味
ギリシャの固有品種である白ブドウ、アシルティコの飲み比べです。本家、サントリーニ島のドメーヌ・シガラのアシルティコと北ギリシャの標高の高い地域で栽培されるキリ・ヤーニのアシルティコです。いわば、前者は海のアシルティコ、後者は山のアシルティコといえるかと思います。
ギリシャはワインの起源と呼ばれる国の一つで、歴史は紀元前2千年に遡ります。地中海性気候ならではの豊富な日照量と、海洋からの冷風が葡萄栽培には好条件となり、アロマ高く豊富な酸をもったワインを産出しています。300種類以上もの固有品種を有し、現在40種類以上の品種がワイン造りに利用されています。
なかでも最近注目されているのが、エーゲ海に浮かぶサントリーニ島の土着品種であるアシルティコです。日本のマスター・オブ・ワイン(MW)の大橋健一氏をはじめとする世界のトップソムリエや評論家が注目し、高く評価されている品種です。
▼サントリー二島では、非常に強い海風が吹くことから、ブドウ樹を守るためブドウ樹を低く仕立て、枝をらせん状に巻きバスケット型をした、「クルーラ」と呼ばれる世界で唯一の仕立て方法でブドウを栽培しています。
ヴィンテージ違いですが、キリ・ヤーニのアシルティコについては、昨年飲んでおり、それが初めて味わうアシルティコでした。
今回は、やはり、本家すなわちサントリー二島のアシルティコを試してみたいと思い、ドメーヌ・シガラのアシルティコを入手し、再度のキリ・ヤーニのアシルティコと飲み比べてみました。
キリ・ヤーニ アシルティコ フロリナ 2018年
Kir-Yianni 2018 Assyrtiko G.I.Florina
北ギリシャ、西マケドニアの標高600mの冷涼な気候をもつアミンディオン地区で栽培される「山のアシルティコ」です。石灰岩土壌の上に砂質、ローム質土壌が広がる地で栽培されたアシルティコ100%のワイン。
淡い麦わらっぽい輝きのあるクリームイエロー。
グレープフルーツ、ライム等の柑橘系に白桃、洋梨等の果実、白い花の香り、石灰からのミネラルに加えて、オフフレーバとはいえないもののリースリングにみられるペトロール香のような香りが感じられる(前回飲んだ2016年にもこの香りを記録)。アタックから中盤にかけては、しっかりとした酸とふくよかな果実味と塩味が広がり、余韻に苦みを感じる。余韻はやや短い。
(2.8)
ドメーヌ・シガラス アシルティコ 2019年
[2019] Domaine Sigalas Assyrtiko
エーゲ海に浮かぶ白い建物と青い屋根で有名なサントリー二島北部のワイナリー。代々シガラス家によって運営され、現当主のパリス・シガラス氏によって、1991年「ドメーヌ・シガラス」という名称に。サントリーニ島最高峰の造り手として世界各地で高い評価を受けています。
キリ・ヤーニに比べると少し濃いクリームイエロー。
塩っぽいミネラルの白い花、グレープフルーツやシトラスの柑橘系に洋梨の香り。抜栓直後は、酸が溌溂と感じられ、柑橘系の香りと相まって、ソーヴィニヨン・ブランのよう。1時間ほど経って温度が上がってくると、少し酸は落ち着き、白桃や蜜っぽい甘味も。アロマティックでとろみ(粘性)を感じるようなボリューム感のあるふくよかな果実味がはっきりしてくる。酸に苦味を伴う余韻は長め。最初は、ソーヴィニヨン・ブラン的だが、後半は、アロマティックさと豊かな果実味が強調されシェナブランのようで結構楽しめる。個人的には、好みの白ワイン。キリ・ヤーニに見られたペトロ―ル香は、この品種の特徴かとも思われたが、このワインには感じられません。日照(気温が高いとこの香りは出やすい)なのか保存状態なのかは不明。
アルコール度数は、14.5度もあり、味わいのボリューム感から納得させられる。
(3.5)
▼ギリシャのチーズと言えば、羊乳製のフェタ。数時間塩抜きして、スモークサーモンとサラダに。アシルティコの塩味を伴うミネラルと、フェタやスモークサーモンの塩味がよく合います。
▼こちらは、オッソー・イラティ。お国違いですが、こちらも羊乳製チーズです。
▼イカフライです。魚介類に合うワインですが、爽やか系ではなくボリューム感のある白なので、フライの油っぽさも上手く中和してくれます。
▼白菜のクリーム煮。これもばっちり合います。
今回は、同じギリシャでも山と海(島)と異なる産地のアシルティコのワインを飲み比べてみました。ヴィンテージについては1年違いなので、あまり影響はないとして、共通点としては、塩味を感じるミネラル、熟した柑橘系+洋梨のアロマ、比較的テンションの高い酸、余韻の苦味でしょうか?違いは、産地もあるかと思いますが、造り手の違いによるものも結構大きいように感じました。もう少し色々なアシルティコを味わってみないと何ともいえませんが...。
個人的な感覚もあるかと思いますが、評価としては、大差がつきました(値段的にもシガラスは4K円、キリ・ヤーは2K円と差があります)。ドメーヌ・シガラスは、豊かな酸とふくよかさを感じる果実味のバランスが絶妙で、時間経過とともにより複雑になっていく変化が楽しめます。いずれにせよ、魚介類はもちろんのこと、結構幅広い料理に合わせやすい品種と感じました。
<了>