼稚園の設計を手掛けたのが最初のようです。
役場を出て、時間があったので、直島の中心部、本村のまちを歩きました。
まちの中には、民家を利用したアート作品等が点在しています。
民家の前にこんなオブジェが並んでいます。
本村アーカイブ&ラウンジというところでチケットを購入します。
これは、護王神社。敷き詰められた白い石と透明の階段(地下にもあります)がアートになっています。
これは、「はいしゃ」というアート作品です。元歯医者の建物だったようです。
残念ながら、内部は撮影禁止ですが、この家の中には、なんと巨大な自由の女神像があります。
写真はありませんが、本村まち歩きの中では、「南寺」というスポットが非常に印象的でした。
安藤忠雄氏設計の真っ暗闇の建物の中で、目が徐々に慣れてきて、僅かな光が造り出す光景を体験できる不思議な空間のアート作品です。
▼ベネッセが所有する安藤忠雄氏設計の地中美術館(2004年設立)です。瀬戸内の美しい景観を損なわないよう建物の大半が地下に埋設されています。好きなクロ―ド・モネの睡蓮が展示されています。他のジェームズ・タレル、ウォルター・デ・マリアの作品の展示があります。展示点数そのものは多くありませんが、どれも印象的なアート作品です。
やはり内部は撮影禁止です。下の建物は、美術館内の小さなカフェレストランです。
ここからの景色もなかなかのものです。
下に僅かに見えるのは、ヘリポートです。ベネッセの福武總一郎名誉顧問の専用のようです。
ここで軽い昼食をとりました。チキンの照焼きライスバーガー&レモンサイダーです。
なんと焼海苔が付いています。
ちょっと違和感はありますが、外国人には受けるかと思います。
昼過ぎに、直島を離れて、豊島に向かいました。小型の高速艇です。
直島の宮浦港から20分ちょっとで到着です。ただ大型のフェリー船と異なり、結構な騒音が出ます。
やや観光地化している直島の港と異なり、小さな港です。閑散期で天候も良くなかったせいか、ちょっと寂しい雰囲気もあります。
▼島についたのは、夕方近かったので、美術館等は、クローズする時間でした。唯一、入れたのは、閉館時間間近の「豊島横尾館」です。
名前の通り、有名なグラフィックデザイナーの横尾忠則のアート作品が展示されています。ここも、残念ながら内部撮影禁止でした。
トイレまでアート作品になっています。中は、銀色のミラーが張り付けてあります。
島も未だ寒いですが、こんな光景も。梅の花でしょうか?
電動バイク、電動サイクルのレンタルを行っている「瀬戸内カレン」です。
芸術祭やハイシーズンは予約で埋まるようですが、流石にこの時期は閑散としています。
宿泊は、家浦港の民宿の「田村さん家」です。
野菜から魚まで全て地元産のようです。前泊のベネッセハウスとは全然違いますが、これはこれでたいへん美味しい。これも地元の民宿ならではの楽しみです。
帰宅日となる翌朝、岡山の宇野港にフェリーで向かいます。
今では、大変美しい瀬戸内海の島々に魅かれて多くの観光客が内外から訪れるこの地ですが、この航路を通ると、ここの負の歴史を目にすることになります。
▼豊島の産廃処理場跡地です。 1970年代後半からある産廃業者が豊島に産廃の不法投棄を行い大きな公害問題を引き起こしました。長い裁判を経て、2000年から国費による現状回復を行い、現状はほぼ処理は終わっているようです。
▼豊島の産廃処理を行っているのが、直島にあるこの工場です。結果的に直島への経済効果を生み出すことになったようです。
このようにちょっと複雑な背景をもつ2つの島ですが、ほぼ現状回復され、美しい自然を取り戻すとともに、アートの島として新たな魅力を生み出しています。2010年より、3年に一度開催される瀬戸内芸術祭では、多くの外国人が訪れています。
更に、昨年、米NYタイムズ誌で、「2019年に行くべき52ヶ所」の第7位に選ばれたことで、人気に火が付いています。四国を訪れる外国人は、台湾を筆頭にアジアからが多いのですが、直島や豊島は、アメリカやヨーロッパからの観光客が目立つようです。
最後は、岡山の宇野港を経由して、広島県の尾道市にある「せとうちSEAPLANES」に寄りました。
https://setouchi-seaplanes.com/
セスナにフロートが付いた水陸両用機でせとうちの遊覧観光を行っている会社です。あいにくの天候で、残念ながら、この日は遊覧飛行はできませんでした。
▼近くのマリーナです。この近くから水上セスナが飛び立つようです。
▼併設のカフェのラテアート。天気が良ければ、こんな感じに海上を離陸し、瀬戸内の素晴らしい多島美を眺められるようです。
今回は、仕事が目的だった為、その合間にアート作品や美しい瀬戸内の自然を愉しむといった感じでしたが、その魅力を十分感じとることができました。
直島のベネッセハウスと豊島の民宿の組み合わせの宿泊体験も、なかなか経験できない面白さがありました。
しかり、やはり、次に来るときは、観光でゆっくりと島を周りたいと思っています。ゆったりとした時間を楽しむのが、やはりこの地での正統な過ごし方のようです。
(了)