Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

フレデリック・マニャンの2015年水平

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テロワールを最大限に活かしたワイン造りを特徴とし、「限りなくドメーヌに近いネゴシアン」と言われ、最近ワインショップで目にすることも多いフレデリック・マニャンの2015年赤を村名を中心に飲み比べてみました。

モレ・サン・ドニを拠点とするマニャン家は、5代にわたってワイン造りを行う名門です。もともとは、ブドウ栽培農家でしたが、4代目当主のミシェル・マニャンがシャンボール・ミュジニーの1級畑を購入したことをきっかけに、ドメーヌを立ち上げました。ミシェルの息子である5代目のフレデリックは、敢えてドメーヌとしての拡張を選ばず、ネゴシアンの道を選択しました(ドメーヌもののワインは、今でもミッシェル・マニャンの名前でリリースされています)
ブルゴーニュという地で、生産者の趣向や時々のトレンドを追うものではなく、異なるテロワールの個性が自然な形で引き出されているワインを造りたいという理由だったようです。畑を所有しないものの、ブドウの耕作会社を自ら作り、契約した畑で、スタッフと共にブドウの管理に携わることで、テロワールの特徴を最大限に活かしたワイン造りを行っています。このような独自のスタイルを貫いていることから、「限りなくドメーヌに近いネゴシアン」と評されています。

ワイン造りには、ビオロジック(有機農法)に加えてビオディナミ(土壌や植物、生物はもちろん、月の満ち欠け等天体の動きまでも反映した独特な栽培方法)も取り入れています。

さらに2015年から、一部の上級ワインの熟成にアンフォラ(素焼きの壺)を使用しています。但し、100%アンフォラを使用している訳でなく、複雑性を出すために、従来の木樽熟成させたワインをアッサンブラージュしているようです。アンフォラは、最近ボルドーの有名シャトーで試行的に使われているようで、2015年にボルドーを訪れた際に訪問したいくつかのシャトーで見かけましたが、ブルゴーニュでは、全く見聞きしませんでした。勝手な推測ですが、生産量が多く、ブレンドの余地が大きいボルドーと異なり、各畑の生産量が限られたブルゴーニュのドメーヌでは、なかなか冒険はできす、多くの畑のワインを生産できるネゴシアンならでは試みではないかと思います。

上の写真で右端のジュヴレ・シャンベルタン1級のラヴォー・サン・ジャック2015年がそのうちの1つのキュヴェのようです。

まず、コトー・ブルギニョン(Coteaux Bourguignons)と村名フィサン(Fixin)の比較です。

本来は、この間に位置するブルゴーニュAOCと比べるべきなのでしょうが、2015年のブルゴーニュAOCは、かなり前に飲んでしまいました。ちなみにフレデリック・マニャンのブルゴーニュAOC赤は、主にフィサンのブドウをデグラッセ(格下げ)しているようです。 

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コトー・ブルギニョン 2015年

コトー・ブルギニョンは、2011年に制定された新しいAOC(原産地呼称)で赤・白・ロゼが認められています。ブルゴーニュの特定の地域ではなく、オーセロワやボジョレーを含むブルゴーニュ広域レジョナルのワインで、赤はピノ・ノワール以外にガメイ(但しクリュ・ボジョレー産限定)、白はシャルドネ以外に、アリゴテ、ピノ・グリ、ピノ・ブラン等の混醸が認められています。赤で言えば、ブルゴーニュ・パストゥグランに似ていますが、パストゥグランが、ピノノワールとガメイが1:2の割合と決められているのに対して、コトー・ブルギニョンは、ブレンド比率も自由です。手頃な値段のブルゴーニュワインを幅広い人に飲んでもらいたいという意図があるようです。玉石混交の可能性はありますが、ルロワのコトー・ブルギニョンのように凄いワインも存在します。

このフレデリック・マニャンのコトー・ブルギニョンのラベルにはPINOT NOIRと表記されていることから、このヴィンテージについては、ピノ・ノワール100%とも思われます。ブルゴーニュブルゴーニュピノノワールを名乗らないのは、広域のブドウが使われている為でしょうか?

やや明るいラズベリーレッド。ハーブっぽい少し冷涼な香り。抜栓直後は、スミレ、ハイビスカス、薔薇等、果実よりも花の香り、胡椒。収斂性を感じるややざらつきのあるタンニン。少し時間が経つとイチゴやラズベリーといった果実、キャンディ的な香りや甘さを少し感じられるようになるが、タンニンについてはあまり変わらない。

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フィサン・クール・ド・ ヴィオレット 2015年

フィサンは、北をマルサネ村、南をジュヴレ・シャンベルタン村に接するコート・ド・ニュイの村です。1級畑もありますが、他のコート・ド・ニュイの村に比べるとどちらかと言えば、地味な存在で、コート・ド・ニュイを名乗っているワインも多いようです。個人的には、重すぎず、軽すぎず、価格も比較的手頃なので、昔から比較的良く飲んでいました。一時期、フィサン村のピエール・ジャランに嵌っていた時期もありますが、どちらかと言えば、ドミニク・ローランやル・デュモンなどのネゴシアンものを時々飲んでいました。

中程度の色合いラズベリーレッド。紫のスミレというより、ラズベリーアメリカンチェリーといった赤系果実の香り、バニラ。酸・タンニンも感じるが丸く、2015年らしい甘さが時間と共に出てくる。

