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ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

ドミニク・ローランとA.F.グロのポマール1級飲み比べ

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2つの造り手によるポマールの1級畑のワインです。ドミニク・ローランのポマール・1erCru・レ・ゼブノ2006年とA.F.グロのポマール・1erCru・レ・ ザルヴレ2012年。同じポマール1級ですが、飲む前から酒質の違いを想像できる2つのドメーヌのワインです。

ポマール(Pommard)は、中央にデューヌ川が造り出した谷があり、谷を境として南北それぞれに丘陵が広がる地形です。しばしば、お隣のヴォルネイのワインと比較して、ヴォルネイは女性的、ポマールは、男性的と評価されます。一般的には、川がもたらす粘土の多い土壌から力強いフルボディのワインが生み出されるという理屈でしょうか?実際には、ポマールの中も川を挟んで、南側と北側で土壌が異なり、生み出されるワインの性格もやや異なるようです。

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南側区画のヴォルネイ村に接する地域の土壌は、赤みを帯び、鉄とミネラル分が豊富。小石や粘土が多い泥炭土や褐色石灰岩質の土地で、今回の2本の畑がある北側区画は、粘土、石灰、酸化鉄の混じる泥炭土や褐色石灰岩質の土壌となっています。南側区画でつくられる赤ワインは、男性的な香りの強いタニックなもの。北側区画でつくられる赤ワインは、しなやかさのある女性的なバランスの良い妙味が味わえると言われています。

▼コート・ド・ニュイを南北に走るD947から撮影したポマール村です。奥に見える村の中心部をデューヌ川が南東方向に流れています。手前は、村名の畑で、畑の中にドメーヌ・ ローネイ・オリオの作業小屋?が見えます。村名の畑は、平坦で、途中から丘陵地になっているのが分かります。この丘陵地一帯に一級畑が存在しています。

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今回のレ・ゼプノは、右側の樹木の裏手あたりから、ボーヌ側(右側)に広がる畑で、南側地区にあるリジュアンと共に評価の高い畑です。特級に昇格することがあれば、この2つの畑と言われています。ちなみに、レ・ゼプノは、レ・グラン・ゼプノとレ・プティ・ゼプノという2つのクリマに分かれていますが、レ・グラン・ゼプノを名乗る造り手は存在しても、レ・プティ・ゼプノを名乗るワインは見たことがありません。

もうひとつの1級畑、レ・ ザルヴレは、デューヌ川のすぐ北側に東西に長く広がる畑です。

ドメーヌ・ドミニク・ローラン 1級 ポーマール・レ・ゼプノ 2006年
Domaine Dominique Laurent [2006] Pommard 1erCru Les Epenots

一般的に難しいヴィンテージと言われる2006年ですが、このドミニク・ローランのポマールは突出した出来だったようです。ワインアドヴォケートの評価も確か94点だったと
思います。ドミニク自身が、20年以上保存出来ると判断した上質ワインには、重く厚みがあって底が深いボトル(通称:ヘビーボトル)が使われていますが、主に、ニュイのグラン・クリュに使われており、この銘柄に使われているのは、よほど自信のあるワインであることを示しているようです。当時2本購入し、1本は、4,5年前に飲みましたが、やや早すぎる印象という記憶があります。日本には、5ケースほどしか入っておらず、結構レアもののようです。

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艶のある濃いガーネットがかった色調のラズベリーレット。
最初から良く開いており、カシス、ブラックベリーラズベリー、ダークチェリーなど黒系寄りの赤黒果実の凝縮した濃厚な香り。薔薇、牡丹の赤い花と少しミンティの冷涼な香りも混ざる。ヨードのミネラル、リコリス、甘草、オリエンタルスパイス、なめし皮、バニラ、ロースト香。紅茶やたばこの熟成アロマも感じられるが、腐葉土香はそれほど強くはない。濃厚な果実味とスパイシー感、しっかり骨格を感じさせるポマール。このワインについては、女性的なポマール北側と言う側面はあまり感じられない。

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▼ボーフォール・エテ、フルム・ダンベールBIO、ロックフォール。ボーフォールととフルム・ダンベールは、良く合います。ロックフォールは、熟成がかなり進んでおり、通常以上にシャープなので、少し蜂蜜をかけてマイルドな風味にして食べました。

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ドメーヌ・アンヌ・フランソワ―ズ・グロ ポマール・1級・レ・ザルヴレ 2012年
Domane Anne-Francoise Gros [2012] Pommard 1erCru Les Arvelets 

リシュブールやヴォーヌ・ロマネの畑を所有しているグロ家の印象からヴォーヌ・ロマネのドメーヌという印象がありますが、実は、ポマールに本拠を置くドメーヌです(ポマールのパラン家に嫁いだ為)。

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▼ポマール村にあるドメーヌ・アンヌ・フランソワ・グロは、2019年に訪れており、このワインは、ドメーヌで試飲して、その場で購入したものです。

(→ドメーヌ・アンヌ・フランソワーズ・グロに関する記事はこちら)

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 中程度の濃さのラズベリーレッド。ラズベリーアメリカンチェリーの赤系果実やローズの華やかな香り。丁子、シナモン、オーク香は強くなく、タンニンは滑らか。ドメーヌで試飲した際に感じた収斂性は感じられない。酸は柔らかく、甘みも。ヴィンテージの割に紅茶や腐葉土の熟成アロマも強く感じられる。ドメーヌでの試飲時も感じられた鉄のニュアンスも。時間とともに香りは甘く、妖艶になり、伸びやかな酸と相まって美味しくなる。

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▼自家栽培のナスと豚肉の炒め物と。

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どちらも美味しいポマールでしたが、性格はかなり異なります。

同じポマール北側ですが、レ・ゼプノは、もともの力強いワインを生みだす畑に加えて、やはりドミニク・ローランのワインの特徴である凝縮した果実味と色調の濃さが顕れています。ただ、1990年代後半のようなオーキーなワインでは決してなく、豊かな果実味に支えられた濃さです。銘柄の多さ故か、結構当たり外れがあるドミニク・ローランですが、これは、当たりの部類に入る1本でした。

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一方、AFグロのポマール・レ・ザルヴレですが、造り手が女性であることもあり、こちらは、しなやかで、柔らかい、言わば女性的なポマールでした。名門グロ家のワインながら、あまりメディアで取り上げられることもなく、以前は敬遠していましたが、ドメーヌ訪問を契機に飲むようになりました。全般的に柔らかく華やかで、それほど熟成させなくても、好みの腐葉土香がすぐに顕れ、早くから美味しく飲める印象を持っています。この手のワインは、確かに米国のメディアにはあまり受けが良くないかも知れませんが、日本人の味覚には結構合っているのではないかと感じています。
ドメーヌ訪問以降、割と嵌っています。

<了>

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