Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

オーストラリア自然派ワイン3種

オーストラリアのナチュラルワイン3種です。左からイースタン・ピークのイントリンシック ピノ・ノワールジャムシードのアプリシティ ピノ・グリ、ヤウマのラルフ・シラーズです。

昨年11月にオーストラリアを訪れたきっかけもあり、オーストラリアのナチュラルワインに興味を持っています。ナチュラルワイン(自然派ワイン)の一般的な定義は、ブドウが無農薬や有機栽培で栽培され、醸造から瓶詰までは酸化防止剤(SO₂)の使用をなるべく少なめに抑える方法で作られたワインとされますが、あまり厳密なものではなく大きく栽培方法と醸造方法で、できるだけ人工物(化学薬品や添加物)を使わないで造られたワインと言えるかと思います。

オーストラリアは、ワイン生産国としての歴史が比較的浅いこともあり、多くの若い生産者が新しい試みとしてナチュラルワインにチャレンジしています。特に南オーストラリア(SA)州のアデレードに近いバスケット・レンジは、オーストラリアの自然派ワインの聖地として知られています。それ以外にもヴィクトリア(VIC)州やニュー・サウス・ウェールズ(NSW)州の一部の生産者もナチュラルワインに積極的に取り組んています。

まずは、メルボルンのショップでお奨めのナチュラルワインと紹介され、購入した1本から。

イースタン・ピーク イントリンシック ピノ・ノワール 2020
2020 Eastern Peak Intrinsic Pinot Noir

以下、テクニカル情報(HPから)です。

ヴィクトリア州、Conghilsのブドウから。
2020年は全房発酵せず。3,000L のワックスで裏打ちされたオープン コンクリート バットで自然に発酵させ、バスケットでプレスし、228L のバリックで 12 か月間熟成させました ( 20% 新樽)、清澄も濾過もせず、樽からラッキングしてから 6 か月後に瓶詰め。MLF後とボトリング前に少量のSO₂添加。アルコール度数13%。

やや濃いめで、未だ若々しい色調を残すラズベリーレッド。
ブルーベリーやダークチェリーのやや黒っぽい果実の香りに、ややインキーな揮発性の香りが混ざる、ドライハーブ、ブラックペッパーやアニスのスパイス香も。
味わいに果実味とそこからの酸を感じ、それほど伸びはないものの、余韻まで続く。ちょっとオリエンタルスパイスも感じられるエキゾティックなピノワイン。最初はドライに感じたが、時間とともに徐々に甘みも。タンニンは弱くはないが滑らか。ややフェノリックな印象も。

(3.2)

イースタン・ピークのワイン(赤・白・ロゼ)は、日本でも輸入されているようです。価格は6K以上とやや高めですが、自然派ワインのもつ香りやテーストの複雑さを実感させてくれるちょっと面白いワインだと思います。

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つづいて、日本で購入した2本です。

ジャムシード アプリシティ ピノ・グリ 2021年
Jamsheed Apricity Pinot Gris 2021

ヴィクトリア州にあるワイナリー名の「ジャムシード」はペルシャ神話に登場する伝説上の王であり、インド神話の閻魔に相当する人物です。グラスを通して王国の全てを見渡す事が出来たと言われており、ワインが誕生する逸話に深く関わった事でも知られています。
オーナー兼ワインメーカーはギャリー ミルズという人物です。若き日は、日本で英語教師の仕事に就くとともに、野球に打ち込み、日本の村田製作所の実業団に所属し、島根県に住んでいた彼は広島カープのプロテストを受ける程の逸材でしたが肩の故障により英会話の教師となりました。オーストラリアへ帰国後、故郷マガレット リヴァーでのビンテージ参加、さらに、カリフォルニア ナパにあるリッジヴィンヤードで2年半ほど研鑽を積み、彼が愛するワインを自身の手で作るべくオーストラリアへと舞い戻ってワイナリを興しました。ギャリーのワインは彼が心から愛するブドウ品種シラーとリースリングを基本としています。そのスタイルは繊細にして優美で、オーストラリアの次世代を担う生産者として注目されています。

