バッカスのささやき

ワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒との出会いと趣味のブルーベリー栽培を中心に日常を綴ります。

ジョセフ・ドルーアンの地下セラー訪問記

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ブルゴーニュの大手ネゴシアンであり、ドメーヌでもあるジョセフ・ドルーアンは、家族経営ながら、ボーヌ市内中心部に巨大な地下セラーをもつ名門生産者です。9月6日にこのセラーを訪れました。ブルゴーニュの歴史を感じさせる迷路のようなセラーの見学は、なかなか貴重な経験でした。

ジョセフ・ドルーアンは、1880年にジョセフ・ドルーアン氏によって設立されました。当初はネゴシアンでスタートし、その後、2代目からブドウ畑を徐々に買い始め、現在ではドメーヌとしてもその地位を確立しています。

メゾンの入り口は、ノートルダム教会のすぐ近くにあります。入ってすぐにショップがあり、ここから地下カーヴへと案内してくれます。

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ジョセフ・ドルーアンの地下セラーは、ボーヌの中心街の地下に広がっています。
古いものは、ノートルダム参事会教会地下で、13世紀に建てられた教会の醸造所を買い取った地下カーヴは2ha(2万平米)に及ぶとのことです。

▼カーヴの入り口近くに古い圧搾機が展示されています。16世紀ころに利用されていたもののようですが、きちんと手入れをしていて、今でも使用できるそうです。最近は2005年に使われたようで、これは、4代目の醸造責任者のヴィエロニク・ドルーアンの就任を祝った際に実際に使われたようです。完全に人手で動かすようで、この時に醸造されたのは、同社が最初に購入し、思い入れのある畑「クロ・デ・ムーシュ」のブドウだそうです。

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カーヴを案内してくれたガイドによると、次回は、来年(2020年)または、さ来年に使われるとのこと、前者は、同社の140周年にあたる年、後者は、クロ・ド・ムッシュを買い取ってから100年を記念してとのこと(どちらで使用するかは決まっていないようです)。いずれにせよ、当然ながら使用されるのは収穫期になります。

冒頭に書いたように1880年にジョセフ・ドルーアン氏により、ネゴシアンとしてスタートし、二代目のモーリス・ドルーアンが、1921年にクロ・ド・ムッシュの畑を買い取り、ドメーヌとして活動を開始しています。最初は赤で1928年よりシャルドネの生産を始めています。その後、更に、三代目のロベール・ドルーアンが、シャブリやコート・ドールの1級や特級畑を買い揃えていったようです。現在は80haもの畑を所有しているとのこと。現在は、4代目にあたり、86歳になるロベールの4人の子供がメゾンを引き継いでいます。

同社の象徴的な自社畑は、クロ・デ・ムーシュですが、フラッグシップの自社畑という観点では、ミュジニーかと思います。
モンラッシェもリリースしていますが、これは、自社畑ではなく、マルキ・ド・ラギッシュの畑をパ―トナー契約しています。但し、栽培から醸造、熟成は全て、ジョセフ・ドルーアンが担当しているとのこと。

▼最も古い13世紀のカーブで、ゴシック様式のアーチ上の天井が特徴的です。

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その後、ブルゴーニュ公所有のカーヴを地下で統合しています。

ブルゴーニュワインの歴史を紐解くと、シトー派の修道僧がまず、ブルゴーニュの地でワインを造る努力をし、ブルゴーニュ公が14~15世紀にかけて、政治的な利用を含めて、ブルゴーニュワインを広めたと言われています。ブルゴーニュ公国は、1467年にフランスに取り込まれ、その後は、フランス国王が支配しています。

ジョセフ・ドルーアンの地下セラーは、ノートラダム参事会教会のカーヴ、ブルゴーニュ公のカーヴ、そしてフランス国王のカーヴを通路で結んだ構造になっており、現在は史的遺産として登録もされています。

▼19世紀から20世紀に造られた新しいカーヴは、平たい天井になっています。

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現在、主に醸造はボーヌの外の醸造所で行ているようですが、ジヴリーとホスピス・ド・ボーヌで毎年落札しているワインは、このカーヴで熟成させているようです。

▼オスピス・ド・ボーヌのマジ・シャンベルタン特級キュヴェ・マドレーヌ・コリニョンです。評価の高い2005年のラ・ジブリオット(クロード・デュガ)を以前、購入しています。このドルーアンのキュヴェは、ヴィンテージを聞き忘れましたが、市場で見たことがありません。今後出荷されると思われます。

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白は12か月、赤は18か月を熟成の目安としているとのこと。

新樽比率については、ジョセフ・ドルーアンは、ミネラルや果実味やエレガントさの特徴を隠さないよう、低めにおさえており、Maxで25%程度、但し、樽で買い付けるオスピス・ド・ボーヌについては、全て100%新樽とのこと。

栽培に関しては、早くからリュット・レゾネ(減農薬農法)を取り入れるなど革新を続け、10年の歳月をかけ、2007年、全自社畑へのビオディナミ農法の導入が実現されています。

最後は、試飲です。

まず、説明を受けた地下セラーの位置関係を航空写真とセラーの見取り図を合わせた資料で教えてくれました。改めて迷路のような構造が理解できました。

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標準的な赤白3本ずつの試飲コース思われますが、1本を除き全てプルミエ・クリュというなかなか豪華なラインナップでした。

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▼左から、Chablis1er Cru Mont de Milieu 2015、Meulsault 1er Cru Genevrières 2013、Chassagne Montrachet 1er Cru Les Morgeot 2017、Beaune Clos Des Mouches Blanc 2017 

