先日、青山のCellar Door Aoyamaにて開催されたジェロボームの試飲会に行ってきました。同社の20周年を記念し取り扱いのある36生産者が来日して開催されたテースティングイベントになります。特に印象に残ったワインについて書きたいと思います。
テースティングイベントは、2023年11月11日に二部制で生産者を分けて開催されました。
このイベントのことは、9月にバローロでルチアーノ・サンドローネとマウロ・ヴェリオを訪れた際に知り、申し込もうと考えていましたが、セラードア青山のHPに掲載された参加者募集に気づいた際には、彼らが登場する第二部は既に満席となっており、残念ながら、第一部のみの参加となりました。
第一部には、同じバローロ有名生産者のViettiほか、フランス、イタリア、ニュージーランド、オーストラリア、レバノンから18の生産者が参加していました。1時間半ほどだったので、特に興味のある生産者と全く知らなかった生産者のワインを中心に試飲しました。
Tin Shed/ティン・シェッド
南オーストラリア州バロッサバレーの1997年創業の小規模なワイナリーのようです。
2022年のWild Bunch Riesling/Eden Valleyと2021年のMelting Pot Shiraz/Barossa Valleyの試飲ができました。
イーデンヴァレーのリースリングは、柑橘系果実と白桃、フローラルなアロマ、溌溂とした酸とミネラル感が特徴。オーストラリアのリースリングに比較的感じられるぺトロール香は全く感じません。素直に美味しいリースリングです。
シラーズは、バロッサヴァレーらしい力強さはありますが、意外にもエレガントな味わい。食事にも幅広く合わせやすいと感じられるシラーズという印象です。
1年前にバロッサヴァレー、イーデンヴァレーを訪れたことを伝えると大変喜んでくれました。
00 Wines/ダブル・ゼロ・ワインズ
オレゴン州ウィラメット・ヴァレーのワイナリーです。最近Decanter誌で2019年のVGW Chardonnayがアメリカで最高のシャルドネに選ばれたことで、メディアの露出が多くなっているワイナリーで、このワインは、半年前に某ショップで購入しています。未だ飲んでいないので、今回の試飲が初めてになります。
このワイン、「ブラック・シャルドネ」と呼ばれる昔のブルゴーニュの醸造法を採用しています。これは、最近の白ワインの造りである、ストレスをかけずにゆっくりプレスして果汁のみを抽出し、極力、フレッシュさを保つために嫌気的に醸造するという手法とは真逆で、強くプレスして種や皮の成分まで抽出して、酸化を恐れず、空気に触れさせながら醸造するという手法です。
看板ワインのVGW Chardonnay 2019から。製法から想像していたほど濃い色調ではなく、ごく普通のシャルドネワインの色調。柑橘系と青リンゴ、白い花、さらに少しスモーキーなナッツ、バニラを感じる香りも、特に変わった印象はありません。味わいは、ふくよかな果実味と酸のバランスが取れており、奥に骨格も感じられます。味わいにも濃厚なワインを想像していたが、引っ掛かりはなくどちらかと言えばエレガント。余韻に心地よい苦み。濃厚で樽香の強いアメリカンシャルドネのイメージではなく、どちらかと言えば、ブルゴーニュ的なワインでした。
テースティングリストにはなかった、EGW Shardonnayという上級ワインも試飲させてくれました。比較的ふくよかなVGWに比べるとややシャープでタイトな印象。
ちなみVGWは、”Very Good White"、EGWは”Extra Good White”の略とのこと。
VGWがシャサーニュ・モンラッシェ、EGWが、ピュイニー・モンラッシェと言った印象で、確かに美味しいですが、価格的にはブルゴーニュのちょっとした1級並みなので、再度購入するかは迷います。とりあえず、購入したVGWはもう少し寝かせて食事とあわせてじっくり飲んでみたいと思います。
ピノノワールの赤VGRも試飲できました。アンフォラ内で発酵させるという変わった製法のようです。白に意識が寄っていたこともあり、残念ながらあまり覚えていません。
Vietti/ヴィエッティ
クリュ・バローロの先駆者として高く評価されているカスティリオーネ・ファッレットの生産者です。11月訪れたこの地の著名な生産者ということもあり、個人的には、今回の試飲会第一部の目玉と感じていました。最近、Vinosで100点を獲得したここのバローロ ラヴェーラ 2019年がリリースされましたが、4万円近い価格で、かつ飲み頃を考慮して、購入は躊躇しています。
