Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

フレデリック・マニャンの進化

コストパフォーマンスの高さから、しばしばお世話になっているフレデリック・マニャンのワインですが、数年前のヴィンテージから、一部にジャー(アンフォラ)熟成を採用しています。今回、ジャー熟成のジュヴレ・シャンベルタン・1er・ラヴォー・サンジャック2015とブルゴーニュ・グラヴィエール2020を開けてみました。

モレ・サン・ドニ生まれのフレデリック・マニャン氏は、1995年に父親のミシェル・マニャンから独立してネゴシアンを立ち上げています(現在は、ドメーヌもフレデリックさんが引き継いでいます)。ドメーヌとはいえ、自らブドウの栽培に関わり、テロワールの個性が自然な形で引き出されるワイン造りを徹底しており、2012年には、ベタンヌ&ドゥソーヴ誌でネゴシアンとして最高評価のBDマーク4つを獲得しています。

3年ほど前にテロワールの違いを知る勉強を兼ねて、フレデリック・マニャンの2015年ヴィンテージを村名を中心に水平飲み比べを行っています。
↓この時は、肝心のモレ・サン・ドニが含まれていませんが、同一生産者・同一ヴィンテージの比較ができるというのは、ネゴシアン、中でもテロワールのワインへの反映にこだわるフレデリック・マニャンならではと思います。

当時のテースティング能力の問題もあってか、想像していたテロワールの個性通りのイメージとはならなかった部分もありますが、非常に興味深い経験でした。贅沢な飲み比べができたのも、当時の村名の価格は、5K円前後程度だったことによるもので、最新のヴィンテージは、村名クラスでも10K円前後になっています。とはいえ、有名なドメーヌものの村名は、軒並み15K円以上になっていますので、比較すれば、まだ良心的な価格かと思います。
上の写真の右端が、今回のジュヴレ・シャンベルタン・1er・ラヴォー・サンジャック2015になります。村名を同じ時期に購入(当時の価格で6.8K円)しましたが、この時は、飲むには早いと考え、今回までセラー保管していました。

ジュヴレ・シャンベルタン 1er ラヴォー・サンジャック2015年
2015 Gevrey Chambertin 1er Cru Labaux St Jacques

ラヴォー・サン・ジャックは、ジュヴレ・シャンベルタン村の中でも、グランクリュの畑が並ぶ場所から北東に位置しています。標高的には、グランクリュのシャンベルタンに比べ10mほど高いだけなのですが、ここのテロワールに大きな影響を与えているのが、ラヴォー渓谷からの冷風と言われています。土壌は、粘土石灰岩。南向きの畑で、陽当たりは良いものの、渓谷から吹きおろす冷風の入り口になります。その影響を受け、昼夜の寒暖差、いわゆる日較差が大きいこの畑からは、力強い骨格を備えながらも冷涼感があり、エレガントなワインが産出されると言われています。

↓2019年9月に訪れたラヴォー・サンジャックの畑(手前)です。右隣は、グランクリュに相当すると評されている1級畑、クロ・サン・ジャックです。右奥に見える斜面の畑は、エストゥルネル・サン・ジャック。フレデリックエスナモンやアンリ・マニャンなどが所有しています。より、冷涼なテロワールであることが想像できます。

前置きが長くなりましたが、ワインの感想です。

やや濃いめの深みのあるラズベリーレッド。縁に熟成を感じる色合いが混ざるが、まだまだ若い印象。
香りは、最初から良く開いている。ブラックベリーアメリカンチェリー、プラムの熟度の高さが感じられる赤黒果実。セージ、ドライハーブにリコリスのアロマ。オークのニュアンスは控えめ。
味わいの酸は中庸だが円やか、凝縮した果実味が広がり、タンニンはきめ細かく滑らかで、ミネラル感も。ジュヴレらしさは、タンニンからの骨格に僅かに感じられるが、意外に柔らかいテクスチャー。2015年のブルゴーニュ地方は天候に恵まれいやゆる暑い年ですが、このワインは、酸はそれなりに綺麗に存在しており、甘さも抑えられています。果実の熟度の高さというメリットが生かされたワインだと思います。
ひとことでで言えば、すごくバランスの取れたエレガントなワインです。
欲を言えば、腐葉土や獣香といった熟成香ですが、これだけは、飲むタイミングjの問題かと。
(3.6)

