日本酒好きに根強い人気を誇る菊姫鶴乃里と久保田千寿の冬季限定の生酒を飲み比べてみました。同じアルコール度数の原酒ながら、性格的にはかなり異なる2本でした。
石川県の菊姫を代表するブランドの「鶴乃里」は、兵庫県吉川町(特A地区)の山田錦を100%使用し、山廃酒母で造られた純米酒です。鶴の里に限らず、菊姫は、熟成により真価を発揮する日本酒と思います。
https://www.wine-and-cheese.net/entry/2019/10/05/160132
鶴乃里の生酒を飲むのは初めてです。鶴乃里は、15年ほど前からリリースされていますが、この冬季限定酒については、2018年からリリースされているようです。
菊姫鶴乃里 生原酒 BY2019 兵庫吉川町特A地区山田錦 精米歩合65% アルコール度数19度
写真では無色透明(クリスタル)ですが、ほんの僅かに黄色味が入っています。
炊いた米の香り。生酒らしいメロンのような果実香も。口に含むと最初に甘み、すぐに強い酸と濃厚な旨味を感じ、長い余韻が感じられます。通常の菊姫や鶴乃里でも、山廃特有のサワークリームっぽい酸が感じられますが、この生酒はさらに上をいく、ガツンとした甘みを伴う酸を感じます。
久保田千寿 吟醸生原酒 BY2019 精米歩合麹米50%・掛米55% アルコール度数19度
久保田千寿のやはり冬限定の生原酒。菊姫鶴乃里と異なり、こちらは、吟醸酒です。
色はクリスタル(透明)です。生酒固有の濃厚な果実香というより、白い花とフレッシュなフルーティ香、アルコール添加によるものか、少し青竹っぽい香りもします。原酒なので濃厚ですが、菊姫に比べると甘さは控えめで、辛口に振っていることが分かります。中盤から直ぐに苦みが口中に広がります。余韻は、菊姫に比べやや短く感じます。酒米は明記されていませんが、おそらく五百万石と思われます。
▼フランス産の「バカラ」、馬蹄形が特徴の白カビチーズです。熟成がそれほど進んでいないこのクリーミーなチーズには、菊姫の山廃のサワークリームっぽさが良く合います。
▼ブリの照り焼き。どちらも相性は抜群です。
同じ人気酒の生原酒ですが、性格はかなり違います。
菊姫鶴乃里は、山田錦の力強さと山廃造りの酸がポイントになっており、濃厚な旨味を感じさせる純米酒です。
一方、久保田千寿は、生原酒の力強さをもちながらも、すっきりとした辛口に仕上がっています。料理には、より合わせ易いかと思いますが、苦みがポイントになっており、このあたりは好みが分かれるかもしれません。個人的な好みとしては、菊姫鶴乃里の方でしょうか。
ただ、立て続けの原酒は、正直、やや飲み疲れします。
(了)