バッカスのささやき

ワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒との出会いと趣味のブルーベリー栽培を中心に日常を綴ります。

ドメーヌ・ラルロ 2010年&2012年

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1987年に保険会社のアクサ・ミレジム社がジュール・べランのネゴシアンを買収してドメーヌ・ラルロをスタートしています。30年の間に、このドメーヌは、醸造責任者が4人変わっています。初代醸造責任者が働いていたデュジャックの造りを継承していると言われていますが、スタイルはかなり異なると思います。ただ、継承している全房発酵は、ここのワインの性格を左右している大きな要素になっているように感じています。

ドメーヌで設立時の初代醸造責任者はデュジャックで働いていたジャン・ピエール・ド・スメ氏です。デュジャックの造るワインとは方向性がやや異なり、樽香や濃厚な抽出は抑えて、どちらといえばエレガント路線をとっている印象です。
ただ、全房発酵(ブドウの房と枝をつなぐ果梗(茎)を含めて発酵すること)の方針は引き継がれているようです。2代目は、スメ氏のもとで修業を積んだオリヴィエ・ルリッシュ氏です。オリヴィエは、2011年に自身のワイナリーを設立に伴いラルロを去り、その後、フレデリック・マニャンで修業をしてきたジャック・デヴォージュ氏がその跡を継いでいます。2015年にデヴォージュ氏は、クロ・ド・タールに引き抜かれ、2015年より女性醸造家ジェラルディーヌ・ゴドー氏が醸造責任者になり、今に至っています。

ドメーヌ・ラルロのドメーヌは、ニュイ・サン・ジョルジュ村に隣接するプレモー・プリセ村に拠を構えており、ニュイサンジョルジュを中心に14haほどの畑を所有しています。

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このドメーヌのフラッグシップは、ロマネ・サン・ヴィヴァンですが、代表的な畑は、ニュイ・サン・ジョルジュの2つのモノポール、クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュ(Clos des Forêts Saint Georges)とクロ・ド・ラルロ(Clos de L’Arlot)かと思います。前者は、7.2haと同社が持つ畑の半分以上の面積を占めます。後者は、白ワインも産出しています。

ラルロのワインは、主に2代目のオリヴィエ氏の2002年頃から飲んでいます。決して濃厚なタイプではなく、どちらかというとエレガントで香り高いワインですが、1点気になっているのが、年によって青っぽい苦みを強く感じることです。初代から、デュジャック譲りの全房発酵は、ワインに複雑さを与えますが、反面、茎からの苦みが出てしまうデメリットがあります。ブドウの出来の良し悪しやテロワールにより、優秀な生産者は、全房発酵の比率を変えているようですが、ここに限らず、時に全房のデメリットが出ていると思われるワインに出くわすことがあります。

最近飲んだ醸造責任者の異なる2本、ヴォーヌ・ロマネ・1er Cru・スショ2010年とニュイ・サン・ジョルジュ・1er Cru・クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュ2012年です。比較は同じ銘柄で行うべきかと思いますが、どちらも生産者のスタイルを強く反映しており、同じ自宅セラー内にある2本で比べてみました。

まず、ヴォーヌ・ロマネ・1er Cru・スショ2010年です。

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縁に少しレンガ色が入るルビーカラー。ラズベリー、甘草、皮、少しタバコっぽい香り。僅かに土っぽさは感じるものの、腐葉土的なニュアンスではない。スショの特徴かスパイシー感も感じるが甘露さはあまり感じません。やはり、中盤からフィニッシュまで、強めの苦みを感じます。全体的にヴォーヌ・ロマネっぽくありません。実は、良年の2009年と2010年のNSGの1erCruやこのスショは、何回か飲んでいます。いずれもやや過度の苦みを感じていますが、果実味や香り豊かで甘みを感じるワインも多かったので、さほどは気にならないこともありましたが、今回のボトルは、果実味がやや痩せており(閉じているのか、少し落ち始めているのかは不明)余計に茎の青っぽさや苦いタンニンが大きなウェイトを占めているように感じました。苦みは全房発酵からくるものと思われますが、最近多くの生産者が、既に全房発酵を取り入れている中でも、一段と苦みが感じられるのは、ワインの酒質や醸造の違い等も関わっているのではないかと思います。リアルワインガイド誌でも2つのヴィンテージのラルロは、絶賛されており、色々な評価を見ても苦みについては「良質な」とか「上品な」等々の表現が使われており、あまりネガティブにはとらえられていないようなので、個人的に合わないだけなのかもしれませんが....

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次に約2週間後に飲んだニュイ・サン・ジョルジュ・1er Cru・クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュ2012年です。醸造責任者は、2011年からオリヴィエからジャック・デヴォージュ氏にバトンタッチしていますので、この2012年は、ジャック・デヴォージュによるものです。

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僅かに紫が残るやや濃いめのルビー。ラズベリーやイチゴ、アメリカンチェリー、甘草、タバコのニュアンス。前銘柄にない甘い香り、フィニッシュに苦みを伴うが、明らかに前世代の苦みとは異なる。酸も伸びやかで、甘み、スパイス感とバランスとれている印象。未だ腐葉土的な香りは感じなく、若々しさも残しているが、ニュイ・サン・ジョルジュらしい土っぽさも。果実味も豊かですが、未だタンニンの裏にかくてている印象。数年たつと更に良くなると思われます。

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チーズは、スイスの表面をピノ・ノワールで磨いたハードチーズ、ヴァリー・ルージュが、良く合います。

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決して嫌いなタイプの造り手ではないのですが、オリヴィエ時代のワインに感じられた強めの苦みはやはり苦手です。最近はブドウの出来(酸の多少等)により、全房の比率を変えており、2017年は20%程度のようです。

高騰著しいブルゴーニュにあって、(ロマネ・サン・ヴィヴァン以外は)比較的、価格上昇は抑えられている生産者のひとつであり、毎年何本か購入しています。

オリヴィエ時代のワインも未だセラーには残っており、もう少し経年によりどう変わるかを見てみたいと思います。

(終)