当日のリスト上の試飲アイテムは、Barolo Castiglione 2019年、Roero Arneis 2022年でしたが、マグナムのBarolo Lazzaritoの2014年も開けてくれました。カスティリオーネは、ヴィエッティのバローロのワインラップの中ではスタンダードな銘柄になります。
流石に2019年なので、余韻まで続く収斂性のあるタンニンが結構支配的です。ラッツァリート(セッラルンガ・ダルバ村のクリュ)はマグナムながら2014年ということで、骨格がありながらも、タンニンも比較的柔らかく、熟成によるものなのかテロワールによるものかはわかりませんが、芳醇な香りに、円やかでエレガントな味わいの好みのバローロでした。白のロエロ・アルネイスは、柔らかな酸と洋梨や白桃の香と味わいが感じられるまさにこの品種の特徴をよく顕したワインでした。酸が主張しすぎていないので、和食を含め、色々な食材に合わせやすい品種だと思います。ちなみにヴィエッティは、アルネイスを見い出し、ロエロの代表品種に押し上げた先駆者でもあります。
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Tenuta Buon Tempo/テヌータ・ボン・テンポ
トスカーナ州モンタルチーノの近くの小規模なワイナリーで、サンジョベーゼグロッソだけを栽培しているようです。Buon Tempoはイタリア語で“良い時間”を意味し、穏やかで静かな美しいヴァレーで過ごす心地良い時間を表しているとのこと。
左端のマグナムは、リストに無かったブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・レゼルヴァ2016のマグナム。とても柔らかくエレガントなブルネッロで、気に入りました。左から2番目がロッソ・ディ・モンタルチーノ。若いサンジョヴェーゼにありがちの高い酸はほどほどに抑えられており、軽快な飲み口。興味深かったのは、下のラ・フルバというワイン。アンフォラのみで発酵・熟成させたワインとのこと。9月にキャンティ・クラシコを訪れた際にアンフォラで熟成しているワイナリーを見ましたが、部分的な使用で、樽熟したワインとブレンドしているとのことでしたが、こちらは、100%アンフォラ熟成のようです。フレッシュで果実味がストレートに感じられるワインでした。エチケットには、七面鳥を盗んだ狐(フルバはフィレンツェでの狐の呼称)が描かれています。こちらは、DOCではなく、IGTのワインのようです。価格は、7480円とちょっとお高めです。
Tenuta Decugnono dei Barbi/テヌータ・デクニャーノ・デイ・バルビ
イタリア中部のウンブリア州のワイナリーです。
白は”イル ・ビアンコ ・ディ ・デクニャーノ ・オルヴィエート ・クラッシコ ・スぺリオーレ2020”。シャルドネ、プロカニコ、グレケット、ヴェルメンティーノの混醸。
柑橘果実に洋梨、ミネラル感。味わいは、軽すぎず、重すぎず、ふくよかな果実味を感じる飲みやすい白。幅広い食事に合いそう。
赤は、”イル・ロッソ・ディ・デクニャーノ2018”。シラー、カベルネ・ソーヴィニョン、モンテプルチアーノの混醸。ブレンド品種からいかにも濃そうですが、優しいタンニンで柔らかな印象。シラーの特徴が最も顕れているように思います。
Domaine Taupenot-Merme/ドメーヌ・トプノ・メルム
ブルゴーニュからは、このトプノ・メルムとイエーガー・ドゥフェ、ジャック・プリ―ルの3つのドメーヌが参加していました。トプノ・メルムのAOCブルゴーニュは、2018年を最近飲んでいますが、非常に近づきやすい熟度の高い果実味とともにしっかりとしたタンニンも感じられる印象的なレジョナルワインでした。今回試飲した2020年は、正直、少量で特徴は掴み難かったのですが、あまり熱量を感じない柔らかな印象でした。お奨めは、オーセイ・デュレスとのことでしたが、試飲できず、ちょっと残念でした。
Domaine Jacques Prieur/ドメーヌ・ジャック・プリウール
いわずと知れたムルソーの名門で、ミュジニーやシャンベルタン、モンラッシェを含め錚々たる畑を所有しているドメーヌです。ミュジニーとモンラッシェ以外は、そこそこお世話になっています。当日、ジャック・プリウールとしては、ブルゴーニュ・シャルドネ2020のみの試飲で、正直、それほど印象には残りませんでしたが、ここのオーナ一族のラブリュイエール家は、シャンパニュー(ヴェルズネイ村)のメゾンとボルドー(ポムロール)のシャトーも所有しているようです。前者は、J.M.ラブリュイエール、後者は、シャトー・ルジェで、どちらも今回試飲ができました。J.M.ラブリュイエール・プロローグは、ピノ・ノワール69%・シャルドネ31%の構成で、ピノ・ノワールの豊潤な果実味主体で、パンドミやナッツの複雑さが加わり、引き締まった余韻が感じられるったシャンパーニュでした。興味を惹いたのは、シャトー・ルジェ2018年でした。若いヴィンテージでマグナムなので早いかなと思いましたが、濃いことは濃いのですが、豊かな果実味でタンニンも収斂性はなく、エレガントさも感じられる今飲んでも美味しいボルドーでした。
