バッカスのささやき

ワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒との出会いと趣味のブルーベリー栽培を中心に日常を綴ります。

リューシー・エ・オーギュスト・リニエのクロ・ド・ラ・ロッシュ2009年 

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リューシー・エ・オーギュスト・リニエのフラッグシップ、クロ・ド・ラ・ロッシュ。あのユベール・リニエ家のお家騒動の渦中に生産された2009年ヴィンテージです。果実の濃縮感を伴う力強さと複雑さを兼ね備えたまさに桃源郷の1本でした。

モレ・サンドニを本拠とするワイナリー創業から三代目にあたるユベール・リニエは、一代で輝かしい名声を築いたブルゴーニュを代表する生産者です。
ユベールには、3人の子供がおり、1990年台後半に末っ子で天才醸造家と呼ばれていたロマン氏にドメーヌを託して、引退します。その後、ロマン氏は、アメリカ人のケレンと結婚し、ケレンは、ロマンから栽培と醸造を学びます。その間にふたりは、リューシーとオーギュストという2人の子供に恵まれます(この子供の名前がドメーヌ名になっています)。
ここまでは、ユベールからロマンへの相続は順調だったのですが、継承が終わった1年後の2004年にロマン氏が34歳の若さで亡くなります。ユベール氏が相続の目的で設立した会社の経営をめぐりユベール氏とケレンの間に確執が生まれ、これが裁判沙汰に発展し、最終的には、ケレンが敗れ、去ることになります。

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Lucie et Auguste Lignierの名前のラベルが使われているのは、2001年~2010年だと思いますが、ユベール・リニエが、Lucie et Auguste Lignierの栽培にも醸造にも関わらなくなった2006年~2010年ヴィンテージに使用されたのがこのデザインのラベルのようです(ドメーヌの正式な設立が2005年)ちなみに、この間も引退を撤回したユベール・リニエは、長男のローラン・リニエとメタヤージュ(分益耕作契約)でワイン造りを細々と行っており、ユベール・リニエのラベルで市場に出ていましたが、グラン・クリュは、価格も高く、流通量も多くなかったようです。

ドメーヌ リュシー・エ・オーギュスト リニエ クロ・ド・ラ・ロッシュ グラン・クリュ 2009年
[2009] Domaine Lucie et Auguste Lignier Clos de la Roche Grand Cru 

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ユベール・リニエのクロ・ド・ラ・ロッシュを最初に飲んだのが、1995年ヴィンテージだったと思います。まだブルゴーニュ・ワインに嵌り始めたころでしたが、素晴らしい香りに圧倒されるとても印象的なワインでした。

リューシー・エ・オーギュスト・リニエのクロ・ド・ラ・ロッシュは、2007年と2008年ヴィンテージを飲んでいます。特にメモを取らずに飲んでいた時なので、記録はないのですが、飲むのが、早すぎたのか、それほど印象には残っていません。

▼面積16.9haの特急畑クロ・ド・ラ・ロッシュ(青線内)は、8つのリュー・ディから成り立ちますが、リニエ家は、モン・リュイーザン(Monts Luisants)0.65ha、レ・フルミエル(Les Fremières)0.25ha、レ・フルワショ(Les Froichots)0.15haの3つのリュー・ディ合計1.05haを所有しています。標高が少し高く、砂質表土と石灰質母岩のモン・リュイーザンからの繊細さとレ・フルミエル、レ・フルワショからのコクとフルーティさをあわせることで複雑さな味わいを生み出していると言われています。
平均樹齢45年のVV。新樽率90%で18~20ヶ月間熟成。年間生産本数3000本。

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以下、ワインのインプレッションです。

黒みを帯びた艶のある深いルビーカラー。あまり熟成の色合いは感じないが縁にかけて僅かにレンガっぽくなるグラデーションはみられる。レッグはやや長め(アルコール度数は、14度)。ブルーベリー、ブラックベリー、ダークチェリーの主に黒系の果実香、(過度ではない)ロースト香、なめし皮、ブラックペッパー、ドライハーブ、甘草、大地、スーボアの香り。アタックに少し甘みを感じる酸、果実の濃縮感が凄い。タンニンは、そこそこ感じるが液体に溶け込んでおり滑らか。甘苦の余韻も長い。

濃厚で、しっかりとした骨格、ボリュームを感じますが、複雑さも兼ね備えており、素晴らしいクロ・ド・ラ・ロッシュ。ユベール・リニエ家のクロ・ド・ラ・ロッシュは、久しぶりですが、やはり頭一つ抜きんでているような気がします。

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▼このワインには、牛タンの塩焼きを合わせました。

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最近味わうことも多くなった2009年の中でも、特に印象的なワインで、家で飲むのはちょっともったいなかったような気がしています。おそらく、5~6年経てば、もう少し妖艶さも出てきてさらに良くなったかと思いますが、残念ながら、ストックしていた最後のリューシー・エ・オーギュスト・リニエのクロ・ド・ラ・ロッシュだったので、再度出会うのは難しいかもしれません。

僅か5年間ほどしか造られなかったケレン・リニエのワイン。2年目の2007年が絶頂期だったとも言われます。シングルマザーでドメーヌ経営を両立しながら、ユベール・リニエとの確執の中で、ワイン造りに集中できなかったのか、次第に評論家の評価がばらついていったようです。ちなみに2009年のVinousの評価は75点と非常に低い点数がついています(Tim Atokinは96point)。おそらく、試飲時に何か問題があったのではないかと思います。

今飲んでみると、決してユベール・リニエのクロ・ド・ラ・ロッシュに劣るものでもないと思います。いずれも濃厚で樽香の強い昔のスタイルからロマン・リニエが変えたといわれるエレガントさを兼ね備えた2つのリニエのクロ・ド・ラ・ロッシュを比較してみたかった気もします。

(了)