クリュ・デュ・ボジョレーの中でも、最も力強いワインを生むと評されているモルゴン(Morgon)の飲み比べです。この地域における代表的な自然派の生産者ギィ・ブルトンの2020年と2019年参入の新鋭の生産者ドメーヌ・ド・ヴェルニュスの2020年/2021年です。
ギィ・ブルトンは、マルセル・ラピエールに次ぎ、ボジョレで最も古くからヴァン・ナチュレルの栽培・醸造を敢行した先駆的生産者の一人で、マルセル・ラピエールの醸造アシスタントを担当していた経歴の持ち主です。自然派の巨匠と評されるマルセル・ラピエールのワインは、10年以上前にジョルジュ・デュブッフのクリュ・ボジョレーと共に時々飲んでいたボジョレーです。ただ、同じ自然派のギィ・ブルトンについては、あまり縁がなく、飲んだ記憶は殆どありません。
Gui Bureton Morgon Viilles Vignes 2020
ヴィリエ=モルゴン村の西に位置する「Les Charmes(レ シャルム)」という畑の樹齢90年近い古樹からのV.V.のようです。
このモルゴンの2020年ですが、実は半年前も飲んでいますので、その時の感想を合わせて書きます。
グラスの底が見えるやや明るいラズベリーレッド。
抜栓直後の香りは、やや閉じこもった感じで、果実よりも根菜のようなちょっと青っぽい植物香。時間とともに赤系ベリーの香りが少しずつ顔を出します。ドライハーブの香りも。味わいのアタックは、柔らかく、軽やか。果実の甘みを感じ、酸は円やか。タンニンも殆ど感じられないくらい円やか。余韻はやや短め。
2日目は、甘みに加え、初日は控えめに感じた酸もでてきて、バランスがとれた味わいに。主張はないが、エレガントな印象。
(3.1)
以下は、同じワインを半年前(5月)に飲んだ時のメモです。
外観は、やや淡いラズベリーレッド。僅かに還元による小豆香が感じられる。梅紫蘇っぽい香りと味わい。酸は比較的強め。タンニンのは円やか。
当時の印象は典型的なビオワインを感じましたが、半年経ち、酸が落ち着いた感じで、円やかさが強調された印象を受けました。
Domaine de Vernus Morgon 2020/2021
2019年参入のボジョレーの新鋭生産者です。
2020年にその存在を知りました。以下は、インポータ情報からの引用です。
「2019年に誕生したドメーヌ・ド・ヴェルニュスはボージョレ地区の中央に位置するRégnié-Durette(レ二エ デュレット)に所在。ブルゴーニュ生まれの当主フレデリック ジェムトンは保険業界で30年間働いた後、ワイン好きが高じてワイン造りを始める決意をした。どこでワインを造るかはいくつかの候補から、最終的には美しい風景が広がり、類まれなる可能性があるボージョレに腰を据えることにした。ボージョレの山々に広がる畑の様々な標高や方角、土壌構成、葡萄の木の健康状態などを考え、ドメーヌ設立時には綿密に選定された合計7haの葡萄畑を購入し、その大多数は古木。畑作業や醸造等のワイン造りに関しては、ブルゴーニュの試飲会で知り合ってから数年来の友人であるギョーム・ルジェ(エマニュエル ルジェの次男)にコンサルタントを依頼。ヴォーヌ・ロマネで家族経営のドメーヌを支えている彼の手腕や技量、哲学に感嘆したフレデリックは葡萄の植樹から瓶詰の日程に至るまですべての工程において指示を仰ぎ、ギョーム氏はそれに応えてDomaine Emmanuel Rougetの哲学をワイン造りに反映させている。」
興味深いのは、今や飛ぶ鳥も落とす勢いのエマニュエル・ルジェの次男がこのドメーヌのコンサルタントを担当しているという点です。
ここのモルゴンは、2020年ヴィンテージを5月初めに飲みました。
先のギィ・ブルトンと同時に飲み比べた訳ではありませんが、同時に購入したワインということもあり、ほぼ同じ時期に飲みました。
結論から言えば、同じモルゴンの同じヴィンテージとは思えないほど、性格の違うワインでした。
(2023/5/3のメモから)
外観は黒みがかった深みのあるダークチェリーレッド。粘性も高めで、アルコール度数の高さを想像させます。カシス、ブラックベリー、チェリーの凝縮した黒系果実の香り。オークも感じるが、果実味に隠れている印象。味わいは、ちょっと下を刺すような溌溂とした酸とアルコールの刺激があり熱量高め。タンニンは滑らかだが、ライトなボジョレーとは一線を画すような味わい。若干バランスが取れていないようで、熟度の高い果実からの少しジャミーさも感じるが、余韻も長く、インパクトがあるクリュ・ボジョレー。
(3.2)
なんとなく、2020年のルジェのパストゥグラン(ちなみにアルコール度数は15度)を思わせるワインでした。
次に先日飲んだ2021年です。
こちらは、色合いが2020年と全く違います。
グラスの底がハッキリわかる、やや紫がかった明るめのラズベリーレッド。
香りについては、2020年と同様に、まず、トップノーズにベリーやチェリーの果実香が感じられますが、2020年に比べると華やかな赤系寄りの果実も感じられます。
味わいのアタックには、やはり豊かな酸と凝縮した果実味を感じますが、円やかなタンニンともバランスが取れており落ち着いた印象です。ジャミーさは、全くありません。
(3.2)
当然ながら隣接しているブルゴーニュと同じ傾向で、2020年の熱量の高さと2021年のエレガント(クラシカル?)さが反映されているような気がしますが、リリース2、3年目なので、もしかしたら、方向性が未だ定まっていないのかもしれません。
共通なのは、味付きのハッキリしている分かりやすいクリュ・ボジョレーという印象です。
他のクリュは飲んでいないのでクリュの違いはコメントできませんが、機会があればこのドメーヌの他のクリュのワインも試してみたいと思います。
ちなみに、2021年は、ギィ・ブルトンの2020年と飲み比べましたが、色合い的には、ほぼ同じような色調です。
ただ、前述のように、香りやテーストはかなり違います。
ビオディナミらしい柔らかさが特徴のギィ・ブルトンと比較的分かり易い華やかさと味付きが特徴のド・ヴェルニュス、飲み手によって好みが分かれると思いますが、共通しているのは、若いガメイのワインにみられるようなキャンディ香は全くと言っていいほど感じらず、ブルゴーニュ(ピノノワール)に近いエレガントさを備えたクリュ・ボジョレーといえるかと思います。
了