Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

新政&シェーヴルチーズのペアリング

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シェーヴルチーズと日本酒のペアリングに興味を持っており、最近は、機会ある毎にこの組み合わせを楽しいでいます。とりわけ相性が良いのは、シェーヴルのもつ繊細な風味や酸味を引き立ててくれるような日本酒です。その代表として新政を取り上げたいと思います。新政の火入れ酒シリーズ カラーズの2種との相性を探ります。

 正直、シェーヴルチーズと全ての日本酒との相性が良いとは必ずしも思っていません。醇酒、特に米の香りが強い純米酒には、繊細なシェーブルは負けてしまいます。また、(純米)吟醸酒も甘みが主体のものは、なんとなく、メリハリのない組み合わせのように感じてしまいます。持論ですが、やはりポイントは酸の相性のような気がします。日本酒の酸とシェーヴルの酸が相乗効果を生み出すようなペアリングを気に入っています。

シェーヴルとの相性の定石は、サンセールに代表されるソーヴィニヨン・ブランのワインですが、酸の相性だけの観点でいえば、ワインの方が強すぎると思っています。ソーヴィニヨン・ブランがシェーヴルと相性が良いのは、ソーヴィニヨン・ブランの持つハーブの香りが大きいと思っています。事実プロヴァンスのシェーヴルチーズには、ハーブの香りを意識したものが多いです。

前置きが長くなってしまいましたが、シェーヴルと新政を合わせたのは、新政が特に酸を大事にした日本酒であるという理由です。この酸は、新政が取り入れている生酛造りと協会6号酵母(新政酵母)によるものと思われます。

今回は、新政のカラーズシリーズの改良信交を原料米とする「秋櫻(コスモス)」と三郷錦を原料とする「天鵞絨( ヴィリジアン)」です。

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「コスモス」の原料米「改良信交」は昭和34年、秋田で初めて生まれた酒造用好適米です。「たかね錦(信交190号)」を親に持つために、長野県生まれの「美山錦」と兄弟の関係にあります。「美山錦」が硬質な印象を与えるのに対して「改良信交」はあくまでも滑らかで伸びやかな味わいとのこと。ちなみに美山錦は「たかね錦」にγ線を照射して突然変異で生み出された品種、改良信交は、二次選抜品種のようです。また親の「たかね錦」は復活米で有名な亀の尾の血を引く品種です。「改良信交」は、秋田ではここだけのようですが、山形でも使用されているようで、「くどき上手」が有名です。
生酛木桶仕込み、精米歩合は45%です。

一方「天鵞絨(ヴィリジアン)」ですが、こちらは、「美郷錦」を用い、木桶仕込みによって醸した日本酒です。こちらの精米歩合は40%です。「美郷錦」は「美山錦」と「山田錦」という素晴らしい組合わせの交配から2002年に生まれた品種です。

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ちなみに新政のカラーズにはこれ以外に、美山錦から作られる青ラベルの「瑠璃 (ラピス)」と秋田酒こまちから作られる白ラベルの「生成 (エクリュ)」というアイテムもあります。

合わせたシェーブルですが、下の写真にある、(右)セル・シュール・シェール(Selles-Sur-Cher)と(左)トム・ド・シェーヴル(Tome de chevre)です。

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どちらもカビに覆われた外皮の中は、真っ白くきめの細かいテクスチャーを持つシェーヴルです。セル・シュール・シェールは、ロワール川の支流シェール側一体で造られる山羊製チーズの中でも最高傑作の1つと称されています。フランスのA.O.P(原産地名称統制)チーズのひとつです。

一方、トム・ド・シェーヴルは、フランスとスペインの国境ピレネー地方の山のチーズで、山羊が食べる餌に特徴があるようです。ロワール産のものよりも大きなシェーブルチーズです。セル・シュール・シェールは時々食べますが、このシェーヴルは初めてです。

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今回は、加えて、我が家で定番チーズになりつつある、オッソ―・イラティを加えました。トム・ド・シェーブルの産地に近い、バスク地方とベアルン地方の羊乳チーズです。ミルキーでありながら割と濃厚なチーズです。羊乳チーズなので普通は白っぽいのですが、今回のオッソーイラティは、少し黄色がかっています。左は白身魚フライのレモンソースです。

2種の新政ですが、どちらも最初は、上品な炊いたコメの香りです。そして、甘酸っぱい青りんごのコンフィ、ミネラル、生酛特有のサワークリーム、ヨーグルトといった乳酸系の香りを感じます。果実の香りは、ややコスモスラベルの方が華やかで、リンゴに加えてメロンっぽい香りがより感じられます。僅かですがハーブの香りも感じ取ることができます。甘みは、ややコスモスラベルの方が感じれらます。一方、ヴィリジアンの方は比較すると僅かに力強い感じで、より旨味を感じます。どちらも酸のアピールがポイントとなっており、甘さ一辺倒の日本酒ではありません。また後味に、少しの苦みを感じるのも共通です。

ただし、実は2種の新政は同時に開けたわけではなく、ヴィリジアンの方は1週間ほど前に開栓しています。このため正確な比較ではない可能性があることをお断りしておきます。

次にチーズです。

セル・シュール・シェールは、ある程度熟成が進み出しており、やや引き締まり始めていますが、酸味・塩味ともまだしっかりしており、風味だけでいえば若く感じます。

一方、トム・ド・シェーブルは、比較的穏やかな風味で、セル・シュールに比べると塩味・酸味共にやさしいシェーヴルです。

あと、シェーヴルではない羊乳製のオッソーイラティですが、この個体は少し熟成が進んでいるようで、濃厚でやや塩味が強くなっています。

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さて、ペアリングですが、やはり、シェーヴルは、冒頭に述べた酸がポイントになっています。甘みの強い日本酒は、シェーヴルの合わないと感じることも多いですが、生酛造りの新政の持つ酸とシェーヴルの酸が良い相乗効果を生み出しています。少し酸味のある乾燥クランベリーなどもシェーヴルにはよく合います。

ちなみにオッソーイラティとの相性ですが、悪くはありません。こちらは、新政のもつ酸ではなく、甘みとこのチーズの塩味が相反効果を生み出しているように感じます。

少し前に開栓したヴィリジアンの方は、別なシェーブルにも合わせています。

コンポステル(Compostelle)と燻製シェーヴルのブカニエ(boucanier)です。このチーズの詳細は別記事に述べていますので省略しますが、今回のシェーヴルとは異なり、表皮が薄いタイプです。カビで覆われていません。

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今回のシェーブルに比べると酸味がやや優しく感じられます。

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どちらかと言えば、今回のような酸味の強いシェーブルの方が、新政には合っているような気がします。

また機会があれば、生酒の「No.6シリーズ」にも合わせてみたいと思います。

<了>

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