熱海にてフレンチとともにルイ・ロデレールのクリスタル2008年ヴィンテージ、そして、モンジャール・ミュニュレのリシュブール2005年を味わいました。最高のヴィンテージの素晴らしいワインを素晴らしい料理と愉しむことができました。リシュブールの畑のことも併せて書きたいと思います。
9月最初の週末、奄美諸島に台風が近づく中、熱海を訪れました。宿泊は、熱海伊豆山の東急ハーヴェストクラブです。夜には少し雨が降りましたが、概ね残暑厳しい好天に恵まれました。
施設内にあるフレンチダイニング「コート・エ・シエル」です。
▼今回このレストランに持ち込んだワインは、2008年のルイ・ロデレールのクリスタル、そしてメインは、ドメーヌ・モンジャール・ミュニュレのフラッグシップ、リシュブールのグレートヴィンテージ2005年です。
▼モンジャール・ミュニュレのドメーヌは、ヴォーヌロマネ村の中心からやや南のニュイ・サン=ジョルシュ寄りにあります。隣接した国道に近い場所で、4つ星ホテルを経営しており、これが、まさに Le Richebourg Hotel です。ここには、2015年と2019年に泊まりました。当然ながら、レストランのワインリストにはモンジャール・ミュニュレのワインがが並んでいますが、残念ながらかなりの値段です。良いワインをリーズナブルな価格で楽しみたいのであれば、隣のニュイ・サンジョルジュやフランジェ・エシェゾーのレストランに行った方が良さそうです。
さて、リシュブールの畑ですが、計8.03haの畑は、レ・リシュブール/Les Richebourgs(面積5.05ha)とレ・ヴェロワイユ・ウ・リシュブール/Les Verroilles ou Richebourgs(面積2.98ha)という2つのリュー・ディから成り立ちます。後者は主に、グロファミリー(アンヌ、グロ・フレール、アンヌフランソワーズ)が所有します。
言うまでもなく、モノポールのロマネコンティとラ・ターシュを別格として、非常に人気の高い特急畑ですが、実際に行ってみると、思いの外、大きな畑であることがわかります。最大の所有者はDRCで、2つのリュー・ディ両方に畑を所有しています。
▼畑のど真ん中を、比較的幅のある畦道(下地図の青色)が通っており、ここを歩くと、名立たるドメーヌの所有する区画を目の前でみることができます。この道は、アンヌ・グロの区画あたりで行きどまりになっていますが、その上部に、憧れの1級畑、クロ・パラントウが位置しています。この道の両側には、ブルゴニューワインラヴァーにとっては、至福のブドウ畑が広がってっています。
黄色で示した区画が、モンジャール・ミュニュレの所有畑(0.31ha)になります。ちなみに右隣はルロワ、左隣はジャン・グリヴォー、下は、道を挟んでDRCの区画になります。
※地図は、Winehog 2015から引用
▼リシュブールの畑を横切る道の入り口付近です。左側はDRCの区画、左端に見える畑がロマネ・コンティとラ・ロマネになります。
▼おそらく、このあたり(左側)が、モンジャール・ミュニュレの畑だと思います。
ルイ・ロデレール クリスタル 2008年
[2008] Louis Roederer Crystal
ルイ・ロデレール社による良年のみに生産されるプレステージ・シャンパンです。妻の還暦祝いを兼ねてのディナーということもあり、これを選びました。
クリスタルの名前の由来は、ロデレールのシャンパンを好んだロシア皇帝アレクサンドル2世が自分用のシャンパンにバカラ製のクリスタルのボトルを使用したことに由来します。
2008年ヴィンテージのシャンパンは、非常に高いポテンシャルをもつことで知られており、ワインアドヴォケイト誌で100点を付けたシャンパン(過去100点のシャンパンは1本のみ)も存在します。このクリスタルもジェームス・サックリングが100点をつけています。
美しい黄金色。細かく豊かな泡立ち。レモン、グレープフルーツの皮等柑橘系の香り、青リンゴ、華やかで豊かな酸のなかにも蜂蜜の甘さを感じる。ブリオッシュやドライフルーツ、熟成からのノワゼットの香りが素晴らしい複雑さを醸し出しています。芳醇・複雑でありながら未だにキレのある素晴らしいシャンパン。当然ながら熟成感たっぷりですが、果実味も強く、まだ10年くらいは美味しく飲めると思います。
(4.3)
ドメーヌ・モンジャール・ミュニュレ リシュブール 2005年
[2005] Domaine Mongeard Mugneret Richebourg Grand Cru
最もお気に入りのヴィンテージ2005年のリシュブールです。
実は、まったく同じワインを1年前に知人宅に持ち込み飲んでいます(→こちら)
中心に黒っぽさが残るやや濃いめのラズベリーレッド。縁には熟成を感じるレンガ色。香りは、ラズベリー、ブラックベリーやダークチェリー、薔薇、牡丹、ドライフルーツにシナモン、甘草の甘苦スパイス、樽からのバニラ、なめし皮。中でもうっとりするような華やかなフローラルな高貴な香りは、まさにヴォーヌロマネのグランクリュを実感させてくれます。迷いましたが、念のため、デカンタージュをお願いしたことで、最初から香りは素晴らしく開いています。腐葉土の熟成のアロマ(ブーケ)も直ぐに立ち上り、更に複雑性が加わります。口に含むと上品な酸を感じられますが、予想外にタンニンが強く感じられ、フィニュシュに僅かに渋みの余韻残ります。収斂性をともなうような粗々しいタンニンでなく、むしろシルキーに感じられるものですが、1年前に飲んだボトルではあまり感じられないものでした。
ただ、時間が経つと徐々に甘露さが出てきます。この甘露さは、素晴らしかったラ・ターシュやシルヴァン・カティアールのマルコンソール、そして先日飲んだデュジャックのボンヌ・マールなど多くの2005年産のブルゴーニュワインに感じることができた共通の特徴です。
一緒に飲んだ娘も、最初はこのタンニンに怪訝な顔をしていましたが、徐々に表れる甘露さに満足したようです。
(4.4)
今回のディナーは、ワインのグレードにあわせて、このレストランの最も上位のPoème/ポエームというコースを奮発しました。
▼アミューズは、低温調理のカツオ、フランボワーズソースです。
▼モンサンミシェルのムール貝 南瓜のクーリー サフランの香り
▼穴子と茄子 フォアグラのコンフィ
▼相沢牛の冷製 生雲丹とシャンパンのババロア。雲丹と牛肉という組み合わせに驚きましたが、非常に美味でした。
鮑のソテーと熱海徳田椎茸 ジャガイモのピュレとマッシュルームのコンソメ仕立て
皿の上に点在している少し緑を帯びたものは鮑の肝を乾燥させたもののようです。
▼伊豆夏鹿のロティ ソース・グランヴヌール
伊豆修善寺あたりの鹿のようです。伊豆半島の天城高原あたりをドライブすると、度々、鹿に出会います。その鹿と考えるとちょっと複雑ですが、味は、あっさりしています。調理法にもよるかと思いますが、以前食べた蝦夷鹿より、更に淡泊に感じました。
黒いものは、黒トリュフのスライスです。
▼デザートとしてのチーズです。イタリアのフォンティーナ、フランスのピエ・ダングロワ、フルムダンベール、ブリーの4種でした。
▼白桃とココナッツミルク エキゾティックなソルベ
流石に今回の料理は、高いコースだけあって、凝った食材を使ったなかなかのものでした。ワインも期待に違わず、コロナ禍のモヤモヤさを忘れさせてくれる素晴らしいディナーとなりました。
<了>