代官山のメゾン・ポール・ボキューズ、リヨンが生んだフランス料理の巨匠ポール・ボキューズの料理が日本で味わえるというフレンチ・レストランです。料理に合わせたワインがサーブされるという企画のディナーを愉しみました。
ポール・ボキューズは、ミシュラン3ツ星を53年間維持した「料理界の法王」と呼ばれ、リヨンを拠点にレストラン、ホテルや学校、財団を創設して、現代フランス料理の発展に尽くしてきた人物です。惜しくも2018年に91歳で亡くなっていますが、その影響は、今でも様々な場所に様々な形で残されています。
2015年にリヨンを訪れましたが、美しい旧市街に魅了されるとともに、洒落たレストランが立ち並ぶ光景やさまざまな食材が並ぶ市場にまさに食の街を感じとることができました。
▼ポール・ボキューズの名が付けられたリヨン中央市場(Les Halles de Lyon Paul Bocuse)です。もともと1859年創設の歴史ある市場ですが、2006年リニューアルの際に敬意を表して、この名前が付けられたようです。
本題に戻って、
▼ひらまつグループが経営するレストランのひとつである代官山のメゾン・ポール・ボキューズです。今回は、ひらまつの株主優待ディナーで訪れました。
お気に入りワインの持ち込みを考えましたが、最近のひらまつグループへの持込料は、1本6000円(ちなみに、3年ほど前までは、なんと無料でした)かかるのと、今回のコースが店側が料理に合わせたワインを提供してくれるということで、持込みは無しです。
▼食前酒は、ドラモットのノンヴィンテージ・シャンパン。高級シャンパン「サロン」の姉妹メゾンです。ひらまつオリジナルラべルで、ひらまつグループで直輸入しているものと思われます。
青リンゴ、シトラスの果実味主体にパンドミ、ブリオッシュの香りが混ざる複雑ながら万人受けする美味しいシャンパンです。
▼アミューズブーシュは、ブルゴーニュ地方の郷土料理グジェール(チーズ風味のシュー生地菓子)です。
▼これもアミューズだったと思います。トマトベースの冷製です。シャンパンが凄く合う一品でした。
▼2番目のワイン、前菜に合わせたワインのようです。アルザスのトリンバックのピノ・グリ・キュヴェ・パルティキュリエール(Cuvée Particulière)2016年です。これもひらまつラベルが見られます。
▼前菜のフランス産鴨フォアグラのポワレ ソース・ベルジュ。
ワインのラベルを見るまでは、ボトルの形状から、モーゼルあたりの甘口ワインとかを想像しましたが、予想外のピノ・グリでした。確かに、このトリムバックのピノ・グリは、(ピノ・グリにしては、)ふくよかさを感じるワインですが、流石にフォアグラと濃厚ソースには、ワインが負けている印象でした。思わず、サーブしてくれたウェイター(ソムリエ?)に、何故このワインを合わせたのか聞いてみましたが、リンゴを使った酸味のソース(ヴェルジュ)に合わせたとのこと。
▼魚料理の「天然真鯛のポアレ 香味野菜のジュリエンヌ(せん切り) サフランの香り豊かなマリニール」。(ムール・)マリニエールは、ブルターニュ地方の郷土料理です。
▼ワインの選択は、ロワールのソーヴィニヨン・ブラン。サンセールの名門、アルフォンス・メロ(Alphonse Mellot)のエドモンでした。ビンテージは確認し忘れました。
このワインは、昨年も家飲みで飲んでいます (→こちら)が、ラベルが変わっているようで、最初は気づきませんでした。
その時は、樽香が非常に強く感じられ、若干違和感を感じましたが、今回は、この料理とのマリアージュは興味深いものでした。魚貝料理ではありますが、マリニエールは、バターを使用しており、クリーミーさもあり、酸を抑えたオーク熟成のバニラ香となかなかの相性を見せてくれます。おそらく、ステンレスタンク熟成のソーヴィニヨン・ブランだと酸が際立ってしまいこの料理には合わないと思います。サンセールにしては、結構高価なワインですが、これは流石のセレクションです。
▼メインの肉料理、「牛ロース肉のロースト ジューソースと赤ワインのアクセント ジャガイモのニョッキと共に」。
▼料理に合わせてサーブされたワインは、オー・メドックのクリュ・ブルジョア、シャトー・ドーリヤック(Chateau d'Aurilhac)2009年です。カベルネ・ソーヴィニョンとメルロー主体で、僅かにカベルネ・フラン、プティ・ヴェルドが混醸されているようです。ラベルに記憶がなく、おそらく初めて飲むワインだと思います。肉料理と濃いソースには定番のボルドーだと思いますが、濃厚ながらタンニンはこなれており、そこそこ熟成感も感じさせる美味しいボルドーです。
このワインも料理との相性は抜群なのですが、ちょっと残念ことに、上記のボトルの最後をグラスに注がれたため、グラスの中が滓にであふれることに...
▼デザートの「コンポートにした洋梨のタルト仕立て チョコレートのシブースト ロイヤルミルクティのアイスクリームと共に」
流石にポール・ボキューズを名乗るレストランだけあり、料理のクオリティは、非常に高く感じました。ただワインについては、ワインそのものは良かったのですが、今回は、料理とのマリアージュを売りにしたコースだったにも関わらず、(銘柄や産地の説明はあったのですが)何故このワインを合わせたのかの説明は一切ありませんでした(フォアグラにピノ・グリだけはこちらから尋ねました)。もしかしたら、お客さんに自ら感じ取って欲しいという主旨だったのかもしれませんが、ワインにそれ程詳しくないお客さんも多いと思うので、この種の企画メニューは、きちんとソムリエが説明をした方が、なるほど感があって良いかと思いました。また、最後のワインでグラスが滓だらけになったことについては、配慮がちょっと欠けているように感じました。
一応僅かながらも個人株主でもあるので、後日店側にはワインのサービスについては、やんわりと上記の意見を伝えました。店側の反応もあり、サービスについては、今後は、おそらく改善してくれるかと思います。
繰り返しですが、料理については、たいへん満足度の高いものでした。機会があれば、また利用してみたいと思います。
<了>