Bon Vin , Bon Sake , Bon Fromage

ブルゴーニュワインとチーズをこよなく愛するシニアのブログです。素晴らしいお酒とチーズの出会いを中心に日常を綴ります。

ドメニコ・クレリコ バローロ アエロプラン・セルヴァイ 2010

久々のバローロです。9月中旬に訪問予定のバローロの予習として、ドメニコ・クレリコのアエロブランセルヴァイの2010年を開けました。そろそろ飲み頃かなと思い、このワインを選びましたが、まだまだパワフルなバローロでした。

最近は、あまり聞かなくなった「バローロ・ボーイズ」の呼称ですが、その筆頭格とも言えるドメニコ・クレリコ。いくつかのキュヴェのバローロをリリースしていますが、このワインの「アエロブランセルヴァイ」というキュヴェ名です。クリュ(畑)の名前ではなく、「野生の飛行機」という意味で、手に負えない腕白坊主だった幼少頃のドメニコに父親が与えたニックネームとのこと。他のドメニコ・クレリコのバローロは、非常にシンプルなエチケットが採用されていますが、このワインのラベルだけは、異なり、飛行機や飛行船の描かれた6種類のエチケット(中身は同じだと思います)でリリースされています。2006年が初リリースで、今回のワインは2010年になります。リリース当時に購入しましたが、自由にエチケットが選べたことから、一番気に入ったものを選びました。リリース時以外は、6本セットで販売されているケースが多いようです。
このワインは、バローロの中でも骨格のある力強いワインを産する東側のセッラルンガ・ダルバの畑のブドウを使用しています。年間6000本程度と生産量は限られているようです。

以下は、このワインのテクニカルデータ(インポータからの情報)です。
畑:海抜450mの南東向き斜面
醸造・熟成:ロータリー・ファーメンターで発酵、バリックで16ヶ月後、大樽で16ヶ月
アルコール度数:14.5%

深みのある、エンジがかったダークチェリーレッドで縁にかけて僅かにオレンジのグラデーションは見られますが、枯れた感じは感じは全くなく、予想以上に濃い目の色合い。アルコール度数は14.5度あり、長いレッグ。

抜栓直後は香りがやや閉じており、デキャンタージュを行ったところ30分ほどで、香りは全開に。カシスやブルーベリー、ダークチェリー、煮詰めたプルーンといったどちらかと言えば黒系よりのフルーツ香、薔薇や牡丹の花びら、ドライハーブ、黒胡椒、ジュニパーベリーやアニスシード。時間が経つにつれ、レザーやシガー、スーボアも。色合いからオークの強さが予想されましたが、凝縮した果実味も強く、それほどオーキーには感じられません。全開の香りは、ブルゴーニュグランクリュを感じさせ、素晴らしい。
味わいのアタックには、まず豊かで上品な酸が感じられ、中盤にはこの強めの酸に骨格を感じさせるタンニンが加わり口中に広がる。長い余韻にもやや収斂性を感じるが、ギスギスした感じではなく、力強い骨格にエレガントさを兼ね備えている印象。

(3.8)

このワインには、やはり、ローストした赤身肉が良く合います。

ちなみに、このドメニコ・クレリコ バローロ アエロプランセルヴァイの2010年ヴィンテージの評価を調べてみると、WA誌は97点と高い評価(これを理由に購入しました)ですが、結構ばらつきがあるようです。ネガティブな評価をみると、タニック、オークが強くバランスに欠けるといったようなものが多いようです。
個人的には、酸とタンニンの強さから、飲み頃になるまで時間がかかる(あと5年は必要)ものの、香りは現時点でも素晴らしく、味わいのポテンシャルは非常に高く、5~10年経てば桃源郷を味わえるワインではないかと評価しています。

話は変わり、1週間ほど前に同じネッビオーロのプロドゥットーリ・デル・バルバレスコのバルバレスコを飲みました。リオ・ソルドというクリュ・バルバレスコの2015年です。

こちらも同様に深みはありますが、やや明るめの色合い。ラズベリーアメリカンチェリーのやや赤系寄りの果実の混ざる香り、ドライフラワー、メントールやセージのハーバルな香り。オーク香は強くなく、複雑さを伴うエレガントで冷涼な香りです。
味わいは、甘苦のアタックに、直ぐに酸がスッと伸び、タンニンからの心地よい苦みの長い余韻があります。ネッビオーロらしいタンニンの強さはありますが、上記のバローロに比べるとはるかに柔らかい印象です。

(3.4)

この2つを比べると(男性的な)剛のバローロと(女性的な)柔のバルバレスコの違いが良く顕れているかと思います。バローロの中でも力強さが特徴のセッラルンガとバルバレスコ地方の中でも柔らかいワインを産出するバルバレスコ村のワインなので余計違いでるのかもしれません。
ネッビオーロは、ピノノワールと同様、テロワール(特に土壌)を強く反映する品種と言われていますが、世界中で栽培されているピノノワールに対して、ネッビオーロは、イタリア特定産地(北部)しか栽培されていません。強めのタンニンから、飲み頃まで時間がかかる(=生産者にとってはデメリット)ということもあるかと思いますが、品種に合うテロワールのレンジの狭さもあるかと思っています。

最近は、2018年~2020年ヴィンテージのブルゴーニュ赤を飲む機会が多いのですが、猛暑の影響を受け、濃いながらもやや甘さが気になるワインも少なくありません。時には、酸度が低く甘みが目立ち、一昔前の新世界のワインを思わせるワインにも遭遇します。そのようななかで、ピノノワールっぽい色合いとエレガントな香りをもちながら、あくまでドライで骨格を感じさせる味わいのネッビオーロは、以前にもまして、魅力的に感じられました。
3週間後にバローロバルバレスコを訪れる予定で、この魅力的なワインの産地を肌で感じられればと期待しています。