次は、コート・ド・ニュイを代表する3つの村の村名ワインです。

▼左から
ジュヴレ・シャンベルタン レ・スーヴレ 2015年
ヴォーヌ・ロマネ V.V. 2015年
シャンボール・ミュジニー V.V. 2015年

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色調は、ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーが少し濃いめのルビー。ヴォーヌ・ロマネは、2つの村名に比べると、明らかに明るい色調です。

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ジュヴレ・シャンベルタン レ・スーヴレ(Les Seuvrèes)2015年

レ・スーヴレは、国道(74号線)を挟んで東側の畑です。国道近くや国道の東側は、土壌的には、粘土質で、どちらかいうと格が低く、敢えて村名を名乗らない生産者もいますが、レ・スーヴレについては、国道を挟んで向かい側には、特急のマゾイエールの畑があります。有名な生産者としては、ロベール・グロフィエやユベール・リニエがいます。いずれも畑名を名乗っています。

3つの村名のなかで果実味、酸ともに最もしっかりしているように感じる。タンニンもそこそこ感じるが、ざらつくようなものではない。時間が経つと、土、少し腐葉土の香りも。

ヴォーヌ・ロマネ V.V. 2015年

オー・レアの南東、ニュイ・サンジョルジュに隣接する国道74号線沿いの畑、ラ・クロワ・ブランシュ(La Croix Blanche)とクロ・ヴージョとロマネ・サンヴィヴァンの中間に位置するバッス・メジエール(Basses Maizieres)の畑のようです。後者の畑はあまり聞きませんが、前者は、セシル・トランブレイがデグラッセしてBourgogne AOCとして出している畑として覚えています。

ラズベリー、サワーチェリーの赤系果実、薔薇の花。シナモンやリコリスのスパイス。2つの村名より華やかな香り。酸は比較的強く伸びやか、タンニンはやや弱め、少し時間が経つと甘みもかんじられるようになる。

フレデリック・マニャンは、2015年ヴィンテージから全房発酵を取り入れているという記事を見たことがあります。比率はわかりませんが、やや淡い色調は、全房比率の関係かもしれません。

シャンボール・ミュジニー V.V. 2015年

銘醸1級畑レ・シャルムに隣接するLes Condemennes と東隣りの国道に面するLes Babilleres は小石、石灰岩が混じった粘土質、上部のLes Danguerrinsは石灰質の多い土壌です。後者の畑は、ロブロ・マルシャンやアミオ・セルヴェルが所有しているようです。インポータの畑データとは若干異なりますが、ブレンドするブドウの畑を柔軟に選べるのもネゴシアンのメリットかもしれません。

グラスに注いで30分程経つと、ラズベリーアメリカン・チェリー、薔薇の花、シナモンやドライハーブの香り。3本の中では、スパイシー感を最も感じ、タンニンは3者の中で最も感じる。

今回のジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーは、非常に似通っており、自分のテースティング力では、ブラインドで試せば、区別付かないと思います。ジュヴレらしさを見分ける鉄っぽさも、そう思えば感じられる程度です。ちなみに、ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーは、EUのオーガニック認証を取得しているようです。ヴォーヌ・ロマネには、ユーロリーフのマークはありません。オーガニックの特徴が出ているのかは正直分かりません。

▼ロール・キャベツとっハード/セミハードチーズと合わせました。

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以上、フレデリック・マニャン良年2015年の5銘柄の比較でした。

今回のコート・ブルギニョンは、軽いという予想を裏切り、意外に収斂性を感じるワインでしたが、生産地やブドウ品種の枠をある程度取り払った新しいアペラシオンであることを考えると、今後、生産者の力量が反映された色々なワインが登場する可能性を秘めていると思います。

4つの村名について、今すぐ飲んで美味しいと感じたのは、フィサンです。タンニンも既にこなれており、2015年らしい甘みも感じられ、デイリー・ブルゴーニュとしては最高のワインだと思います。

フィサン以外の3つの村名は、いずれも、そこそこの酸・タンニンを感じますが、尖ったものではなく、ある程度の柔らかさも兼ね備えています。

ヴォーヌ・ロマネは、最も分かりやすい華やかな香りを感じます。ただ深みはあまり感じません。ある意味飲み頃かも知れません。

ジュヴレ・シャンベルタンとシャンボール・ミュジニーは、柔らかいながらも酸・タンニンはしっかり感じられ、最適な飲み頃はもう少し先のように思いました。

3つの村名に関して、個人的な好みとしては、ジュヴレ・シャンベルタンでした。但し、僅差であり、別な機会・体調で飲めば違う評価になるかも知れません。

なお冒頭の写真右端のジュヴレ・シャンベルタン・1erCru・ラヴォ―・サンジャック・アンフォラですが、当初、村名と比較をしようと思いましたが、村名を飲んでみて、未だ早いと思い、もう少し寝かせることにしました。

今回は、試せませんでしたが、フレデリック・マニュアンの村名には、「クール・ド・ロッシュ(岩盤)」、「クール・ダルジール(粘土)」、「クール・ド・フェール(鉄)」というテロワールの土壌タイプを表記したキュベがあります。
こちらも興味深いので、いずれ比較してみたいと思います。

いずれにせよ、価格が高騰してしまった有名ドメーヌに比べ、様々な畑のテロワールを反映したワインを比較的良心的な価格で入手できることは、このネゴシアンのワインを選択する動機には十分かと思います。

<了>

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