コロナ禍続く7月最初の日曜日は、少し贅沢な内食で。アントニー・ジラールのサンセール2016年&ブラータチーズ、そしてモンジャール・ミュニュレのエシェゾー2006年&鴨のコンフィーを愉しみました。
フランスの白ワインの銘醸地サンセールで100年以上続く歴史をもつ名門「ドメーヌ・デ・ブロス」の長男アントニー・ジラールが生み出した新しいサンセールです。
2007年に蔵を引き継いだ長男アンソニーと次男のニコラはブルゴーニュでワイン造りを学び、濃厚でありながらエレガントなワイン造りを目指し、コート・ロティの名門「ミッシェル・エ・ステファンヌ・オジェ」、そしてブルゴーニュの「ドメーヌ・ルフレーヴ」および「ブルーノ・クレール」での修業を積み、サンセールの実家に戻ってきましたが、2011年、仲の良い弟ニコラとの間に将来想定される相続の問題を回避するために、すべてを弟に譲り、自身は一から新しいドメーヌを起ち上げる道を選びました。
ドメーヌ・アントニー・ジラール サンセール・ラ・クレ・デュ・レシ 2017年
Domaine Anthony Girard [2016] Sancerre Blanc La Clef du Récit
「La Clef du Recit」は、「The Key of the Story」。「8ヶ月もの間、畑の売買について極秘でやりとりしていた頃のドキドキ感。初めて自分のセラーの鍵を開けた時の喜び。そして、これからサンセールの新しい可能性を開いていきたい、新しい物語をつくっていきたいという意味を込めて、鍵をシンボルマークにしました」。
2012年がファースト・ヴィンテージですが、2015年VTが「Decanter誌が選ぶサンセールベスト5」に選出されています。
7ha。ソーヴィニヨン・ブラン100%。石灰質、シレックス土壌。樹齢40~50年のVV。ステンレスタンクで10ヵ月間熟成。樹齢40~50年のVV。
クリームイエロー、麦わら色。華やかな柑橘系の香り。レモン、ライム、グレープフルーツ、桃、スイカズラ等の白い花の香り。そして豊かなミネラル。レモングラス等のフレッシュハーブも。フレッシュで溌溂とした酸。ハーベシャルでトロピカル感のあるニュージーランドソーヴィニヨン・ブランとも異なり、オーソドックスなソーヴィニヨン・ブラン。苦みを伴うやや長めの余韻。
(3.0)
3.5K円ほどのサンセールなので、安くもなく高くもなく、ロワールとしては平均的な価格かと思います。ソーヴィニヨン・ブランは、最近はコスパの高いニュージーランドを選ぶことも多くなっていおり、価格的にリピートするか、正直、微妙なところです。
▼このワインは、最近人気のイタリアのブラータと合わせました。ブラータは、イタリア南部のプーリア州原産で、モッツアレラチーズの中に、「ストラッチャテッラ」と呼ばれる、細かく刻んだモッツァレラチーズと生クリームを混ぜたフレッシュチーズです。日持ちしないチーズですが、ここ数年イタリアから輸入されてたブラータをイオン等のスーパでも見るようになりました。
今回は、近所のスーパの北海道フェアで販売されていた、花畑牧場の小型のブラータです。
僅かに売れ残っていたものですが、透明な底を見ると内部全体が真っ白なものが殆どでした。要は、多くの人に触られた結果、袋の中で潰れて中身が解け出てしまっています(笑)
当然、はっきりと丸い形が見えるものを購入しました。
▼シンプルにオリーブオイルと。ちなみに、付け合わせのトマト、バジル、ブラックベリー、ラズベリーは、全て自家栽培です。
久々に食べましたが、美味しいです。サンセールとの相性は、悪くはありませんが、やや(ワインの)酸が目立ってしまうので、もしかしたら、同じロワールのミュスカデ等の方が相性が良いかもしれません。
メインのワインは、モンジャール・ミュニュレのエシェゾーです。
