Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

オスピス・ド・ボーヌで買ったワイン

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2015年夏に訪れたオスピス・ド・ボーヌにあるショップで購入したヴォルネイ 1erCru Cuvée Blondeauです。オスピス・ド・ボーヌは、ブルゴーニュワインの商業上の中心地であるボーヌに15世紀に設立された慈善病院です。オスピス・ド・ボーヌとそのワインについて、併せて書きたいと思います。

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オスピス・ド・ボーヌ

今ですら世界に名だたるワイン銘醸地であるブルゴーニュですが、15世紀当時のボーヌはブルゴーニュ公国の統治下で貧しく、貧困者であふれていました。そんな庶民の為にブルゴーニュ公国の財務長官であるニコラ・ロランとその妻は1443 年、私財を投じてサン・タントワーヌ病院をこの地に建設しました。しかし治療費を払えないため病院にも行けない人も多かったことから、二コラ・ロランは、自分の所有するブドウ畑をその病院に寄贈し、その畑から作られるブドウからワインを作り、ワインを売った利益で病院に無料で治療が行えるようようにしました。

これにより、多くの人の命が救われ、この慈悲の精神に共感した富裕層やワイン生産者が次々に自身の持つブドウ畑を寄贈していき、病院はボーヌ周辺を中心に多くのブドウ畑をもつことになりました。

これらの畑で獲れたブドウから作られたワインは、1853年から毎年一回、オークションにかけられます。このオークションは、毎年11月の第三日曜日に開催されます。ワインオークションとしては世界最大の規模で、この時はブルゴーニュ全体でお祭り騒ぎになります。オークションを含めた一連のイベント(ブルゴーニュきき酒騎士団の叙任式や昼食会等)が開かれる3日間は、「栄光の3日間」と呼ばれています。

オークションでの競売を経て売り出されることになるオスピス・ド・ボーヌのワインですが、ブドウの生産、収穫、発酵、樽詰まではオスピス・ド・ボーヌの管理下で行われています。すなわち、樽詰めされたワインが落札され、それ以降の樽貯蔵、瓶詰、出荷を落札者に任せるという分担になります。

競売に参加するのは、ネゴシンアンやインポータが中心になりますが、一般の人も参加できます。基本は樽単位ですが、最近は1本から購入できるサービスも開始されているようです。

オスピス・ド・ボーヌの建物(オテルデュー=神の家)は、現在では病院として使われておらず、博物館となっています。以下は、内部で撮影したものです。

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当時の病室が再現されています。看護婦の人形もリアルです。

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病室だけでなく、調理場から薬剤を調合する部屋など、当時の病院を忠実に再現しています。

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フランドルの画家、ヴァン・デ ル・ウェイデン により描かれた衝立画です。

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絵画の部分を拡大するギミックが組み込まれており、なかなか凝った展示内容です。
オークション関連の展示もあります。

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実際に使われていた銀のテースティングカップです。

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2015年時点で、競売にかけられる46キュベ(赤33、白13)です。ほぼコート・ド・ボーヌの畑ですが、その中にマジ・シャンベルタンとエシェゾーが混ざっています。

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ホスピス・ド・ボーヌには、他の博物館同様、見学経路の最後に、ショップが併設されています。ここで、ホスピス・ド・ボーヌのワインが手に入ります。この時は、今回飲んだVolnay 1erCru Cuvée Blondeau 2010とCorton Grand Cru Cuvée Charlotte Dumay 2009の2本を購入しました。

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前置きが長くなりましたが、Volnay 1erCru Cuvée Blondeau 2010のテースティング記録です。

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外観は澄んだ中程度のラズベリーレッド。抜栓直後の香りはやや控えめですが、徐々にラズベリーアメリカンチェリーの赤系果実、ドライハーブ、オリエンタルスパイスの香り、時間を置いて下草やタバコの香りが感じられるようになります。ヴォルネイらしい女性的な柔らかさよりも少し土っぽいスパイシーさがやや優位な感じです。アタックに感じる酸や果実味は中程度。中盤からタンニンが広がり、そのままフィニッシュへと続きます。

1時間ほどかけて飲みましたが、最後は少し柔らかい顔が見え始めましたが、残念ながら、そのころにはほとんど残っていませんでした。グレートヴィンテージの2010年ヴォルネイ1級は、もう2~3年待っても良かったかもしれません。残り1本の2009年のグラン・クリュ、コルトンはもう少し待って空けたいと思います。

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料理は、油淋鶏を合わせてみました。

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ところで、このホスピス・ド・ボーヌのショップで購入したワインのラベルですが、ボトル Mis en bouteille par Domaine des Hosipices de Beaune の表記があります。これは、ドメーヌ元詰めということになります。通常、落札者がネゴシアンであれば、ここには、Elevé et mis en bouteille par(瓶詰めから瓶熟成)~ ネゴシアン名という表記が入ります。その意味で、競売にかけられなかったワインとなります。このドメーヌ元詰めのホスピス・ド・ボーヌがショップ以外で市場に出ているのかは分かりません。

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これは、2010年の同キュベを落札したネゴシアンのものです。ルシアン・モアンヌとアルベール・ビショーです。他にティボー・リジェ・ベレールも落札しているようです。ちなみにアルベール・ビショーは過去の競売で最多の落札者のようです。

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樽熟成と瓶詰めのみでワインの品質に差がでることになりますが、流石にメゾン・ルロワが落札したものについては、圧倒的な高値が付きます。

今年9月頭に再度、ボーヌ訪問の予定です。時間があれば、またホスピス・ド・ボーヌを訪れるつもりですが、仕事を引退したら、いつか「栄光の三日間」を体験してみたいと思っています。

<了>

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