1990年代からネゴシアンとして名を馳せたドミニク・ローランが、2006年に息子とともに立ち上げたドメーヌ・ローラン・ペール・エ・フィスのエシェゾーと並ぶフラッグシップ、クロ・ド・ヴージョの良年2009年です。
ベルギーの元菓子職人でブルゴーニュ屈指の醸造家として知られるドミニク・ローランが、息子ジャンとともに開始したドメーヌ・ワインです。ネゴシアンとしての成功をもとに、自分の畑を買いあげドメーヌを立ち上げ、2006年に初ヴィンテージをリリースしています。当初は、ニュイ・サン・ジョルジュやジュヴレ・シャンベルタンなどの約4haの畑でスタートしていますが、2009年にアンリ・ジャイエの姪、エジュラン・ジャイエからエシェゾーとこのクロ・ヴージョの区画を継承しています。
継承したエジュラン・ジャイエのクロ・ヴージョの区画ですが、ミュジニー特級にほど近い区画と最上区画の”グラン・モーペルテュイ”に近い区画(計0.5ha)になります。50haを超えブルゴーニュ最大のグラン・クリュ畑で80もの所有者が存在し、ピンキリとも評されるグラン・クリュ畑ですが、その中でもこのあたりの区画は、特に優れたテロワールを有することで知られています。
結構黒っぽい色調、ラズベリーレッドよりもダークチェリーレッドに近い。ブラックベリー、ブルーベリー、ダークチェリーの黒系寄りの熟度の高い果実、最初に強めのロースト香を一瞬感じるが、少し経つと、凝縮した果実と東洋スパイス、黒トリュフ、ドライハーブ、甘草、コーヒー、シナモン、なめし皮、下草の入り混じった複雑な香りが支配的に。ドミニク・ローランらしい強めの抽出とオーク、それにテロワールの特徴であるしっかりとした骨格が感じられる。酸は比較的豊かで、時間が経つと腐葉土っぽい熟成のブーケも。2日目には、やや尖っていた酸とタンニンは丸く感じられ、より華やかな香りが全面に。ただ、最良の状態で楽しむには、あと4~5年ほど必要な印象。
(3.8)
ネゴシアンとしてのドミニク・ローランは、1990年代の後半からお世話になっていますが、初期のものは、結構品質にばらつきがあり、時に「あれっ?」と思えるボトルにも出会っています。更にブショネも何回か経験していますが、2000年後半以降のものは、品質が安定しているように思います。多くの最近のブルゴーニュの造り手がそうであるように、ここも、かつて濃厚で樽香を特徴としていた造り(新樽200%と言われていた)から樽を抑えたエレガント路線に徐々に転換しているようです。ただ、決して薄旨系のワインではなく、基本的に抽出がやや強めで、濃密なワイン造りは変わっておらず、好みは分かれると思いますが、ヴィンテージやテロワールによって時に驚くほど素晴らしいワインに出会える作り手だと思います。ドメーヌとしての歴史は、まだ浅いようですが、ネゴスもの同様コストパフォーマンスに優れたワインに期待したいと思います。
<了>