モンジャール・ミュニュレのワインは、頻繁に飲んでいる訳ではありませんが、2015年と2019年にヴォーヌ・ロマネ村のドメーヌに隣接し、ドメーヌが所有する「ホテル・リシュブール」に各2泊、宿泊しており、それ以来、ここのワインに親しみを持っています。
モンジャール・ミュニュレは、家族経営ながら、ブルゴーニュに33haもの畑を所有する大規模なドメーヌです。フラグシップは、ホテルの名前にもなっているリシュブールですが、やはりドメーヌを代表するのは、エシェゾー、グラン・エシェゾーの2つの特級畑だと思います。エシェゾーを2.6ha、グラン・エシェゾーを1.44ha所有しています。ちなみに、この広さは、DRC(ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ)に次ぐものです。
ドメーヌ・モンジャール・ミュニュレ エシェゾーV.V. 2006年
Domaine Mongeard-Mugneret [2006] Echezeaux Grand Cru Vieille Vigne
エシェゾーは、デュ・デュス、ルージュ・デュ・バ、レ・トゥルーの3つの区画に分かれますが、1929年に植樹したルージュ・デュ・バのブドウはすべてエシェゾー・ヴィエイユ・ヴィーニュとして瓶詰めされます。エシェゾー最下部のレ・トゥルーは、肉付きがよく豊満な一方で、複雑さには欠ける酒質で主に米国向けに輸出されており、日本に輸出されているのは、エシェゾー最良の区画と言われるエシェゾー・デュ・デュスのものです。
中程度の濃さの色調の艶・輝きのあるラズベリーレッド。ラズベリー、アメリカンチェリー、ファーストアタックにややロースト香を感じたが、少し時間が経つと、オーキーさは影を潜め、むせ返るような華やかな赤系果実と花の香りに。ドライハーブ、シナモン、甘草、紅茶、タンニンはシルキーで滑らか。果実の凝縮感とふくよかな酸に甘過ぎない旨味。華やかな香りは、まさにヴォーヌ・ロマネのワインという印象。時間とともに腐葉土の熟成アロマが加わり、妖艶で複雑な香りに。 素晴らしい飲み頃のエシェゾー。
(4.3)
▼骨付きのシャラン鴨、フランスのキュイス・ド・カナール・シャランです。2本セットで購入し、1本は、先日トマト煮で、ジャック・プリウールのシャンベルタンと愉しみました(→こちら)。
今回は、定番の鴨のコンフィにしました。
鴨のコンフィは、硬い鴨のモモ肉を低温調理で柔らかくし、最後にカリっと焼いて仕上げます。シンプルながら、結構、時間のかかる料理です。
塩・胡椒をして、ハーブ(自家栽培)とオリーブオイルに漬けて、冷蔵庫で1晩置きます。本来は、鴨のラードを使うようなのですが、簡単に手に入らないので、オリーブオイルで代用しています。2時間以上、80度を保ち、低温調理します。
最後にフライパンで焼いて仕上げます。
ラズベリーと洋梨のソースで。時間を掛けたおかげで柔らかく、臭みも全くありません。ブルゴーニュの赤ワインには最高の相性です。
▼自家栽培のゴーヤのチャンプルです。
久しぶりに素晴らしいワインが主役の贅沢な内食でした。
モンジャール・ミュニュレのグランクリュ、1年ほど前に知人宅で開けた2005年のリシュブール(→こちら)が最高でしたが、それに次ぐ素晴らしいものでした。
ドメーヌのホテルのレストランで飲んだもの含め、村名ワインに関しては、あまり印象に残るものにあたっていませんが、少なくても、2005年のリシュブールとこの2006年のエシェゾーVVに関しては、非常に印象的なワインでした。
リアルワインガイド誌では全く取り上げられる気配もなく(成金的なドメーヌという偏見?)、海外の評論家の評価も決して高い方とは言えませんが、ここの熟成したヴォーヌロマネのワインは、侮れません。昔は、樽香の強いワインとも評価されていたようですが、この2006や2005年を飲む限りは、非常にエレガントなワインに仕上がっています。何よりも、エシェゾーであれば、2万円を切る価格は、今時貴重なものだと思います。
<了>