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シャブリ 1er Cru モン・ド・ミリュー 2015年

ジョセフ・ドルーアンは、シャブリに38haもの畑を持っているようです。自社畑は全体で80haということなので、意外にも、コート・ドールの所有畑とほぼ同じくらいの面積の畑を所有していることになります。実は、ワインを飲み始めたころ、よくここのシャブリ村名を飲んでいたことを記憶しています。「シャブリとは、こういうワイン」というのを最もよく表しているのがドルーアンのシャブリかと思います。

▼ちょっと面白い資料を紹介してくれました。

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シャブリワインの66%が輸出されており、その4分の1は英国で日本にはアメリカとほぼ同じ数量が輸出されているようです。日本人のシャブリ好きが良く分かる資料です。

現在4つの特級畑と4つの1級畑をもっており、村名と1級については、樽を使用していない(ステンレスタンク)とのこと。このモン・ド・ミリュ―(「中間の山」の意味する)もそのうちの1つです。
標高は、特級畑とほぼ同じ、南向きの斜面で日照量が多いですが、風通しが良い為、その年のシャブリの性格を最も正確に表すテロワールをもつと言われています。

2015年は、暑さから酸が足りない年と言われていますが、これは比較的しっかりとした酸と柑橘系果実、そしてシャブリらしいミネラルを持ったワインでした。

ムルソー 1er Cru ジェネヴリエール 2015年

ジェネヴリエールの畑は、標高が低く粘土質が多いシャルムの畑と標高が高く石灰質が多いぺリエールの中間に位置しています。暑かった2015年は、ミネラルがやや少なく、エレガントになる傾向になります。やや丸く感じられる酸は、好みに合っています。

シャサーニュ・モンラッシュ1erクリュ・モルジョ 2017年

モンラッシュと同じ、マルキ・ド・ラギッシュ所有の畑です。モルジョは40haを超える大きな1級畑ということもあり、生産者を問わず、シャサーニュの1級畑の中では比較的多く飲んでいる方だと思います。2017年も暑い年でしたが、きりりとした酸と強いミネラルを感じます。17年らしいフィネスを感じるワインと説明していました。

ボーヌ クロ・ド・ムーシュ 1er Cru 2017年(白)

最初は出されていませんでしたが、クロ・デ・ムシュの白の質問をしたら、残り僅かでしたが、奥から出してきてくれました。香りを楽しむだけということでしたが、少し味わうことができました。初めて飲みましたが、尖った酸はなく、ふくよかさを感じる白でした。かと言って、2017年の暑さでダルになっているわけでもありません。赤に比べると結構高価なようですが、美味しい白でした。グラン・クリュ相当と言っていましたが、あながちオーバーでないように感じます。赤がメインかと思いましたが、現在の割合は、赤・白同じくらいだそうです。

試飲後に、この畑を実際に見に行きました。クロ(Clos)の名前が示すように、石垣に囲われた高台にあります。南側は、ポマールの畑です。ちなみにMoushesとはこの地方の言葉で「蜂」という意味のようで、この辺り、古くは養蜂場があったようです。気のせいかもしれませんが、ふくよかさの中に蜂蜜をイメージする香りがあったような...。

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▼続いて、赤です。左から、Beaune Clos Des Mouches 2016、Vosne-Romanée 2015、Gevery Chambertin 1er Cru Clos Prieur 2016

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ボーヌ クロ・ド・ムーシュ 1er Cru 2016年(赤)

ルーアンが最初に購入した畑。ずっとドルーアンモノポール(単独所有畑)だと思っていましたが、そうではないようです。ルビー色、スマートな酸と滑らかタンニン、適度なボリューム感もあります。

ヴォーヌ・ロマネ 2015年

2015年らしくやや酸が少なく、既に飲み頃を迎えています。ヴォーヌ・ロマネっぽい、繊細さと華やかさを感じます。
天候に恵まれ酸の少ない2015年については、熟成するという意見と熟成しないという意見に分かれるようですが、現地の人の見方では、後者の意見が多いようです。いずれにせよ、現時点ではバランスが良いのは共通の見方のようです。

ジュヴレ・シャンベルタン 1er Cru クロ・プリウール 2016年

ジュヴリ・シャンベルタンの1級畑は、グランクリュ周りと、北側のラヴォー渓谷付近の2か所に大別されます。クロ・プリウールは、前者でマジ・シャンベルタンに道路を挟んで隣接しています。クロ・サン・ジャック等北側の畑に比べると柔らかく、飲み易い印象を受けます。ジョセフ・ロティのワインで良く知られている畑です。

最後に、ショップに立ち寄りました。

ジョセフ・ドルーアンのワインは、日本でもポピュラーなので、ほとんどの銘柄が日本でも入手できます。ショップの値段は、日本より、少し安い程度です。

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これが、フラッグシップのマルキ・ド・ギッシュのモンラッシュ。僅かに生産できた2016年454.4€の値段が付いています。

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悩みましたが、結局、同じマルキ・ド・ラギッジュのモルジョとクロ・デ・ムーシュの赤を購入しました。

今回の元参事会教会の地下セラーは見応えがありましたが、大手ネゴシアンのイメージが強く、なんとなく敬遠していた同社のワインの歴史やポリシーを知り、さらに代表銘柄を試飲することで、改めてこのテロワールを上手く反映したこの造り手のワインの良さを再認識することができました。特に新樽比率を極力抑えて、本来のミネラルや果実味を素直に引き出しているプルミエ・クリュクラスのワインは、親しみやすく、誰にでも進められるワインという印象を強く受けました。

(終)