以下、テクニカル情報です。

Apricityとは冬場に顔を出してくれた太陽が降らす暖かさを意味する言葉ですが、このレーベルではVictoria州産のフルーツを、GIに縛られず、自由にブレンドして作る気軽なコンセプトを軸としています。Bendigoにある複数のオーガニック ヴィンヤードから収穫したPinot Gris100%。
ステンレス発酵、ステンレス熟成。ボトリングの際に10ppmのSO2。3 日間スキンコンタクト、残りの発酵のために古いフレンチ オーク樽に移し、6 か月間澱の上に放置し、亜硫酸塩の添加を最小限に抑え、ろ過も精製もせずに瓶詰め。

2021 ジャムシード アプリシティ ピノ・グリ
Jamsheed Apricity Pinot Gris 2021

濃いめのオレンジピンク。グリ・ブドウからのいわゆるオレンジワインですが、3日間のスキンコンタクトで、ここまで濃い色合いが出せるのが不思議。ローヌのタヴェルのような濃い目のロゼに近い色です。やや滓からの濁りがみられます。
アプリコットやオレンジの香りに、石灰からのミネラルとスパイスを感じます。
アタックには溌溂とした酸、クランベリーやサワーチェリーの果実の味わいとシュール・リー由来の旨味のテースト。オレンジピールの苦みが感じられる余韻は中程度。
アルコール度数は高くありませんが、少し時間が経ち落ち着くとコクを感じる旨味が口中に広がります。焼き鳥にもよく合いました。ビオ的と言う表現が正しいかは別として、やや個性的なピノ・ノワールですが、個人的には、結構気に入りました。

(3.5)

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最後は、ヤウマのシラーズです。ヤウマは、ルーシー・マルゴーとともにオーストラリアを代表する自然派ワインの造り手だと思います。先日南オーストラリアを訪れた時に探しましたが、残念ながら購入することはできず、後日、日本のワインショップから購入しました。

ヤウマは、ジェームス、デニス、ダンビーという3人のアースキンファミリーが南オーストラリア州に設立したワイナリーです。変わったワイナリー名ですが、これは、かつて有名なソムリエであったジェームスが、昔スペイン・カタルーニャ州のプリオラートで出会ったヤウマ(ジェームスのカタロニア語)という若いワインメーカの名前にインスピレーションを受けたもののようです。ワイナリーは、アデレードヒルズのレンズウッドにあるようですが、主な畑は、マクラーレン・ベイルにあります。この畑のグルナッシュ(スペインで感銘を受けた品種かと思います)からワイン造りをスタートしています。

ヤウマ ラルフ・シラーズ [2018]
Jauma Ralph’s Shiraz 2018

自根で灌漑を受けていない1988年に植えられたマクラーレン・ヴェイルのクラレンドン(Clarendon Hills)のShriazから。過去は、ブレンド用として使われていたようですが、この2018年に初めて単独キュヴェとしてリリースされたようです。

↓コルクでもスクリューキャプでもなく、ペットナットで使われる王冠が使用されています。

紫色を残すやや淡いダークチェリーレッド。畑のあるマクレーン・ベイルは、標高的には、バロッサ・ヴァレーに近いですが、色合い的には、より高地にあるアデレードヒルズのシラーズに近いです。マクラーレン・ベイルは海に近いこともあり、気候的にこの畑は、やや冷涼なのかもしれません。ダークチェリーやブルーベリー、紫蘇、甘草、ブラックペッパ、やや土っぽい香りも。色合いも的にもそうですが、バロッサ・バレーの熱量をもったようなシラーズとは全く異なる冷涼さを感じます。
味わいにも重たさは全くなく、むしろ軽さを感じますが、かなり強い酸が感じられます。タンニンはシラーズらしく円やかですが、とにかく酸が突出しています。

(2.0)

この強い酸、意識した早摘みなの、醸造での狙いなのか、あるいは酸化によるものか分かりませんが、(個人的な感想として)一瞬ですが、酸化臭的な香りも感じたので本来のものでなく、保存上の問題ではないかと思っています。
SO₂無添加で4年経過というのも多少意識にあります。ちなみに、ルーシ・マルゴーは日本輸出用のワインには、赤道上を通る(実際には航空輸送なので、あまり関係ないと思いますが)ことから少量のSO₂を添加しているようです。

リベンジの意味を込めて、ここのグルナッシュのワイン、機会があればトライしてみたいと思います。

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予想していた通り、良くも悪くも個性的なオーストラリアのナチュラルワインでした。

幸いにも最近ルーシー・マルゴーのピノ・ノワールも手に入れることができたので、機会を見て試してみたいと思います。