最近飲んだラヴォー・サンジャックは、2005年のクロード・デュガと2016年のフレデリックエスモナンですが、前者は、未だに強めのオークと力強いタンニンが感じれれるがっしりしたワイン、後者は、今回のフレデリック・マニャンに近く、濃いものの新樽100%にしては、味わいは意外に柔らかいワインでした。
フレデリック・マニャンのワインのバランスの良さは、やはり、ジャー(アンフォラ)熟成の効果が大きいのではないかと想像しています。ジャー熟成の比率は、わかりませんが(3分の1程度?)、美しい酸と果実味を強調するのに確実に役立っているのではないかと思われます。

次に、ブルゴーニュ・グラヴィエールの2020年です。

ブルゴーニュ・グラヴィエール 2020年
2020 Bourgogne ”Graviers” 

「グラヴィエール」というのは、フレデリック・マニャンのワイン銘柄にしばしば付けられるテロワールを表現した名前ではなく、シャンボール・ミュジニーの畑の名前のようです。

シャンボール・ミュジニーを名乗れるのは、コート・ドールの中央を南北に走る国道(D974)の西側の畑になります。国道の東側に位置するGraviersは、いわゆるブルゴーニュ・レジョナルになります。
Googleストリートビューで見るとこのあたりかと思われます。コート・ドールを訪れたことがある方はご存じかと思いますが、国道の東側は、延々と平坦なブドウ畑が続いています。

ブルゴーニュ・グラヴィエール2020ですが、飲んでびっくり、これは、美味しいです!
外観は、ダークチェリーに近いルビーレッド。艶と深みがあり、やや紫色も残る色調。カシス、ダークチェリー、エルダーベリーの黒系果実、リコリスローズマリーのハーブのニュアンス。味わいには、まず非常に凝縮した果実味。酸もしっかりしているが、果実味の後ろにある感じ。タンニンは、きめ細かく滑らか。濃いが、甘み、オークともに抑えられており、良く熟した果実味が強調されている。心地よいタンニンが感じられる余韻はやや長い。最後の方で、僅かに下草や腐葉土の熟成香も。

(3.4)

シャンボール・ミュジニーのワインの特徴は、女性的で優美といわれていますが、最近は、気候の影響もあるのか知れませんが、しばしば比較的濃いワインに出会います。このワインは、シャンボール・ミュジニーの村名ではありませんが、濃いけど、タニックでなく、酸も比較的円やかというシャンボールのワインの特徴をよくあらわしたワインではないかと思います。

フレデリック・マニャンは、ネゴシアンの立場を活かし、ブルゴーニュ・レジョナルや広域ヴィラージュの赤だけでも様々なワインをリリースしています。

以下は、テラヴェール(TERRA VERT)さんのHPから

Bourgogne Pinot Noir:所謂ノーマルのレジョナル
コート・ド・ニュイの15区画の畑のブドウから。年によってはフィサン、ジュヴレ等のデグラッセしたブドウも。基本は、古樽バリック10ヶ月熟成で一部アンフォラ使用。

Bourgogne Pinot Noir Cote d’Or “Feeric”:

コート・ド・ニュイの7つの村のブドウから。アンフォラ、古樽、ステンレスタンク各3分の1で12ヶ月熟成。

コート・ド・ニュイ村の広域も
Cote de Nuits Village Rouge “Coeur de Roches”:
ブロション村のブドウ主体。岩盤土壌由来の名称。12ヶ月古樽

Cote de Nuits Village Rouge “Croix Violette” 
クロワ・ヴィオレットは。ブロション村の畑名ですが、ジュヴレ・シャンベルタンは名乗れず、コート・ド・ニュイ・ヴィレッジになります、熟成は古樽バリックのみ。

ちなみに、今回のブルゴーニュ・グラヴィエールは、掲載されていませんでした。
限定キュヴェなのでしょ?

以前は、ハズレが無いながらも、感動することもなかったこのネゴシアンのワインですが、マスコミで謳われているように、確実な進化を感じました。なによりもネゴシアンのメリットを活かした幅広いバリエーションは、ブルゴーニュ、特にコート・ドールのテロワールを勉強するには最適なワインだと思います。

現在、市場に出ているフレデリック・マニャンのワインは、売れ残っている2017年や2019年が多く、その中に2020年ヴィンテージが混ざりますが、特別キュヴ?とはいえ、今回のレジョナルを味わうと結構期待が高まります。特に、この造り手の魅力を最も感じられ、価格高騰も比較的抑えられている村名の2020年は買いかと思います。

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