Vasse Felix/バス・フェリックス
ソムリエ協会の教本に名前が登場するワイナリーで、資格取得の為に、スペルや創設者(心臓病学者のジム・カリティ氏)、設立年を暗記した記憶が新しい生産者です笑。西オーストラリアのマーガレット・リヴァーがボルドーの気候に類似しているという調査結果に基づき、この地にワイナリーを設立したマーガレット・リヴァー創業5生産者中で、最も早い1967年にブドウ栽培に取り組んだ生産者です。
ここのワインは、かなり昔に飲んだ記憶はありますが、今回久々の試飲となりました。試飲アイテムの赤は、スタンダードのカベルネ・ソーヴィニョン(実際にはマルベックも10%ブレンドとのこと)でしたが、2020年と2021年Mgを比較することができました。この地の気候は、2020年が温暖で、2021年は比較冷涼だったとのこと。どちらも黒系果実のアロマにロースト香、引き締まったタンニンという古典的な若いボルドータイプですが、青さは感じません。この気候を反映してか、2020年はややふくよかさが感じられ2021年は、よりドライでミントっぽい冷涼さを感じられるワインでした。個人的には、2021年が好みであることを伝えたら、ワイナリーの説明者も同感とのことでした。
白は、スタンダードのシャルドネです。緑がかった淡い色合い。白桃や白い花にバニラ香。樽香が強すぎ繊細さと複雑さを兼ね備えたシャルドネでした。
Kumeu River/クメウ・リヴァー
ニュージーランド北島のオークランド/クメウ地方のワイナリー。ワイン誌の評価が非常に高いことで、最近ショップやメディアの露出が著しいワイナリーです。それに釣られて2015年ヴィンテージから、畑名のマデスとハンティング・ヒルのシャルドネを何回か購入し飲んでいますが、当初は5~6千円で購入できましたが、最近は1万前後とちょっと手を出しにくい価格になっています。この日は、2021年のスタンダードキュベとハンティング・ワールドのシャルドネ、そして初めてピノ・ノワールを試飲することができました。
新しいヴィンテージですが、相変わらず、凝縮した果実味とたっぷりのミネラルを感じられるワインです。ただ、このワインは、熟成させて真価が発揮されるワインと思います。最低10年は熟成させて、大きなグラスで飲んでみたいワインです。おそらく誘惑に負けてその前に飲んでしまいそうですが..
初めてのピノ・ノワールについては、残念ながらあまり記憶に残っていません。テースティング能力の問題かもしれませんが、繊細なピノはごく少量の試飲では、正直特徴を掴みにくいです。後からよく見たら、ハンティング・ヒルのピノノワールで、白同様にそこそこの値段のようです。機会があれば、じっくり飲んでみたいと思います。
時間終了まじかに試飲したワインです。
Grey Wolf/グレイ・ウルフ
カリフォルニアのセントラル・コースト、パソ・AVAのワイナリーです。内陸に位置し、海の影響がない温暖な気候で、ボルドー系品種意外にローヌ系品種で有名な産地ですが、ジンファンデルも有名です。ジンファンデル(+プティ・シラー16%)とLineageというボルドー品種(カベルネSB、マルベック、メルロ、プティ・ヴェルド)ブレンドのワインが試飲できました。もともとジンファンデルは苦手だったので、前者は、ちょっと濃さが引っかかる印象でしたが、後者のボルドーブレンドは、濃いものの結構複雑で、タンニンも気にならない美味しいカリフォルニアワインでした。
このワインは気に入って褒めたところ、オリジナルのキャップをプレゼントしてくれました笑。
時間制限もあり、全ての生産者のワインを試飲することはできませんでしたが、知らなかったワイナリーを含めて新たな発見もでき、なかなか有意義な試飲会でした。
特に印象に残ったワインを挙げるとすると、
Tin ShedのShiraz2021、ViettiのBarolo Lazzarito2014とRoero Arneis2022、Tenuta Buon TempoのBrunello di Montaltino2016、Kumeu River Hunting Hill Chardonnay2021、Grey WolfのLineage2019
あたりでしょうか。
了